2019年03月15日
アイデアよもやま話 No.4277 外国人労働者の受け入れ拡大に向けて!

これまでアイデアよもやま話 No.4271 参考にすべきフランス・スウェーデンの少子化対策!アイデアよもやま話 No.4243 外国人労働者受け入れ拡大の必要性!などで外国人労働者の受け入れに関する内容をお伝えしてきました。

そうした中、昨年11月13日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で出入国管理法(入管法)の改正案について取り上げていたのでご紹介します。

 

外国人労働者の受け入れを拡大する入管法の改正案が衆議院本疑義で審議入りしました。

外国人労働者とどう向き合って行けばよいのか、番組では飲食店のある施策を取材しました。

 

外国人労働者の失踪などの問題が表面化する中、労働力としてどう受け入れ、育てていくのか、外国人労働者の働き方を変えようと動き出したある飲食店の研究を取材しました。

ベトナム出身のベトナム語通訳士、山本 美香(グエン・テイ・フォン)さんは、ベトナム人の強制送還の手続きや入管だけでなく、警察署や裁判所などからもひっきりなしに通訳の依頼が入るといいます。

現在の技能実習制度では、受け入れ先の過酷な待遇に耐えかねて逃げ出せば、不法滞在などとして扱われます。

山本さんのスマホには救いを求める多くのメッセージが残っていました。

送られてくるメッセージの中には次のようなものがあります。

「私を助けて下さい。」

「給料を2ヵ月分払ってもらっていない。」

 

山本さんは次のようにおっしゃっています。

「もっといい将来を望んでいたはずなのに、地獄のような状況になってしまうと心が痛いですね。」

 

山本さんの紹介で2人のベトナム人留学生に会うことが出来ました。

そのうちの一人は次のようにおっしゃっています。

「(時給が)500円、600円くらい。」

「いっぱい残業して給料をもらえない時もある。」

 

幸い、2人の勤務先は良心的だといいますが、仲間の辛い現実を多く耳にしており、次のようにおっしゃっています。

「借金して日本に来た。」

「(ベトナムに)帰ったら借金が返せないから、給料が少なくても日本にいて仕事をしてます。」

 

ベトナムでは悪質なブローカーが暗躍、現実とかけ離れた夢のような生活を語って若者を集め、多額の手数料を徴収しています。

 

ベトナム人留学生は続けて次のようにおっしゃっています。

「(これから日本に来る人は幸せになれるかという問いに対して、)なれない。」

 

こうした中、山本さんが昨年5月に通訳の仲間と共に立ち上げたのが一般社団法人 在日ベトナム共済会です。

ベトナム人労働者の悩み相談に母国語で対応、必要に応じで弁護士や行政機関にもつなぎます。

山本さんは次のようにおっしゃっています。

「共済会の力で人を救えたらいいなと思っています。」

 

一方、外国人労働者の教育に力を入れているのがテング酒場など120店舗を運営する居酒屋大手のテンアライド株式会社です。

全国で約2700人のアルバイトを雇用、そのうち約900人は外国人労働者で8割近くがベトナム人です。

テング酒場 神田南口店の荒木 慎吾店長は次のようにおっしゃっています。

「(外国人労働者がいないとお店が成り立たないかという問いに対して、)実際は成り立っていないところですね。」

「早く覚えて一人前になろうという意識は多いので・・・」

 

人手不足が続く外食産業にとって外国人は貴重な労働力です。

そこで昨年始めたのがベトナム人のアルバイトに特化した研修です。

指導にあたるのは一昨年就業ビザを取得してテンアライドの正社員になったベトナム人のグエン・バン・トアンさん(28歳)です。

グエンさんはベトナム人アルバイトの研修やベトナム語のマニュアル作成を担っています。

グエンさんは次のようにおっしゃっています。

「外国にはいろいろな文化があり、みんな最初は分からないんですね。」

「で、こういう細かいことから教えてもらう(必要がある)。」

 

