2019年06月01日
プロジェクト管理と日常生活 No.595 『”50年に一度の大雨”に見舞われた屋久島町の被害から得られる教訓』

5月19日(日)放送の「ニュース7!」(NHK総合テレビ)で”50年に一度の大雨”に見舞われた屋久島町の被害状況について取り上げていたのでご紹介します。

 

5月18日、記録的な大雨が降った鹿児島県屋久島町で一夜を明かした300人を超える登山者などが次々と下山しました。

下山した女性の一人は、命の危険を感じたと語りました。

 

5月18日、屋久島町では50年に一度の記録的な大雨になりました。

行く手を遮るように斜面から滝のように流れ落ちる大量の水、ツイッターには登山をしていたと見られる人が撮影した動画が投稿されています。

大雨により県道では土砂崩れが発生し、登山者など314人が下山出来ずに孤立しました。

1993年に日本で初めて世界自然遺産に登録された屋久島、標高1000mを超える山中にある縄文杉などを目当てに年間およそ30万人が訪れています。

観光客を惹きつける一方、全国でも有数の雨が多い屋久島、山の中で何が起きていたのでしょうか。

 

10年以上ガイドを続けているという男性は次のようにおっしゃっています。

「朝から確かに(雨が)降ってはいたんですけど、天気予報では悪いことを言ってたんだけど、雨雲レーダーでは言うほどでもない状態で、・・・」

 

歩き始めて一度は目が止んだ状態で、縄文杉に到着、急いで引き返しますが、その後の雨の強さは想定外だったといいます。

ガイドの男性は次のようにおっしゃっています。

「まさかここまで降って、ここまで崩れるとかっていう状態にはなっていましたね。」

「そこまで無理したつもりはないんですけど、今回のこと自体が教訓になるのかなとは思いますけどね。」

 

ロープをつかみながら、滝のような流れの下を進む人たち、下山は困難を極めました。

がけ崩れが起きた現場では、自衛隊と警察が脚立と板で仮設の橋を造ったということです。

多くの登山者がバスや山小屋で一夜を明かしました。

町によると、孤立し、一夜を明かした登山者や送迎バスの運転手など、314人は5月19日の夕方までに全員の下山が確認されたといいます。

町によると、これまでに3人が低体温症のような症状を示した他、1人がねんざをして病院で手当てを受けているということです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

さて、別なテレビニュース番組によると、屋久島のある高度以上の場所には気象予報の判断材料になるデータを取れる装置が設置されていないというのです。

ですから、屋久島における気象庁による天気予報は、屋久島のある高度以上の場所の気象状況が反映されていないといいます。

なので今回、大雨で滝のような雨が降り始める正確な予報が屋久杉のあるような高度のある地域については出来なかったのです。

こうした状況から、ガイドの中には天気予報とは別に天候状態から独自に判断して途中で下山して被害に遭わなかった集団もあったといいます。

 

ここで思い起こすのは、これまで何度となくお伝えしてきたビッグデータに関する課題です。

今や過去の気象データやリアルタイムの気象データなどのビッグデータを元に天気予報がなされていますが、いくら多くのデータを集めてもある観点でのデータが漏れていたり、ほとんど含まれていなければ、その観点での正確な分析は望めないのです。

ですから、ビッグデータを最大限に活用するためには、量的にも質的にもより多くのデータを収集する必要があるのです。

同時に、天気予報や景気動向などを伝える側は、それぞれの予測の前提条件をきちんと伝え、一方で活用する側は前提条件を理解したうえで参考にする必要があるのです。

 

ですから、今回の屋久島での”50年に一度の大雨”においても、屋久杉のある標高1000mを超える場所でも観測地点があれば、より高い精度の天気予報が発表され、被害もほとんどなかったかも知れないのです。

あるいは、こうした観測データがなくても、登山ガイドが天気予報の限界を把握していれば、より正確な判断が下せ、被害に遭わずに済んだと思うのです。

 

さて、プロジェクト管理においても、その最初の作業は現状把握です。

要件定義や外部設計など、その後の作業は全てこの現状把握をベースに進められるのですから、現状把握が現実からかけ離れていては、プロジェクトの成功はほとんど期待出来ません。

 

ということで、今後ビッグデータをもとにAIがデータ分析をして私たちに様々な情報を提示してくれるようになりますが、ビッグデータの精度が悪ければ、AIの活用も期待するほどの成果には結びつかないのです。

単にビッグデータを元にしたAIの分析結果を鵜呑みにしては危ういのです。


 
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