2019年06月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.598 『急増する”非正規公務員”の元凶とは!』

2月10日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で急増する”非正規公務員”について取り上げていました。

そこで、プロジェクト管理の観点からこの状況についてご紹介します。 

 

今年の春闘では非正規労働者の賃金の引き上げや格差の是正が進むのか注目されていました。

一方で今、地方自治体でも臨時や非常勤で働く”非正規公務員”という人たちがいますが、その数が急激に増えています。

全国の市区町村の職員のうち非正規で働く人の数は約48万人、割合は約30%と、ともに年々増えており、今や3人に1人が非正規です。

なぜここまで”非正規公務員”が増えたのか、番組で取材を進めると地方自治体の厳しい現実が見えてきました。

 

人口1万3000人あまりの長崎県佐々町の役場や出先機関の職員、287人のうち約65%、186人は非正規の職員です。

高齢者の介護の相談窓口では11人のうち9人が非正規で働く人たちです。

町営の図書館では館長以下、運営に当たる12人全員が非正規の職員です。

 

なぜこれほど多いのでしょうか。

国の地方交付税が削減され、自治体の財政が厳しくなる一方、高齢化などに伴って福祉サービスなど自治体が担う業務が拡大、限られた予算で要員を増やさねばならず、非正規の職員が増えたのです。

佐々町総務課の山本 勝憲課長は次のようにおっしゃっています。

「行政改革の中で、特にうちの場合は保育所とか幼稚園を持っていましたので、その関係でどうしても非正規が増えた。」

「実際、現場では(非正規の職員が)いないと人が回らない。」

 

”非正規公務員”が支える自治体は今全国に広がっています。

職員の半数以上が非正規という市町村は10年あまりで7倍に急増しています。

一方、明るみになってきたのは正規の職員との待遇面の違いです。

佐々町の町営の保育所では保育士32人のうち25人が非正規の職員です。

勤務時間が短いためあえて非正規という働き方を選ぶ人も少なくありませんが、担任を受け持つなど、同じ業務や責任を担うことも多くなっています。

しかしその待遇は、正規の職員が昇給やボーナスなど各種の手当がありますが、非正規の場合、給与は年齢や経験に関係なく職種によって一律で、正規の職員の手当てに当たるものがありません。

 

こうした格差を無くそうと、役場ではこれまでも非正規職員の給与の引き上げなどに取り組んできました。

今回、処遇の向上を目指して、通勤手当やボーナスなどの手当ての支給を計画、その場合経費は最大で年間5500万円が必要となる見通しです。

限られた予算の中でどう確保していくのか、検討を重ねています。

山本課長は次のようにおっしゃっています。

「(5500万円が)経常経費で続いていきますので、その部分は確かに苦しいと思います。」

「ですから他の部分で、財政の部分で費用を削減していくという努力を今後も続けていかなきゃいけないかなと・・・・」

 

実は正規職員と非正規職員の格差は給与だけではありません。

例えば産休です。

2016年の総務省調査では、窓口業務などを行う臨時・非常勤の”非正規公務員”を雇っている自治体のうち3分の1で制度がありませんでした。

また子どもが病気をした際の看護休暇も半数以上、通勤交通費でさえも3分の1の自治体でありませんでした。

 

こうした状況について、制度設計が現状に合っていないことが問題だといいます。

総務省によると、以前、非正規職員は短時間で補助的な業務に係わることが前提でした。

しかし、正規職員と同じような仕事を担うようになってきたのに待遇面は以前のままというのが実態です。

こうした待遇の格差が深刻な事態をもたらすケースも出て来ています。

北九州市の常勤職員だった森下 佳奈さん(享年27歳)は児童虐待などを扱う相談員でしたが、うつ病と診断されて退職、その2年後自ら命を絶ちました。

当時、佳奈さんが母親などに送ったメールには次のような文言がありました。

「「給料分働いていない」と言われ、残業つけてもらえず。」

 

「また今日も2時間問い詰められ、泣かされました。」

 

母親の眞由美さんは、娘の死は上司のパワハラなどが原因だと考え、公務員の労災に当たる公務災害(労災)と認めるよう、北九州市に請求しました。

しかし、市の回答は思ってもみないものでした。

佳奈さんは非常勤職員なので公務災害を請求出来ないというのです。

市の条例にはその権利が定められていませんでした。

眞由美さんは次のようにおっしゃっています。

「同じ人なのに常勤と非常勤で命の重さに違いがあるって言われたとしか思えなくて・・・」

 

眞由美さんは、娘が亡くなったのは職場でのパワハラなどが原因で、公務災害の請求さえ出来ないのは問題だとして、市を相手に訴えを起こしました。

市は対応に問題はなかったと主張し、裁判が続けられています。

眞由美さんは次のようにおっしゃっています。

「納得がいかない。」

「娘が亡くなったということを納得出来ない。」

「一歩も前に進めていません。」

「娘のことだけを思って供養する穏やかな気持ちが私は欲しいけど、今の状況では無理だと思います。」

 

親としてはやり切れない気持ちですけども、佳奈さんのケースで公務災害を請求出来る余地について、北九州市は改善を求める国の通知を受け、昨年10月に規則を改正し、非常勤職員やその遺族も請求出来るようにしました。

