2019年05月17日
アイデアよもやま話 No.4331 いずれはんこは無くなる!?

1月22日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でいずれ無くなるのではというはんこについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

日本特有の文化であるはんこ、使わないという声も聞かれましたが、自宅に数本は所持している人も多いのではないでしょうか。

ですが近年、はんこ市場は縮小傾向にあります。

金融機関は、インターネットバンキングや電子サインによる認証を広げるなど、はんこを使わないサービスに力を入れています。

全国銀行協会の藤原 弘治会長は次のようにおっしゃっています。

「印鑑レスのサービスの利用者へのニーズが高まれば、銀行取引においても印鑑によらない手続きを選択するお客様が増えて、更に利便性の向上、業務効率化につながるというふには考えています。」

 

山梨県西部の山間の町、市川山郷町、町の中にはどれも似たようなかたちの大きな展示物があります。

実は、山梨県は印鑑の本場、この町では明治時代に近隣の山ではんこの材料となる水晶が採掘されていたことから一大産業になったといいます。

山梨県甲斐市にある立川印房のはんこ職人、立川 正仁さん(68歳)はおよそ50年にわたり彫刻刀を握り、何万本ものはんこを彫ってきました。

そして、次のようにおっしゃっています。

「私たちが一個一個丁寧に心を込めて彫ることと、機械でただ「はんこです」っていうことを言われても何か味けない、機械だとね。」

 

立川さんの弟、智さん(66歳)は、父親の跡を継ぎ、山梨ではんこ販売店を営んでいます。

そして、次のようにおっしゃっています。

「(店に)来る人がね、「はんこがなくなるというじゃないか」って言うんです。」

「「えっ、はんこはなくならないよ」って言うんだけど、「なんか、(そんなこと)言ってたよ」って、そういう風評が広がるのが一番怖いんですね。」

 

智さんが危惧しているもの、それは次の国会で審議が予定されているデジタルファースト法案です。

安倍総理は国会審議の場で次のようにおっしゃっています。

「社会保障などに係わる申請手続きを大胆に簡素化し、法人の設立登記はオンラインで24時間以内に完了するようにします。」

 

政府肝入りの政策、デジタルファースト法案、行政サービスの100%デジタル化を目指す法案で、ペーパーレスや押印手続きの簡略化を促進することが法案の骨子となっています。

具体的には、新しい法案では法人を設立する際に届け出が必要な印鑑、会社印の届け出義務の廃止が盛り込まれる見込みとなっています。

目的は、義務化されている届出を任意化することで法人を設立する際のハードルを下げようとするものです。

ですが、もし法人設立にはんこの届け出が必要なくなれば、智さんのお店では売り上げが4分の1ほど減ってしまうといいます。

智さんは次のようにおっしゃっています。

「私たちは決めたものを粛々と従うしかないのかなと。」

「ちょっとやっぱり寂しいかなというのは感じましたね。」

「(はんこは)代理の方が使える、もし社長さんがいなくても社長さんの代わりに決済が済む、そういうことがやっぱりはんこの一番の特徴だと・・・」

 

日本で唯一の月間はんこ専門誌、現代印章によると、はんこの市場規模は年間約1700億円、その内法人設立の際に必要なはんこの市場は12億円〜30億円程度だといいます。

ただ今後政府ははんこが必要となる場面を減らす方針です。

平井IT政策担当大臣は次のようにおっしゃっています。

「押印が民間の使用習慣において、ただちに無くなることはないというふうに思います。」

「ただ皆さんも普段いろいろな手続きをするうえで、委任状の三文判とかどこでも売っているようなはんこを押さなきゃいかんというような局面はいったい何なんだと。」

 

日本の印章制度、文化を守る議員連盟の会長を務める自民党の竹本 直一衆院議員は次のようにおっしゃっています。

「いわゆるデジタルデバイド(情報格差)と言われますが、高齢者とか、そういった人たちは中々馴染めない。」

「(はんこはこの法案でなくなるかという問いに対して、)なくなりません。」

「残ると思います。」

 

こうした状況において、はんこ職人の立川 正仁さんは次のようにおっしゃっています。

 

「この仕事以外の仕事は出来ないもんで、これに力を入れる他ないんですよね。」

「少しはこのはんこの良さというものを取っておいて欲しいんですよね。」

 

また、智さんは次のようにおっしゃっています。

「やっぱり印章制度は伝統として残っていますので、この印章制度を長く残して欲しいなと強く切に願っています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

政府肝入りの政策、行政サービスの100%デジタル化を目指すデジタルファースト法案ですが、私は方向性については大賛成です。

なぜならば、100%デジタル化によって全てがデータ化され、あらゆる業務プロセスの自動化が可能になるからです。

そして、行政機関の生産性は間違いなく格段に向上すると期待出来ます。

 

しかし、一方で日本特有の文化であるはんこがなくなってしまうのは寂しい気もします。

ですから、電子空間の中で個人認証が出来るパスワードに代わるような絵などが発明されればいいなとは思います。

 

いずれにしても、日本の印章制度、文化を守る議員連盟の会長を務める竹本衆院議員のおっしゃるように、特にスマホやパソコンに馴染のない高齢者などのことを考慮すると、少

なくとも個人認証の手段として当面はんこを全く無くすことは出来ないと思います。

 

しかし、4月25日(木)付け読売新聞の朝刊の野村総合研究所パートナーの北 俊一さんの投稿記事によれば、高齢者世代のシニアにスマホが急速に普及しているといいます。

3月にNTTドコモのモバイル社会研究所が発表した調査では、60歳代のスマホ保有率が70%、70歳代でもスマホ保有率が従来型携帯電話(ガラケー)の保有率を上回り43%といいます。

ですから、もしかすると一般に考えられている以上のスピードでスマホが高齢者世代の間で普及していき、行政サービスの100%デジタル化のみならず民間における個人認証のデジタル化がほぼ行き渡る社会が到来するかもしれません。

 

なお、デジタルファースト法案のその後の行方ですが、4月26日の衆院内閣委員会で与野党の賛成多数で可決したと報じられています。


 
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