2019年03月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.585 『イギリスの移民政策から学ぶべき外国人労働者の受け入れ拡大のリスク対応策』

外国人労働者の受け入れに関しては、これまでアイデアよもやま話 No.4277 外国人労働者の受け入れ拡大に向けて!などでお伝えしてきました。

しかし一方で、今問題になっているブレグジットの発端はイギリスのへの移民の増加だといいます。

そうした中、昨年12月11日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でイギリスの移民政策について取り上げていたのでご紹介します。

 

番組コメンテーターで日本総研のチェアマンエメリタス、高橋 進さんは前回お伝えしたブレグジット(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.584 『ブレグジットが世界経済にリーマンショック以上の影響を与えるリスクの重大性』)に関連して次のようにおっしゃっています。

「(この先どうなるかという問いに対して、メイ首相が)何もしなくて辞めちゃってもいいじゃないかという意見もあるんですけど、その時は本当に経済が混乱するんじゃないかと思いますけどね。」

「で、ブレグジットから日本は何を学ぶべきかということをちょっと考えてみたんですけども、そもそもなぜブレグジットになったかというと、移民に対する反発が大きかったと思うんですよ。」

「で、ただイギリスの場合は非常に大量の外国人を受け入れてきたので、日本の比ではないんですけども、外国人を受け入れることでイギリスと同じような問題を日本が抱える可能性はあると思うんですよ。」

「イギリスの場合は移民に仕事を奪われているという反発が強かったんですね。」

「で、日本の場合は必ずしもその仕事を奪われるという懸念は大きくないと思うんですよ、人手不足ですからね。」

「でも日本は外国人を社会が受け入れた経験が本当に浅いので、外国人を社会が受け入れることで社会のストレスが溜まってしまう危険性がある。」

「そこで私は、キーワードになるのは“共生”という言葉だと思うんですね。」

「今、日本の中で議論しているのは、外国人の働き易い環境をいかに整えるかということですけども、同時に外国人が生活者として地域の中にスムーズに溶け込めるように、受け入れる側の日本の努力が必要になってくることだと思うんですね。」

「それから今、2国間協定が進められていると言われていますけども、送り出し国と日本との間でちゃんと協定をつくって、例えば悪質なブローカーを排除するとか、来る前に日本語のレベルを上げてもらうとか、そういう外国人が日本にスムーズに着地出来るような仕組みをつくることも大事だと思いますね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

日本で働いている外国人労働者は2016年時点で過去最高を更新して128万人いるといいます。

その背景として、少子高齢化による人手不足があるといいます。

そして、このまま外国人労働者が増え続けていくとイギリスと同様の問題が発生する可能性が出てきます。

そこで、アイデアよもやま話 No.4277 外国人労働者の受け入れ拡大に向けて!では、外国人労働者の受け入れ要件について私の思うところをお伝えしました。

今回は、番組を通して、外国人労働者の受け入れにおけるリスク、およびリスク対応策について、私の思うところを以下にまとめてみました。

(リスク)

・外国人労働者が出身国の文化や習慣を働き先の周りの日本人に理解してもらえないと、疎外感でストレスを感じたり、周りの日本人との間で軋轢を生じてしまうこと(例えば、イスラム教のお祈りを出来る場所や時間が確保されない)

・外国人労働者の日本、あるいは日本人に対する印象が悪いまま帰国すると、長い目で見て両国の友好関係に悪影響を及ぼすこと

・外国人労働者の給料が不当に低いと不満を感じてしまうこと

・外国人労働者の労働時間が不当に長いと不満を感じてしまうだけでなく、健康維持も出来なくなり、労働生産性にも悪影響を及ぼすこと

・外国人労働者の受け入れ数が過剰になると、肝心の日本人の労働市場が縮小し、日本人の不満が高まること

(リスク対応策)

・外国人労働者の出身国の文化や習慣を受け入れ先企業が理解し、尊重すること

・そのうえで、同様に日本の文化や習慣についても理解してもらうこと

・日本で働くうえで必要最小限の日本語をマスターしてもらうこと

・給料は日本人と同等の条件とすること

・高度な技術を持った外国人労働者に対しては、本人が希望すれば永住出来るような制度にすること

・外国人労働者用の“駆け込み寺”的な相談窓口を設け、不当な企業に対する改善要請、あるいは処罰を徹底させること

・国として、定期的に外国人労働者へのアンケートを実施し、国としての外国人労働者受け入れの対策に反映させること

 

以上、まとめてみましたが、要約すれば、高橋さんのおっしゃるようにキーワードは“共生”だと思います。

外国人労働者と日本、あるいは日本人との間で双方にメリットがあるような関係こそ、双方の良好な関係が維持出来るのです。

逆に、こうした双方の良好な関係が維持出来なくなると、犯罪や暴動が発生し、社会不安をもたらしてしまうリスクが生じるのです。

ですから、今や国際的にも大きな問題となっているブレグジットを教訓として、これから外国人労働者の受け入れ拡大を目指す日本は慎重に対処していくことが求められるのです。


 
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