2月7日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で遠隔操作ロボットによる家事代行について取り上げていたのでご紹介します。
人材派遣大手のパソナグループは、2月7日ロボットベンチャーのMira Robotics株式会社と組んで新たな家事支援サービスを来年5月に始めると発表しました。
発表会で登場したのは、2本の腕を持つ家事支援ロボット「ugo」です。
デモンストレーションでは、主婦が家事の中で最も面倒だという洗濯を行いました。
パソナグループの森本 宏一副社長は次のようにおっしゃっています。
「鉄腕アトムから始まり、ガンダムに至るまで人類の夢が託されているような世界観、本当にわくわくして今のデモンストレーションを見ておりました。」
パソナが目を付けたのは“家政婦不足”です。
年々なり手が減っていて、そこにビジネスチャンスを見出したのです。
Mira Roboticsの松井 健CEOは次のようにおっしゃっています。
「(どのようにロボットを動かしているのかという問いに対して、)実は遠隔で操作しているロボットです。」
働く場の少ない地方の人材などをオペレーターに採用することを考えています。
須黒フィールドキャスターが体験してみると、ロボットが見た映像がパソコン画面に表示され、2本の指でタオルを挟むことが出来ました。
持てる重さは1〜2kg程度ですが、今後改良を重ねて来年5月のサービス開始を目指します。
ただ心配なのはセキュリティで、松井CEOは次のようにおっしゃっています。
「操作をする時にカメラの方はプライバシーのフィルターがかかっているので、作業に必要なものだけを認識して作業出来るようになっています。」
通常、家政婦を依頼すると、月に5万〜10万円かかるところが、「ugo」だと2万〜2万5千円に抑えられるといいます。
森本副社長は次のようにおっしゃっています。
「人手不足を解消し、あらゆる家庭にサービスを提供するためには、人とロボットを融合することによって時間や場所に依存しない新しい働き方を作ることで、人は沢山働くことが出来るようになると思います。」
家事代行の将来性について、番組コメンテーターで、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは次のようにおっしゃっています。
「頑張れと言いたいところですが、中々厳しいですね。」
「家事代行ロボットは、そもそもロボットの中でも最も難易度が高い部類だと思います。」
「掃除、洗濯、料理と実にバリエーションが多い作業を全部こなしてくれないと中々本当に代行として価値が出ない。」
「で、このロボットを完璧に作れたら多分何でも出来ると思います。」
「一方、ロボット開発に投資する立場で考えると、投資回収し易いのは高い時給の仕事を代替出来るようなロボットですよね。」
「だけど、家事代行の労働者の時給って1000円〜1500円と、どちらかというと安いんです。」
「なので開発の内容は高いけど、でもコスト削減効果は小さいと考えると、投資採算性はかなり厳しいんじゃないかなと思います。」
「で、そもそも家事を代行させようという時に、人のように作業する必要はなくて、例えば皿洗い機、洗濯機、電子レンジ、発明した時にこれはまさに家事代行じゃないですか。」
「こういう発想の転換の方が大事だなと。」
さて、「ugo」がヒト型ロボットである理由について、松井CEOは「家事をするスペースは人間に合わせて出来ているのでヒト型の方が動き易いのではないか」と考えたといいます。
また解説キャスターの山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「ここ数年、お風呂のお掃除ロボットを作ったら絶対ヒットするからと電機メーカーの首脳の方に言ってるんですけど、でも未だに本格的なものが出ないということは浴槽をはい回すのは相当難しいのでしょうね。」
「相当タフなことかも知れないけど、発想としては面白いと思っていて、最終的には自分が一家に1台持ちたいですよね。」
「働いている間に家事が出来るなんて、別の意味での逆転の発想のテレワークだと思いますね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通して、家事に限らずロボットの普及要件が見えて来たので以下にまとめてみました。
・ロボットの導入による投資対効果が期待出来ること
・必ずしも全てをロボットに任せる必要はなく、ロボットだけの技術では困難な作業についてはヒトによる遠隔操作を取り入れること
・ある業務の作業全般を1体のロボットに全て任せるのはとても困難なケースについては、個々の作業を出来るマシーンでのサービスを検討すること
次にロボット普及のメリットについて以下にまとめてみました。
・人による遠隔操作をロボットと組み合わせることにより、働く場の少ない地方の人材や家庭の主婦など、時間や場所に制約のある人材にオペレーターという新たな働く場を提供出来ること
・人手不足の解消に貢献出来ること
ロボットの技術開発はまだまだ発展途上と言えます。
遠い将来、限りなく人に近いヒト型ロボット、すなわちアンドロイドが私たちの家族や友人、あるいは職場の同僚のような存在になる日を迎える時がやってくると思います。
しかし、当分の間は、遠隔操作などによりヒトとロボットとの作業分担の時代が続くと思われます。
そして、その住み分けのキーポイントは“ヒトとロボット、どっちに頼んだ方が得か”ということになると思います。