2019年03月04日
アイデアよもやま話 No.4267 ”精密農業”が日本の農業を変える!?

昨年11月27日(火)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で”精密農業”の最前線について取り上げていたのでご紹介します。 

 

最新技術が担い手不足や安い外国産との競争にさらされている日本の農業を変えるかもしれません。

そのキーワードは”精密農業”です。

AIやビッグデータなどを活用して収穫量を上げるととともに、より美味しく、より安全な農産物の生産を目指します。

 

”精密農業”を使った品質アップの取り組みは既に全国で始まっています。

青森県平川のある農家では、タブレットに田んぼ1枚ごとの適切な収穫日を色分けして表示してくれます。

収穫のタイミングがずれると品質が落ちてしまうだけに重要な情報です。

この田んぼの持ち主の男性は次のようにおっしゃっています。

「しっかりデータで出て来ているので刈り取りの優先順位をより一層確実に決められるんじゃないかなと。」

 

このデータ、実は人工衛星を使ってはじき出しています。

青森県内のおよそ1900ヘクタールの田んぼを撮影し、人間の目だと分からない色の違いをコンピューターで数値化して分析します。

これに気温のデータを合わせて“収穫に最も適した日”を割り出すのです。

収穫日が近い田んぼほど赤く表示されます。

このシステムを投入して育てている品種「青天の霹靂」は、最もランクの高い一等米の比率が向上し、新たなブランド米として期待が高まっています。

ちなみに、2016年の97.0%から2018年(昨年9月30日現在)には99.3%に向上しています。

青森県産業技術センターの堺谷 栄二さんは次のようにおっしゃっています。

「青森県がこういったツールを持っているというのは強みになると思います。」

「農家さんもとても熱心に管理されているし、更にブランドとして伸びていけばと期待しています。」

 

”精密農業”を農薬を減らす“減農薬”として活用する動きも出ています。

その切り札が小型無人機、ドローンで、最新型の4Kカメラを搭載しています。

千葉県市原市のある農家では、まず白菜とブロッコリーの畑を上空から調査、自動プログラムでくまなく撮影して回ります。

画像は、高さ5mから撮影しても葉に空いた1ミリの穴も判別出来る精度です。

害虫の食べた穴かどうか、判断するのは人工知能(AI)です。

害虫による被害のデータを大量に学習させてあります。

そして害虫がいる場所を突き止め、ピンポイントで農薬散布します。

人が目で見て確認すると大変な労力がかかるこの作業、ドローンとAIのシステムを導入することで、作業時間を大幅に短縮しました。

農薬の使用量も3分の1以下に減らすことが出来たといいます。

有機野菜栽培農家の方は次のようにおっしゃっています。

「どうしても忙しかったりして見きれない部分をドローンがちゃんと見てくれるというのは安心感につながりますよね。」

 

また、システムの開発会社の星野 祐輝さんは次のようにおっしゃっています。

「農家さんとしては、収穫量が同じで更にそこに付加価値が乗るので、今後果樹などいろいろな作物に転用出来るのではないかなと思います。」

 

更に”精密農業”によって、天候に左右されずに品質の良い農産物を作る実験も始まっています。

山口県下関市のある茶畑に埋まっているのは特殊なセンサーです。

土の中の水分量を常時計測しています。

更に屋根の上では、気温や湿度なども計測しています。

蒸発する水分なども計算に入れて、与えるべき最適な水と養分の量を割り出します。

そして自動で水と養分を供給、天候に恵まれた年も、そうでない年も安定して品質の高い茶葉を生産する実験です。

農場経営者の鎌田 宏之さんは次のようにおっしゃっています。

「高品質のもの(農作物)を作るために、やはり”精密農業”やっていきたいと考えている者としては、このシステムを使って細かな管理をしながらやっていくというのは非常に重要なアプローチの仕方じゃないかなと思っております。」

 

実はこの技術、雨が少なく、農地も限られるイスラエルの企業から提供されました。

開発した企業では、農産物をイスラエルの国内で育てた50年分のデータを持っています。

これを学習したAIにセンサーが計測するデータを読み込ませることで、人の経験に頼らない”精密農業”が可能になるといいます。

技術を提供したイスラエルの企業の担当者は次のようにおっしゃっています。

「日本の農家も正確で緻密な農業を目指すべきだ。」

「(このシステムは)少ない水や肥料で済むので、持続可能で効果的・効率的な農業をやっていける。」

 

広がり始めている”精密農業”は、担い手不足など課題が山積する日本の農業を救う方法となりそうです。

 

毎日食べるものの農薬が減ったり、更に美味しくなるというなら、私たち消費者にとってもメリットがあります。

ただ、これからどう導入していくかという、コストなど普及には課題がありそうです。

しかし、こうした課題を乗り越えられれば、一気に普及していく可能性があるので注目の分野になっていきそうです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

”精密農業”とは耳慣れない言葉ですが、番組を通して以下にその要点をまとめてみました。

その狙いは、AIやビッグデータ、ドローン、4Kカメラ、あるいはセンサーなど一連の技術を活用して以下の目的を達成することです。

・農作業の生産性の向上

・収穫量の増加

・より美味しい、あるいはより安全な農産物の生産などの品質向上

 

”精密農業”はコスト削減などの課題があり、まだまだ発展途上のようですが、その進化とともにどんどん農家の人たちの作業の負担を減らしてくれるものと大いに期待出来ます。

 

そして、”精密農業”のエッセンスはそのまま製造業や小売業などあらゆる産業のみならず、国や地方自治体など公的機関の生産性向上にも適用出来ます。

ということで、今、安倍政権は「働き方改革」を推進していますが、“隗より始めよ”で政府機関の働き方改革でその見本を見せて欲しいと思います。

 

今、少子高齢化に伴い、人手不足が深刻な状況になりつつありますが、国レベルで”精密農業”のエッセンスを取り入れていけば、少子高齢化による人手不足の解消は可能だと思います。

まさに“ピンチこそチャンス”なのです。

これまで先人は、戦後の混乱期や自動車の排ガス規制など、幾多のピンチをチャンスに変えて乗り越えてきました。

同様に少子高齢化はピンチをチャンスに変える絶好の機会なのです。

そして、この問題を乗り越えた先には、世界規模の新たな需要が待ち受けているのです。

なぜならば、日本は“少子高齢化先進国”であり、多くの国も近い将来同様の問題に直面することになるからです。


 
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