新たに採用したベトナム人のアルバイトはグエンさんの研修を受けてから店舗に配属されます。

テンアライド 人事部教育課の塩川 朋史課長は次のようにおっしゃっています。

「ここ数年、日本語力が低い人(ベトナム人)がいて、教育が一番の課題で、(アルバイトの)定着と戦力化を目的に今回、正社員(グエンさん)を1名登用させていただいたっていう・・・」

 

グエンさんを採用し、ベトナム人に特化した研修を始めたことで採用後1ヵ月以内に退職してしまう外国人労働者の割合は一昨年より約5%減りました。

テンアライドは今後外国人の正社員を増やし、アルバイトの教育に力を入れていく考えです。

塩川課長は次のようにおっしゃっています。

「ある一定のレベルまで、なるべく時間をかけないで(外国人労働者を)成長させることが一番の課題。」

「受け入れ態勢を考えていくというのは、当社だけでなく他の会社も必要になっていくんじゃないかなとは思います。」

 

日本で働いている外国人労働者は一昨年過去最高を更新して128万人います。

そして、現在外国人が日本で働くことが認められている資格は主に以下の3つに分けられます。

高度人材:大学教授、医療関係者、調理師など専門的な技術を持っている人たち

技能実習:技能の習得を目的に最長5年間の就労が可能

留学生のアルバイトなど:1週28時間以内の就労が可能

 

そして、昨年11月13日から国会で審議が始まった入管法改正案に盛り込まれているのが特定技能です。

高度人材と技能実習の間くらいに位置付けられます。

介護や農業など、労働力が不足している業種が対象になる予定です。

即戦力として受け入れるために設けられる新たな資格となっています。

 

番組コメンテーターでみずほ総研の高田 創さんは次のようにおっしゃっています。

「(外国人は既に日本にとっては無くてはならなくなっているという指摘に対して、)そうですね、日本は事実上かなりの移民大国と言ってもいいかもしれないですね。」

「ここ5年間くらいですけども、外国人の方が相当増えている業種が多いんですよね。」

「ですから、人手不足と言われているところは、かなりの部分が外国人に既に依存していると考えてもいいんだろうと思うんですよね。」

「(そうすると受け入れるのであれば、しっかりと人権が守られるなど、)そうですね、それを直視した制度なり、準備をする必要があるっていうのが今回の大きな転換だと思いますね。」

「(そのためには社会から分断されないような、どういう仕組みが必要なのかという問いに対して、)やはり一つは例えば語学教育だったり、日本語をちゃんとやるっていうことですよね。」

「それから、場合によっては国としてカリキュラムを日本語の教育のために作るとか、こういうことも私は必要なんじゃないかと思うんですよね。」

「ですから、受け入れるためには、ちゃんと同化していけるような教育だとか、もしくは、今、「働き方改革」と言われてますけども、本来「働き方改革」でダイバーシティを含めると、外国人のために重要なんだという部分があると思うんですよね。」

 

一方、番組の解説キャスターで日経ビジネス編集委員の山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「(企業側が外国人労働者に対して、しっかりとケアするのも重要ではという指摘に対して、)処遇改善のためにも私はこの技能実習制度というのを廃止すべきだと思うんですね。」

「今、日弁連(日本弁護士連合会)などもそういう意見書を出しているんですけども、それが多少時間を置いて段階的でもいいんですけども入管法の改正とセットであるべきだと思うんです。」

「これ一つ参考になるデータだと思うんですけども、今、中小企業で外国人を採用しているところの賃金がどうなっているか、まず月給で支払っているところなんですけども、正社員で採用しているところは61.1%が22万円以上払っています。」

「それに対して、技能実習生は95.1%が18万円以下なんですね。」

「次に時給で払っているケースですけども、技能実習生は48.9%が時給850円以下です。」

「非正社員に比べても待遇が悪いわけです。」

「加えて、何が一番問題かというと、辞める自由がないわけですよ、技能実習生というのは。」

「つまり、企業に隷属的な関係になっていることによって、“辞める=帰国”ですから。」

「だから、ああいう失踪の問題も出てくるわけですよね。」

 

