2019年06月29日
プロジェクト管理と日常生活 No.599 『”海賊版サイト対策”法案の行方』

3月13日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”海賊版サイト対策”法案について取り上げていたのでご紹介します。

 

政府と自民党は権利者の許可なく、インターネット上に掲載された漫画やアニメのダウンロードを違法とする著作権法改正案について今国会への提出を断念しました。

 

若者たちを中心に爆発的に利用が広がっているのが、許可を得ずに無料であらゆる漫画を公開している「漫画村」などの“海賊版サイト”です。

違法サイトへのアクセス数は多い時で1ヵ月に1億7000万回を超えます。

こうした違法サイトへの対策として、文化庁などが取りまとめたのが著作権法の改正案です。

 

現在の著作権法では、動画と音楽のみを違法ダウンロードの規制の対象としています。

改正案は、漫画やアニメ、雑誌などあらゆるコンテンツにその規制を広げようというものです。

なぜその法案の提出を断念したのか、自民党内で改正案に反対する中心人物となったMANGA議員連盟の古屋 圭司衆院議員は次のようにおっしゃっています。

「(改正案は)違法行為は減らそうという純粋な動機だったとは思うんですけど、大魚だけ取ろうと思ったのが、投網で小魚まで引っかかってしまう危険性があるということがはっきりしたということですね。」

 

SNSの画面には多くの画像が張り付けられています。

著作権法改正案では、これらの画像が引用元から許可を得ていなければ全て罪に問われる可能性がありました。

改正案では、個人のブログやSNSから画像をダウンロードしたりといったちょっとした日常使いまでも違法とされる可能性があったのです。

 

改正案に本来利益を守られる立場の漫画家からも苦言が呈されています。

「東京トイボックス」などの作者である2人組の漫画家、「うめ」の1人、小沢高広さんは、改正案で守られるものより失うものの方が多いと疑問の声を上げています。

「自分が普段今までの生活の中だったりとかで何気なくやっていることがもしかしたら違法になってしまうかもしれない。」

 

「SNSとかで読者だったりユーザーだったりファンだったりと一緒に盛り上がるというのが当たり前になってしまっている世の中で、それを奪われてしまうということは「「この公園でもう遊んじゃいけません」って突然子どもに言うようなものですね。」

 

著作権に詳しい専門家、福井 健策弁護士は次のようにおっしゃっています。

「そもそもの制度設計として、恐らく「抜け穴を防ごう」と思ったんでしょうけども、いささか広めに出て来た。」

「その結果、ちょっとしなくてもいい論争になってしまったような印象がありますね。」

 

また改正案の提出を断念した背景には別の理由もあります。

古屋衆院議員は次のようにおっしゃっています。

「(衆院選を見据えた対応かという問いに対して、)それはあるでしょ。」

「(漫画ファンは)3000万人いますからね。」

「間違ったメッセージを発することは良くないです。」

 

文化庁は著作権の関係団体などに意見を聴いたうえで、どこまで違法対象とするかあらためて検討する方針です。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

現在の著作権法では、動画と音楽のみを違法ダウンロードの規制の対象としていますが、一般的に考えれば、漫画やアニメなどのコンテンツにその規制を広げようという改正案の検討は妥当と思われます。

なぜならば、漫画やアニメを違法ダウンロードの規制対象外とすれば、漫画やアニメの制作で生計を立てている作家は収入を得られず、制作を続けることが困難になるからです。

しかも、その一方で著作権者の許可を得ずに無料で多くの漫画やアニメを公開している「漫画村」などの“海賊版サイト”を運営する業者は広告収入などを得ているという状況は理不尽と言えます

 

しかし、今回の改正案の問題は、個人のブログやSNSから画像をダウンロードしたりといったちょっとした日常使いまでも違法とされる可能性があったことです。

もし、こうした日常使いまでも違法とされる可能性のあるまま改正案が通ってしまったらネット上でのコミュニケーションの利便性は大幅に損なわれてしまいます。

ですから、残念ながら今国会への提出が断念された改正案の問題は、違法ダウンロードの規制対象を曖昧にしてしまったことにあると思います。

 

では、規制対象の線引きをどうするかですが、現在の著作権法が動画と音楽のみを違法ダウンロードの規制の対象としているように、漫画やアニメというような明らかに著作権法の対象として保護が妥当と考えられるコンテンツをピンポイントで追加するという取り組みが望ましいと思います。

そして、こうした考え方で著作権法の対象とすべきコンテンツの有無を定期的に見直しをするような運営にすればいいのです。

 

プロジェクト管理においても、様々な管理方法を標準化して文書化したマニュアルに則って全ての作業手順を規定します。

しかし、その管理方法が曖昧な記述になっていれば、作業に混乱をきたし、作業効率が損なわれます。

 

ですから、法律やプロジェクト管理マニュアルに限らず、社内規定や組織の運営規定など、あらゆるルールには出来るだけ曖昧さを残さず、どのような行為が求められるのか、あるいはどのような行為は禁止されるのかといったようなことが明確に規定されていることが求められるのです。

しかし、だからといって厳密さを追求するあまり、微に入り細に入りといった記述をしていったらその内容は大量になってしまいます。

そうすると規定に則って作業する側も規定を管理する側もとても扱いにくくなってしまいます。

ですから、出来るだけ簡潔な記述が求められます。

同時に、何を目的とした規定なのか、あるいはなぜ必要なのかといった規定の基本的な考え方を使用者にきちんと理解してもらうための研修が必要になります。

そして規定の目的とするところをきちんと理解していれば、より効率的な方法を使用者側から管理者側に提案されたりすることが期待出来るのです。

一方、こうした研修が実施されないと、ただ言われたままに作業をするだけになってしまい、いずれ陳腐化した内容に変容してしまうのです。


 
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