2019年06月04日
アイデアよもやま話 No.4346 ”未来の覇権”を目指す中国 その2 アメリカとの軍事覇権争い!

1月19日(土)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)のテーマは「アメリカvs.中国 “未来の覇権”争いが始まった」でした。

そこで、この覇権争いについて3回にわたってご紹介します。

2回目は、アメリカとの軍事覇権争いについてです。

 

グーグルやアップルなどの巨大IT企業を抱え、ハイテク分野で世界の覇権を握ってきたアメリカは、今急速に台頭する中国に焦りを募らせています。

シリコンバレーにあるアメリカ国防総省の研究施設、民間のハイテク技術の兵器への転用を進めています。

責任者を務めるのはマイケル・ブラウンさんです。

 

アメリカは既にAIやロボットの技術を軍事的に利用しています。

しかし今、中国の急速なハイテク技術の進展にアメリカは警戒感を露わにしています。

マイケルさんは次のようにおっしゃっています。

「これまで我々の軍事力は優れたテクノロジーに支えられてきました。」

「しかし将来、その優位性を失う恐れがあるのです。」

 

中国政府は民間の技術を軍事に活用する国家戦略、軍民融合を掲げています。

昨年12月には“中国版GPS”を全世界で運用開始、AIを駆使した軍事用ドローンの開発も進めています。

それに対し、アメリカ政府の危機感は強まっています。

マイケルさんは次のようにおっしゃっています。

「中国は我々よりもより広く民間技術を取り込み、軍事に転用しています。」

「このままでは競争に負けるかもしれない。」

「国を挙げて取り組むべきです。」

 

アメリカは今、中国の急速な発展の裏に“技術の盗用”があると見て、取り締まりを強化しています。

トランプ大統領は次のようにおっしゃっています。

「アメリカが持つ世界最高の技術を盗んで、真似させてはならない。」

 

FBIなどで専門チームをつくり、この2年間で少なくとも37人を産業スパイなどの疑いで摘発しました。

アップルの自動運転や大手メーカーの半導体技術などを狙ったという容疑です。

摘発された中には、中国の情報機関の幹部まで含まれていました。

捜査を担当した検察官は、これは氷山の一角に過ぎないといいます。

アメリカ司法省のベンジャミン・グラスマン検事は次のようにおっしゃっています。

「これは国家ぐるみで技術を違法に入手しようとした事件です。」

「このような産業スパイを野放しにしていたら、アメリカの繁栄は失われてしまうでしょう。」

 

しかし、拘留中の被告は無罪を主張、中国政府も否定しています。

中国外務省の陸 慷報道官は次のようにおっしゃっています。

「アメリカ側の指摘は全くのねつ造だ。」

 

こうした中、世界に衝撃を与えたのが中国の通信機器大手、ファーウェイの副会長の逮捕でした。

容疑は、アメリカが制裁を科すイランとの取り引きを巡る詐欺の疑いでした。

逮捕の背景にはアメリカ政府のファーウェイの技術に対する強い懸念があると見られています。

ファーウェイの上層部がNHKの取材に応じました。

海外メディアの対応にあたっている広報部門のジョー・ケリー副総裁は次のようにおっしゃっています。

「私たちの技術は世界の競合他社よりはるかに進んでいます。」

 

「私たちは安全保障の面で危険な存在にはなり得ません。」

「悪いことをしているかのように不当な疑いをかけられていますが、そんな証拠があるのなら出して欲しいです。」

 

ファーウェイが世界をリードしている通信方式、高速で大容量データをやり取り出来る「5G」は次世代の情報インフラになると見られています。

ファーウェイがインフラを握れば、機密情報までもが中国に漏えいするのではないかとアメリカから警戒されています。

 

ハイテク技術で台頭する中国、しかしアメリカ国内の危機感には温度差があります。

軍や民間企業の関係者が集まるシンポジウムで、国防総省のマイケル・ブラウンさんは技術流出を避けるよう警鐘を鳴らしました。

「中国はテクノロジーの分野でアメリカを脅かす力をつけてきています。」

「シリコンバレーをはじめ全米の企業の皆さんは注意して下さい。」

「これは国家の安全保障に関わる問題なのです。」

 

「アメリカでは、中国とハイテク覇権争いが起きているという共通認識がありません。」

「それを伝えることから始めなければならないのです。」

「貴重な技術を守るには警戒を強め、対策を取ることは必要です。」

 

しかし企業側の危機感は薄く、規制を強める政府への反発の声まで上がりました。

あるベンチャー企業の関係者からは次のよう声があります

「中国進出を考えているアメリカ企業はそこまで警戒していません。」

 

「むしろ今のアメリカ政府に反発する空気の方が私は強いと思います。」

 