高田さんは次のようにおっしゃっています。

「(あまりにも搾取のような実態がはびこっている企業は罰則などもより厳しくするとか、そういう方法も考えられるかという問いに対して、)そうですね、労働時間でありますとか「働き方改革」をちゃんとやっていくとかということだと思うんですよね。」

「で、そういうことをやるということが受け入れるための一つの大きなインフラになってくると思いますね。」

 

山川さんは次のようにおっしゃっています。

「先週も申し上げましたけど、これ日本人の賃金に響くんですよ。」

「今ようやく人手不足が出て来て、賃金が改善したり、いろんなことがデフレ解消に向かおうとしている時に、安倍政権はずっとアクセルを踏んで来たわけですよ。」

「これはブレーキになりかねないんでね。」

「非常に人数のコントロールは大事にしてもらいたいですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

昨年12月8日付けのネットニュース(こちらを参照)によれば、入管法改正案は今年4月の施行を予定しています。

また、番組で位置付けられた、外国人が日本で働くことが認められている資格は最終的な改正案では以下の4つに分けられます。

特定2号(熟練技能) ← 高度人材

特定1号(一定の技能)← 特定技能:

技能実習

留学生のアルバイト

 

在留資格「特定技能」を2段階で新設、「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ人に与える「1号」は最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格すれば得られます。

在留期間は通算5年で家族帯同は認めません。

農業や介護など144種で受け入れを想定しています。

 

1号」での受け入れ人数は5年間で最大34万5150人を目安にします。

更に高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与える「2号」は1〜3年ごとなどの期間の更新が出来ます。

更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はなく長期就労も可能で、家族の帯同も認められます。

 

 

技能実習や「1号」とは異なり、「2号」での滞在期間は永住権取得の要件の一つである「5年の就労期間」に算入します。

 

以上、ネットニュースに一部をご紹介してきました。

 

そもそも外国人労働者の受け入れの歴史を見ると、既に遣隋使や遣唐使の時代に中国から仏師などの技術者や高名な僧侶などを連れて来たように、古くから行われていたわけです。

ただ最近の外国人労働者の受け入れ状況は少子高齢化に伴う人手不足を何とかしなければという喫緊の課題が背景にあります。

ところが、その実態はというと、多くの外国人労働者は不安や不満を抱え、短期間で退職したり、現在の技能実習制度の不備により受け入れ先の過酷な待遇に耐えかねて逃げ出せば、不法滞在などとして扱われてしまう状況です。

一方、ベトナムでは悪質なブローカーが暗躍し、外国人労働者を目指す若者から多額の手数料を徴収しているといいます。

 

そこで、こうした状況を打破し、外国人労働者の受け入れをよりスムーズにするというのが今回の入管法改正の骨子だと思います。

ただ、現実問題として、こうした制度面だけでは大きな改善は見込めません。

そこで、外国人労働者の受け入れ要件について、私の思うところを以下にまとめてみました。

・海外の悪質なブローカーによる若い人たちからのピンハネを防ぐべく、公式な外国人労働者の受け入れ窓口を設置する

・来日した外国人労働者向けに日本語や日本文化などを習得する基礎研修機関を設置する

・来日した外国人労働者の働き口を紹介する

・外国人労働者の受け入れ先企業に基本的な業務能力を取得するための企業内研修を義務付ける

・就業先での悩み事のある外国人労働者の相談窓口を設置する

・受け入れ先企業が外国人労働者を酷使したり、最低賃金を守らない場合には罰則する

 

なお、こうした要件を満たすためには、国や企業、NPO法人などが連携して協力することが必要です。

そして、外国人労働者を受け入れる企業の対応として、今回ご紹介したテンアライドやアイデアよもやま話 No.4198 1日100食限定で残業ゼロのステーキ丼店!でご紹介した京都の佰食屋(ひゃくしょくや)の取り組みはとても参考になると思います。


 
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