昨年12月24日(月)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で新しい京町家について取り上げていたのでご紹介します。
日本を訪れた外国人旅行者が昨年初めて3000万人を突破し、京都ではホテルなどの宿泊施設の建設が相次いでいます。
その一方で、京町家と呼ばれる木造住宅が年々減少しています。
こうした中、新たに京町家を造ろうという取り組みが始まっています。
住宅街にある路地を抜けた先には、土壁でできた木造の家が建築中です。
京都市上京区の建築中の住宅は、石の土台の上に木を組み合わせた天井や柱、釘は1本も使っていません。
格子状の竹に藁を混ぜて強度を高めた土を塗って壁を作ります。
この家のテーマは”新築の京町家”です。
日本の伝統的な工法で建てられています。
この家を企画した不動産会社、株式会社八清の西村 孝平社長は、京町屋の減少が続く中、これまでリノベーションなどを手掛けてきました。
今回”新しい京町家”をつくるという逆転の発想に打って出ました。
西村社長は次のようにおっしゃっています。
「50年後の京都はどんなのと言った時に、本当の京都らしさが無くなった京都になってしまうので、新しくつくる町屋も考えていったらいいのかなと。」
京町屋は昭和25年(1950年)に建築基準法が施行される前に建てられた、京都の伝統的な木造建築です。
京都市は耐震化の助成をしたり、取り壊す前の届け出を義務付ける条例を制定したりして、保全に力を入れてきました。
しかし、住民が高齢化してマンションやホテルに建て替わるなど年々減少、7年間に約5600軒が取り壊されて4万件余りになりました。
今でも1日に2軒ほどのペースで無くなり続けているといいます。
既存の京町屋を保存する取り組みだけでは古都の町家を維持するのは難しいと、京都市は“新築の京町家”について考える検討会を新たに立ち上げました。
メンバーは学識経験者や不動産関係者などの専門家です。
京町屋を活用した事業者は次のようにおっしゃっています。
「町家をどう住んでいただくかという方にシフトすべきで・・・」
また建築関係者は次のようにおっしゃっています。
「せっかく新しいものを作るのであれば、変えたらどうかと思うんですね。」
「廊下の幅は最低1200ミリにしましょう、そうしたら車椅子の人がくるっと回れるとかね。」
京都市は“新築の京町屋”の定義を定め、将来的には新たに建てる際に助成することも検討しています。
検討会の座長で京都美術工芸大学の高田 光雄教授は次のようにおっしゃっています。
「新しい京町屋を普及させていくことを施策として考えなければいけない。」
行政が新築の京町屋のあり方を検討する中、一足早く建てた建築会社、八清により、取材の日、お客向けの内覧会が開かれました。
食器洗い乾燥機が付いていたり、IHクッキングヒーターだったり今風です。
現代的な間取りや設備を取り入れて、住み易さにもこだわった魅力をアピールしました。
この内覧会に来た外国人女性は次のようにおっしゃっています。
「それは住んでみたいですよ。」
「持続可能な伝統プラス人間が求める便利さが混ざっているわけですからいいと思いますね。」
西村社長は次のようにおっしゃっています。
「工法も伝統だし、町家の住み方が出来るということで言えば、住み心地はいいよと言ってもらえると尚更うれしいですけどね。」
京町屋の何を残すべきか、そして何を変えていくのか、伝統を未来につないでいくための施策が始まっています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
京都のような日本を代表する伝統的な街並みの観光地で、京町屋という既存の町家を今後どうしていくかということを考えるうえで、次のような要件があると思います。
・京町屋という伝統的な街並みを維持する
・最新の家電などの技術を使って、既存の町家をより暮らし易い家に改築したり、新たに家を建て直す
・個々の町家だけでなく、公共の建造物や電灯など町を構成する諸々の建物や施設もある種の統一感を持たせる
要するに、街並みの伝統を維持しながら、現在の一般的な家庭に備わっている家財道具を取り入れるということです。
いくら伝統を重んじると言っても、住む人たちが毎日大きな不満を抱えながら暮らすのでは本末転倒です。
このように伝統と最新の住宅事情とを兼ね備えることによって、京都は古都としての伝統を引き継ぎ、しかも暮らし易くなり、国内外を問わず、多くの観光客にも満足してもらえるのです。
さて、今回ご紹介した“新しい京町屋”への取り組みに限らず、街には一定の統一感が求められます。
ですから、国や各地方自治体ではそのために様々な規制を設けているわけです。
こうした枠組みの中で、各地域がそれぞれの特色を生かして、あるいは新たに創造することによって、より多くの地域が国内外を問わず、多くの観光客から魅力を感じてもらえるようになるのです。
そして、こうした積み重ねが“観光立国”につながると思うのです。
ということで、是非“新しい京町屋”への取り組みも成功させて欲しいと思います。