政府の危機感をよそにハイテク技術を開発するアメリカの企業の一部は中国との結びつきを強めています。

中国の企業に雇われ、アメリカのベンチャー企業とのパイプづくりを行ってきたというショーン・フリンさんは、中国からの資金をもとにアメリカ企業を支援し、最終的に中国に誘致する仲介役を担ってきました。

フリンさんは次のようにおっしゃっています。

「中国側の狙いは、将来グーグルやウーバーのように価値を生み出す企業を中国へと誘致することです。」

 

ある日、中国側とアメリカのベンチャー企業との出会いの場にNHKの取材カメラが入りました。

AIやロボットを開発する企業の説明を聴き、投資するかどうかを検討する会合です。

招かれた投資家たちの半数は中国人や中国資本の企業に雇われたアメリカ人でした。

近年、アメリカのベンチャー企業に対する中国からの投資額は急増、特にAIの分野では5年間で20倍以上に増えています。

あるアメリカのベンチャー企業の関係者は次のようにおっしゃっています。

「会社を成長させるために資金が欲しいんです。」

「たとえ中国の投資会社であろうと、資金をもらえるなら喜んで受け取ります。」

 

潤沢な資金でアメリカのベンチャー企業を引き付ける中国、最終的には中国への移転なども持ち掛けるといいます。

フリンさんは次のようにおっしゃっています。

「優れたベンチャー企業には無料航空券を渡して中国ツアーに招待します。」

「そして政財界の人に会わせ、中国で事業を始めるよう説得するのです。」

「金を使って技術を奪っているという批判もありますが、それだって自由市場の原理じゃないでしょうか。」

 

ハイテク技術を巡って水面下で激しい攻防を続けるアメリカと中国、表舞台ではお互いに高い関税をかけ合う貿易戦争を繰り広げています。

トランプ大統領は次のようにおっしゃっています。

「もう我慢出来ない。」

「貿易赤字をなんとかしないといけない。」

 

一方、習近平国家主席は次のようにおっしゃっています。

「うぬぼれや独善的な考えは八方ふさがりになるだけだ。」

 

トランプ政権は中国福建省の半導体メーカーに対してアメリカからの部品の輸出などを制限する措置に踏み切りました。

高性能の半導体を作る技術をアメリカに頼って来た中国、その弱点を突いたと見られています。

この中国企業の半導体技術者は次のようにおっしゃっています。

「高い技術力なしに製品を作れない。」

「(半導体技術では)中国のレベルはまだ低い。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

とても残念なことですが、インターネットやAI、ロボットなどの先進技術は私たちの暮らしや産業にとってとても有益である一方、軍事技術として使用されれば効率良く、しかも殺傷能力の高い兵器となります。

ですから、軍事大国化を目指す国はこうした技術を開発したり、あるいは他国から関連技術を入手しようとしたり、購入しようとします。

今の中国はまさに世界最大の軍事大国、アメリカに匹敵するような軍事大国を目指しており、その主な技術の入手先がアメリカなのです。

しかも、中国政府は民間の技術を軍事に活用する国家戦略、軍民融合を掲げています。

そして、中国の急速なハイテク技術の進展にアメリカは警戒感を露わにしており、中国の急速な発展の裏に“技術の盗用”があると見て、取り締まりを強化しているというわけです。

 

しかし、アメリカ政府のこうした危機感や意向に反して、中には中国に軍事関連技術を売り渡す民間企業も出てきます。

 

こうした状況において、特に注目すべきは軍事面において、通信技術がとても重要な位置を占めているということです。

今や通信技術なしに軍隊や兵士の行動を統制することは出来ないからです。

そして、ファーウェイが世界をリードしている通信方式「5G」により世界の次世代の情報インフラを握れば、機密情報までもが中国に漏えいするのではないかとアメリカは警戒しているのです。

 

いずれにしても軍事覇権を目指す中国と何とか今の軍事的優位性を維持しようとするアメリカ、そして徐々にその差が縮んでいく中で、その行き着く先は両国、あるいは両陣営の同盟国を巻き込んだかたちでの軍拡競争、更には戦争勃発のリスクの高まりです。

 

ではこうした流れを食い止めるためにはどのような対応策が考えられるでしょうか。

以下に私の思うところをまとめてみました。

・世界的な平和主義の徹底

  国連などの組織を通して、飽くまでも戦争反対を貫くこと

・世界各国が過度な軍事技術の開発を進めることを阻止する条約の締結をすること

・この条約に反する行為を行った国に対しては、国際的な経済制裁を行うこと

・今はアメリカと最も緊密な関係にあり、中国との経済関係の深い日本の現職総理である安倍総理が率先して、両国の間に立って世界平和、および自由貿易の維持に向けて調整を行い、両国の緊張関係を解き、ソフトンディングに向けて取り組むこと


 
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