2019年03月06日
アイデアよもやま話 No.4269 低価格の合成ダイヤモンドの衝撃!

昨年11月28日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で価格が10分の1の合成ダイヤモンド(ダイヤ)について取り上げていたのでご紹介します。

 

合成ダイヤのジュエリーの販売が日本でも本格的に始まりました。

世界の宝石市場が一変するかもしれません。

 

光り輝くダイヤの指輪、使われているのは全て合成ダイヤです。

京都にある老舗の宝飾店、今与(IMAYO) 京都御池店(京都市中京区)、日本初の合成(ラボ・グロウン)ダイヤだけを使ったジュエリーブランド「SHINCA」を発売しました。

ネックレスやイヤリングなどシンプルなデザインが特徴です。

使われている合成ダイヤは、化学的にも物質的にも天然ダイヤと同じですが、アメリカの工場で生まれました。

試しに天然ダイヤの隣りに同じ大きさの合成ダイヤを置いてみると、その輝きは全く同じに見え、遜色がありません。

今与の今西 信隆社長は次のようにおっしゃっています。

「ここまで来たかと驚いたのが本音です。」

「皆さん、もう少し身近なものに感じていただいて、もっともっと楽しんでいただきたい・・・」

 

合成ダイヤの商品の価格は、天然ダイヤの7割程度、求め易さも特徴です。

地中深くから掘り起こされる天然のダイヤ、環境破壊や紛争の資金源など負の側面も指摘されてきました。

一方、合成ダイヤが作られるのは工場の中、方法の一つでは装置に炭素のチップを設置、高温と低圧力の中で炭素を含んだガスを吹きかけると炭素がチップに付着してダイヤの結晶に成長します。

ここ数年で無色透明の宝飾に適したダイヤを作る技術が向上しました。

 

激震が走ったのは昨年9月、天然ダイヤの世界最大手、デ・ビアス社が合成ダイヤの販売を開始、1カラット(0.2グラム)800ドル(約9万円)という、天然ダイヤの10分の1の価格で若い世代をターゲットに売り出したのです。

発売から3ヵ月、予想以上の手ごたえだといいます。

 

ブライダル業界も注目しています。

貸衣装を手掛けるブライダリウム ミュー銀座店(東京都中央区)では昨年11月から合成ダイヤに特化したブライダルジュエリー「サスティナ」の販売を開始しました。

それぞれの合成ダイヤには大きさやグレード、価格などを分かり易く伝え、手に取って比較しながら、こだわりのダイヤを選んで欲しいといます。

婚礼の数が減少し、次の一手を探るブライダル業界、合成ダイヤに共感する新たな層の呼び込みに期待しています。

ブライダル ミューの運営会社の湯浅 泰敏社長は次のようにおっしゃっています。

「環境に優しいエシカル(倫理的)というダイヤモンドをご結婚にあたってご購入いただくと、新しいチャネルのお客様の開発に努めたいと。」

 

ただ新たな課題もあります。

札幌市内にある中古品買取店、ブランドショップ リップス すすきの店(札幌市中央区)の一室である勉強会が開かれていました。

講師は次のようにおっしゃっています。

「昨年(2017年)までのやり方が全く通じないような、非常に見分けにくいものが入って来ましたよね。」

 

合成ダイヤの見分け方勉強会です。

参加しているのは、市内の質店や中古品買い取り業者です。

合成ダイヤの多くは縁などにある刻印などで分かりますが、中には刻印が無いものもあります。

それを天然ダイヤと誤って買い取ってしまう事例が今頻発しているのです。

 

中古ダイヤの買取店、ゴールドプラザ 東京銀座本店(東京都中央区)では2017年に結婚指輪として購入したというダイヤが持ち込まれました。

ダイヤの模造石を見分けるダイヤモンドテスターで検査してみると、反応はダイヤモンド、何の疑いもなく50万円で買い取りました。

ゴールドプラザの川崎 拓さんは次のようにおっしゃっています。

「しかるべき鑑定機関に出しまして、品質をきちんと確認しようとしましたところ、合成ダイヤであると記載がありました。」

「まあ良い勉強にはなったなと感じますね。」

 

「(合成ダイヤは)市場にはどんどん増えていくと思います。」

「そうなった時、お客様から天然のダイヤモンドをきちんとお値段を付けて買い取りが出来ていけるのかに関しては非常に不安を感じております。」

 

昨年10月には広島市の別業者が合成ダイヤを誤って400万円で買い取ってしまった事例が発生、損失額も大きくなっているといいます。

 

世界最大の宝石鑑定機関、GIAではダイヤモンドの品質を判定し、鑑定書を発行しています。

合成と天然のダイヤは見分けられるのか、専門の機械を使えば鑑別は可能といいます。

GIA Tokyo合同会社(東京都台東区)の小竹 翔子博士は次のようにおっしゃっています。

「例えばCVD(化学蒸着)合成に関してはケイ素(シリコン)に関連した反応が出ますし、高温高圧合成に関してはニッケルに関連した反応が出ます。」

 

合成ダイヤの作り方によっては、ケイ素やニッケルなどの不純物の反応が出る場合が多く、見分ける手がかりとなるのです。

実際に合成ダイヤを専門の機械に入れてみると、ケイ素に関連した反応がありました。

天然ダイヤに比べると、ケイ素の量が突出しているのがグラフから分かります。

GIAでは、複数の検査で総合的に合成ダイヤを判定します。

ただ、こうした鑑定は日に日に難しくなっています。

小竹さんは次のようにおっしゃっています。

「どんどん技術が進化していっているので、いたちごっとのようなところがあるというのが現状です。」

「常に先を行くように、新しい合成が出来てきても対応出来るように研究していってます。」

 

新たな宝石の選択肢として登場した合成ダイヤ、消費者の心をつかめるのでしょうか。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

ダイヤと言えば、特に女性にとっては究極の憧れの宝飾品です。

それが専門業者でも本物のダイヤと見分けがつかないほどの人工ダイヤが製造出来るようになって、しかも価格は10分の1ほどで買えるようになったのですから、これまで本物のダイヤを購入してきた一般消費者の多くは今後人工ダイヤを購入するようになると思われます。

 

例えば、結婚指輪の予算が30万円とすれば、人工ダイヤの指輪であれば、3万円ほどで本物のダイヤと同じ大きさのものを買えるのですから、残りの27万円は新婚旅行や結婚後の生活費に充てるなどと考えるカップルが多くなるのではないでしょうか。

また、これまでダイヤに縁のなかった若い世代の女性も人工ダイヤの宝飾品を気軽に購入出来るようになり、人工ダイヤは身近な宝飾品となるので新たなマーケットになります。

しかも、人工ダイヤの技術は今後もどんどん進歩していきますから、見かけだけでなく、品質的にもどんどん本物のダイヤに近づいていきます。

 

ということで、最新の人工ダイヤの技術は宝飾品業界にとって画期的な発明と言えます。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています