昨年12月13日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で通勤の未来を変える新交通システムについて取り上げていたのでご紹介します。
鉄道や飛行機、更にバスやモノレールに代わる次世代の交通システムの開発現場に番組のカメラが入りました。
私たちの未来の通勤方法も変えるのでしょうか。
その現場は東ヨーロッパのベラルーシ共和国です。
ロシアやポーランド、ウクライナなどに挟まれた、東ヨーロッパの内陸国です。
首都ミンスクからクルマで1時間ほど行くと、かつて戦車の走行テストが行われていた場所に着きました。
そこではモノレールのような乗り物が動いていました。
乗り込んでみると、かなり速いです。
こうした乗り物を発明したのは、技術者でスカイウェイ・テクノロジー創業者のアナトリー・ユニツキーさんです。
ユニツキーさんは次のようにおっしゃっています。
「これは14人乗りの「シティ・ユニバス」という乗り物です。」
「最高速度は時速150kmです。」
ユニツキーさんは、2015年に次世代の交通システムを開発するスカイウェイ・テクノロジーを設立、現在5つのタイプの乗り物の走行実験を実施しています。
取材班が最初に見たものは48人乗りの大型「シティ・ユニバス」でした。
車両を連結させて運行すれば、大勢の人を運べるといいます。
スカイウェイ・テクノロジーは、世界中の投資家を招いて大規模な試乗会を開催するなど、開発の資金調達を着々と進めています。
投資マネーを引き付ける理由は、環境への配慮と低コストです。
全て電動で、衝突防止センサーを備えた自動運転なのです。
最大の売りは細いレール、レールと車両のデザインを極限までシンプルにすることで、全体を大幅に軽量化しました。
ユニツキーさんは次のようにおっしゃっています。
「レールの建設コストは鉄道などに比べて20分の1ほどです。」
建築資材が少なくて済み、環境にも優しいうえ、全体の維持費や運航コストも鉄道などに比べ、7割近く削減出来るとしています。
ミンスク市内の工場を訪ねると、車体の開発や製造はここで行っています。
動力源のモーターは自社開発、バッテリーも自社で組み立てています。
ただ実際の納入実績はゼロ、このため本社に海外から顧客を招いて技術や安全性を説明する日々が続きます。
先日、アラブ首長国連邦からの受注が決まったといいます。
この日は、ブラジルの地方政府の職員たちが訪れていました。
パラナ州政府のシルビオ・バウス都市開発長官は次のようにおっしゃっています。
「ブラジルでの導入を真剣に考えている。」
「他の交通手段に比べて環境への悪影響が小さい。」
ユニツキーさんがスカイウェイのアイデアを思い付いたのはおよそ30年前、最初の設計車両は鉄のレールの上にトラックを乗せただけの素朴なものでした。
ロシアの当局からは開発拠点の閉鎖を命じられるなど、妨害を受けたのです。
しかしユニツキーさんは環境に優しい乗り物をつくる夢を諦めませんでした。
ユニツキーさんはその理由について次のようにおっしゃっています。
「生まれ故郷を失ったことが最大の理由です。」
「私が育った村は強い放射能に汚染されてしまいました。」
ユニツキーさんが育ったベラルーシ南部の村は、あのチェルノブイリ原発のすぐ近くで、1986年に起こった原発の爆発事故で育った家も勉強した学校も村は全て放射能に汚染され、人が住めなくなってしまったのです。
ユニツキーさんは次のようにおっしゃっています。
「こうして地球は滅びるのだと感じました。」
「だからせめて環境にいい乗り物が必要だと強く思ったのです。」
今そんなユニツキーさんが思い描くのは、高層ビルの間や都市の間の空をスカイウェイが自由自在に走る未来です。
故郷を失ったユニツキーさんの夢は実現に向けて動き始めたようです。
番組コメンテーターで大阪大学の安田 洋祐准教授は次のようにおっしゃっています。
「(日本などで活用出来そうかという問いに対して、)環境に優しいだけじゃなくて、低コストというのがすごいことですよね。」
「なので、日本だと特に地方の過疎地を中心に赤字路線が続いていて、どんどん廃線になっていくみたいのが増えているじゃないですか。」
「そういったところにこういう環境配慮型でかつ低コストのものが導入出来れば、地元の人たちの足になっていくのかなというのは、随分期待を抱かせるようなニュースでしたね。」
また、解説キャスターの山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「どうしても品質、安全から入る日本だと出てこない発想なのかなと思っていましたけどね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今、移動手段として自動車やバスの全自動化、あるいは空飛ぶ自動車への関心が高まっています。
また無人モノレールは、都内のゆりかもめなど既に一部の区間で走行されています。
こうした中、今回ご紹介した「シティ・ユニバス」は全て電動の自動運転で、しかも全体が大幅に軽量化され、全体の維持費や運航コストは鉄道などに比べ、7割近く削減出来るといいます。
しかも最高速度は時速150kmといいます。
高層ビルの間や都市の間の空で「シティ・ユニバス」を運行させれば、その分土地の有効活用が出来ます。
こうしたメリットを考えると、日本でも「シティ・ユニバス」の導入を検討したり、あるいは独自に同様の乗り物を研究開発してもいいのではないかと思います。
いずれにしても「シティ・ユニバス」の運行により、全体の維持費や運航コストは鉄道などに比べ、7割近く削減出来るというのは経済的にも省エネの観点でもとても魅力的だと思います。