更に改正以前の事案についても現在請求出来るように準備を進めています。

一方で市は、パワハラは確認出来ず、対応に違法性は無かったと主張し、今も裁判は続いています。

 

専門家は、多くの自治体で待遇の格差が依然として残っていて、このままでは私たちの生活にも影響が出かねないと主張しています。

地方自治体総合研究所の上林 陽治研究員は次のようにおっしゃっています。

「住民に最も近いところでサービスを提供する人たちは(多くが)非正規であるというのが現状なんですね。」

「ところが年収200万円前後の賃金で、雇用も1年ぐらいで、不安定な状態でやっていくということは将来に対する展望が見えないですよ。」

「その結果、かなりの数が離職してくるんです。」

「非正規公務員の処遇を低い状態のままにしていたら、なり手不足がもっと大きくなって、このままでは安心した住民公共サ−ビスが提供出来なくなる恐れがあると考えていますね。」

 

では、こうした問題を改善していくためにどうしたいいのでしょうか。

まず労災を申請する権利や産休など、働く人として認められるべき権利については速やかに制度を整備していくべきだと番組では考えます。

国も状況を重く見て、来年4月までに待遇を改善するよう各自治体に呼びかけています。

住民のニーズに応える行政サービスを維持しながら、限られた予算の中で非正規公務員の待遇をどう改善していくのか、サービスを受ける私たちも考えていかないといけないとしています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

アイデアよもやま話 No.3207日本の資産家の人口に占める割合は世界一!?で日本全体の労働者の3人に1人以上が非正規労働者として働いているとお伝えしましたが、安定した就職先と見られている全国の市区町村においても職員のうち非正規で働く人の割合も今や3人に1人というのです。

更に、長崎県佐々町の役場や出先機関の職員の例では、高齢者の介護の相談窓口では11人のうち9人が非正規で働く人たち、町営の図書館では館長以下、運営に当たる12人全員が非正規の職員といいます。

しかも、”非正規公務員”が支える自治体は今全国に広がっており、職員の半数以上が非正規という市町村は10年あまりで7倍に急増しています。

 

ここで問題なのは、正規の職員との待遇面の違いです。

具体的には、全てとは言わないまでも昇給やボーナス、通勤交通費など各種の手当や産休がないこと、および給与は年齢や経験に関係なく職種によって一律であることです。

 

こうした状況について、制度設計が現状に合っていないことが問題だといいます。

総務省によると、以前、非正規職員は短時間で補助的な業務に係わることが前提でした。

しかし、正規職員と同じような仕事を担うようになってきたのに待遇面は以前のままというのが実態です。

 

私はこの制度設計が現状に合っていないことを国が放置してきたことこそ、“非正規労働者”の急増をもたらしている問題の最大の原因だと思います。

いつの時代も企業は利潤の追求を求め、国の定めた法律の範囲内でいかに売り上げを伸ばし、一方でコスト削減をするかに知恵を絞っています。

ですから、特に売り上げが伸び悩んだり、利益が急減したりすると、コスト削減に向かいます。

そして、時には法律を拡大解釈することもあります。

本来、“非正規労働者”は短時間で補助的な業務に係わることが前提でしたが、徐々に正規労働者と同じような仕事を担うようになってきたのに、それを国が放置し続けて現在のように正規労働者と“非正規労働者”の待遇の格差を生じ、格差拡大をもたらしたと言えます。

ということで、この問題に国もようやく重い腰を上げ始めたという状況なのです。

 

さて、プロジェクト管理において、最大限にプロジェクトを効率的に進めるために、個々の作業プロセスを標準化し、標準マニュアルとして文書化します。

そして、定期的に関連作業が全てこの標準マニュアルに遵守しているかをチェックし、逸脱行為がある場合は遵守するように指導します。

また、標準マニュアルを定期的に見直し、現状に合わない場合など、改善点があれば改善していきます。

このようなプロジェクト管理の標準マニュアルの管理に照らしてみると、国による“非正規労働者”関連法においてはきちんとした管理がなされていなかったと言わざるを得ません。

 

以前もお伝えしたように、日本の企業はこれまで何度となく大変な危機を乗り越えてきました。

ですから、もし“非正規労働者”関連法においてもきちんと規制が機能していれば、多くの企業は“非正規労働者”に様々なかたちで犠牲を強いることなく、別な方法で多くの危機を乗り越えて来たと私は楽観視しています。

厳しい環境だからこそ、競争力のある企業が育つのです。

もし、企業が当時の関連法に則り、“非正規労働者”に犠牲を強いることなく、働き方の抜本的な見直しをし、同時にテクノロジーを最大限に活用することにより生産性を向上させて活路を見出していれば、失われた20年などと言われるようなことはなく、バブル崩壊から新たな復興を取り戻していたと思われます。

そして“非正規労働者”の増加に伴う格差社会も生まれていなかったのです。

 

ということで、国にはプロジェクト管理における標準マニュアルの管理を参考に、あるべき法律を目指し、きちんとした管理をしていただきたいと思います。


 
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