2019年03月01日
アイデアよもやま話 No.4265 大きな可能性を秘める新たなリチウムイオン電池「全樹脂電池」!

アイデアよもやま話 No.4252 全固体電池の最新状況 その1 全固体電池の持つ3つの優れたポイント!、およびアイデアよもやま話 No.4253 全固体電池の最新状況 その2 全固体電池開発の3つのブレイクスルー!などで従来のリチウムイオン電池(バッテリー)に比べて優れた性能を持つ全固体電池についてお伝えしてきました。

そうした中、新たなリチウムイオン電池、全樹脂電池に関するネット記事を見かけたのでそのいくつかについてご紹介します。

 

まずは、昨年8月29日(水)付けネットニュース(こちらを参照)からのご紹介です。

 

炭素系の負極材料と層状酸化物系の正極材料を組み合わせ、有機電解液を注入したリチウムイオン電池(LIB)、電気自動車(EV)用の電池で現在主流になっているのはこうしたものです。

 

一方、三洋化成工業と慶應義塾大学特任教授の堀江 英明さんらが共同で開発しているのが、そうした既存のLIBと一線を画する、集電体・活物質・セパレーターの全てが樹脂で構成されたLIB、全樹脂電池です。

最大の違いは、その構造と製造方法です。

既存のLIBに対してエネルギー密度や生産性を大幅に高められる可能性を秘めています。

 

全樹脂電池の最大の特徴は、正極または負極の活物質の粒子を電解液を吸わせたゲル状の高分子膜で覆う点です。

そして、それらのいずれかを粒子状の導電助剤や導電性繊維と混ぜて合材として、セパレーターおよびシール材製の枠で仕切られた空間に充填し、正極と負極の層(電極層)を形成する点です。

1枚の集電体の表裏に1対の電極を形成するバイポーラ構造や、異なるセルを集電体の面接触によって接続する構造を採れるため、集電体の枚数やセル間を接続する配線材(バスバー)を減らすことなどが可能です。

電池のパッケージング効率を上げて、エネルギー密度の向上を狙えます。

 

昨年10月24日(水)付けネットニュース(こちらを参照)によると、三洋化成工業は全樹脂電池のサンプル出荷を始めました。

安全性の高さと形状の自由度の高さを特徴とします。

なお、2020年の実用化を目指しているといいます。

 

昨年12月25日(火)付けネットニュース(こちらを参照)によると、三洋化成工業と日産自動車でも全樹脂電池の研究が進められているといいます。

 

最後に、2月14日(木)付けネットニュース(こちらを参照)では全樹脂電池の量産化について取り上げていたのでご紹介します。

 

全樹脂電池を考案した慶應義塾大学特任教授の堀江 英明さんが、低コストの大量生産技術を確立するための会社を設立しました。

共同開発先の樹脂メーカーである三洋化成工業が2月に出資を決めました。

子会社化し、同社自ら電池事業に取り組みます。

全樹脂電池は、設備投資額を従来の数十分の1に、材料コストは半減出来るといいます。

巨大な2次電池メーカーを駆逐する可能性を持っています。

 

以上、全樹脂電池関連のこれまでのネットニュースの中からその一部についてご紹介してきました。

 

まず、一連の記事から全樹脂電池の特徴を以下にまとめてみました。

・安全性の高さ

・形状の自由度の高さ

・エネルギー密度の高さ

・生産性の高さ

・設備投資額は従来の数十分の1

・材料コストは半減

 

設計寿命やEV(電気自動車)への充電時間など記事からは分からないところがありますが、こうした特徴から従来のリチウムイオン電池に比べてかなりの低価格が期待出来ます。

更に、形状の自由度は従来の電池に比べて用途の大幅な拡大が見込まれます。

しかも2020年の実用化を目指すといいます。

全固体電池の実用化は早くても2020年代前半といいますから、全樹脂電池の方が早く実用化されると期待出来ます。

 

ということで、現行のリチウムイオン電池の次の電池として全固体電池と全樹脂電池が候補に挙がっているような状況ですが、どちらが主流になるかとても気になるところです。

どちらが主流になっても、EV、あるいは一般家庭用バッテリーなど幅広い用途での活用にとって追い風になることは間違いありません。

 

なお、こうした流れの中で、トヨタ自動車は全固体電池の開発を目指す一方で、次世代車として燃料電池車の普及も目指していますが、ひょっとすると燃料電池車の普及は立ち消えになってしまう可能性が出てきました。

新たな電池や自動化など、自動車関連技術の進化のスピードの速さを感じずにはいられません。


 
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