2019年03月24日
No.4284 ちょっと一休み その691 『並外れて高い日本の中国に対する印象の悪さ度合い』

昨年11月23日(金)付け読売新聞の朝刊記事で中国の印象についての国際比較について取り上げていたのでご紹介します。

 

世論調査会社、ピュー・リサーチ・センターが昨年10月に発表した25ヵ国対象の調査では、アフリカ諸国での中国の印象は比較的高いです。

中国に「好印象」を持つと答えた人は、チュニジアで70%、ケニアで67%に上り、平均の45%を大きく上回っています。

ちなみに、日本での中国に対する「好印象」は17%、「悪い印象」は78%とどちらも他国に比べて並外れた結果になっています。

アメリカでさえ、それぞれ38%、47%という結果なのです。

その大きな理由は、巨大経済圏構想「一体一路」を推進する習近平国家主席が2015年に発表した中国政府による支援事業「万村通」です。

「万村通」とは、文化面の対外発信を通して自国の影響力拡大を図る中国の国家戦略です。

具体的には、中国国営のテレビ局、中国国際テレビの番組を自宅で見られるようにしたりして、中国の発展ぶりや対アフリカ支援の成果を紹介するなど、中国の視点が強く反映されています。

また、中国文化の普及拠点である孔子学園は2017年時点でアフリカの39ヵ国に54ヵ所あります。

他にも規模の小さな孔子教室も30ヵ所あり、中国語を学ぶ人が急増中です。

 

中国のアフリカ重視は際立っています。

狙いは資源や市場確保だけではありません。

自国主導の新たな国際秩序構築を目指す中国にとり、国連などで投票権のあるアフリカ54ヵ国の支持は重要な意味を持つからです。

また、中国はアフリカで鉄道や港湾の整備など、採算を度外視した多額の投融資も行っており、欧米から「新植民地主義」との批判も出ています。

 

昨年9月に北京で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」(*)首脳会議には、台湾と外交関係のあるエスワティニ(旧スワジランド)を除くアフリカ53ヵ国が参加しました。

  • 中国がアフリカ諸国との関係強化を目指して2000年に閣僚級で始めた国際会議

 

習国家主席はアフリカに対し、2015年と2018年にそれぞれ600億ドルの支援を表明し、アフリカからの留学生受け入れにも積極的で、2003年には2000人だった留学生数が2016年には6万人超まで増えました。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

今回ご紹介したように、中国のアフリカに対する様々な取り組みがアフリカ諸国での中国に対する好印象につながっているのです。

しかし、注目すべきは中国の真の狙いである、欧米からも批判が出ている「新植民地主義」です。

中国が50ヵ国を超えるアフリカ諸国を取り込むことにより、中国の国際社会における発言力は強大になります。

中国はこうした取り組みと並行して世界最強の軍事大国であるアメリカにも対抗出来るような軍事大国化も目指しています。

このような中国によるアメリカを凌ぐほどの大国としての強大化を目指す一連の取り組みで注視すべきは、中国が共産党一党独裁による共産主義国家であるということです。

万一、中国が国際的に主導的な立場を手に入れるような事態になれば、自由主義陣営に属する国々にとってはとても相いれない状況になってしまいます。

ところがアメリカのトランプ大統領はこうした状況下にも係わらず、国際社会から目を背け、ひたすらアメリアの利益を優先する「アメリカファースト」を目指しています。

 

こうした状況下で、日本はただ中国に悪い印象を持つだけでなく、「新植民地主義」を進める中国に対抗すべく、自由主義陣営に属する国の一員として、真の意味で世界各国が「共存共栄」、「WinWin」の関係を築くという基本方針で、政府、経済界などそれぞれの立場で積極的に国際社会に働きかけることがとても重要だと思うのです。

 

同時に重要な取り組みが2つあります。

1つ目は観光大国を目指すことです。

より多くの世界各国の人たちが日本を何度でも訪問したいと思わせるような、日本の各地方が独自の魅力を発信出来るような取り組みを継続させることです。

勿論、ベースは日本独自の“おもてなし”精神です。

世界中のより多くの人たちにこうした日本の良さを知ってもらえれば、まず日本のイメージアップになります。

また、庶民レベルでの様々な交流は相互の信頼関係を築くうえで、とても重要です。

更に、現在の日本は憲法で“戦争放棄”を掲げていることなども知ってもらえれば、日本に対する警戒感も和らぐはずです。

 

2つ目は外国人労働者の受け入れです。

優秀な外国人労働者の受け入れは、少子高齢化に伴う日本の労働人口不足を解消するうえでの一つの切り札になります。

しかし、この取り組みはもろ刃の剣になり得ます。

というのは、外国人労働者が安心して働けるような環境、あるいは適切な収入が得られれば、帰国後も日本のファンになってもらえます。

しかし、今問題になっているブラック企業のような待遇に遭えば、外国人労働者にとって残るのは日本に対する悪いイメージだけです。

ですから、国を中心にしっかり受け入れ態勢を構築することがとても重要になります。

 

こうした地道な取り組みはすぐには効果が出なくても、長い目でみれば必ず国際社会で評価され、いずれ中国にも軌道修正せざるを得ない状況に追い込むことが出来ると思うのです。

勿論トランプ大統領の「アメリカファースト」に対しても同様の効果が期待出来ます。


 
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