昨年11月9日(金)放送の「アスリートの魂」(NHKBS1)では「己に挑む六番勝負〜剣道・西村英久〜」をテーマに取り上げていました。
そこで今回は、昨年の全日本選手権で2連覇を達成した、日本最強の剣人、西村
英久選手(29歳)が番組の最後におっしゃった言葉に着目してご紹介します。
「自分を信じて、自分の剣道を貫き通して、本当に何をしたか全然覚えていないぐらいですもんね。」
「何も考えずに無心です、本当に無心ですね。」
「(勝たなければならない重圧と自分が目指す剣道の狭間であがき続けた西村選手がその先で見えたものについて、)確かに今回下がらないことを意識してやってきて結果が出ました。」
「でもまだ下がってしまう部分もあるし、まだまだ上を目指さなきゃいけないのかなと思うんですね。」
「2連覇しましたけど、ここで満足しとったら駄目なのかなと思うし、もっともっと前に行く剣道で、もっともっと自分の向上心を持たないと駄目だと思うんで、剣道だけでなく、人としても大きくなっていくことが大事なのかなと思いますね」
今年は前人未到の3連覇がかかっています。
しかし、それがゴールではありません。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
スポーツに限らず、何事においても無心の状態が一番気持ちがリラックス出来て、ベストコンディションで取り組むことが出来るようです。
しかし、実際にスポーツの大会では、本来持っているいつものような実力が発揮出来ずに良い成績を出せずに終わってしまう選手を多く見かけます。
このような場合、こうした選手は重圧に負けて“無心”になり切れなかったと思われます。
でもだからと言って、勝負の世界では“無心”だけでは勝つことが出来ません。
昔から“心”、“技”、“体”と言われているように、“無心”だけでなく、技術と身体能力いう3つのバランスが相手を上回る状態でこそ勝負に勝つことが出来るのです。
同時に、人としての成長も大事です。
単なる“無心”ではなく、人としていろいろな経験を積んだ、その成果に裏打ちされた“無心”でなければならないと思うのです。
ですから西村選手のおっしゃる“無心”とは、人一倍取り組んで来た練習による技術の習得と体力、そして「何としても勝たなければならない」という重圧を跳ね返す精神力に裏打ちされた、とても重い言葉だと思います。