2019年01月26日
プロジェクト管理と日常生活 No.577 『自動運転車のトラブルを損保が遠隔操作でサポート!』

アイデアよもやま話 No.4235 自動運転技術の最前線!でもお伝えしたように、国土交通省によると、交通事故の約97%は運転手のミスによるものだといいます。

そして、自動運転車の実用化が間近になっていますが、もし想定外の状況で事故が起きたらどう対処するのかがとても気になっていました。

そうした中、昨年9月27日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で自動運転車のトラブルを損保が遠隔操作でサポートするサービスについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

今、世界中で自動運転車両の開発が進んでいますが、もし事故などのトラブルが起こった場合、誰が責任を取るのか、またどう対処するのかが課題となっています。

 

一口に自動運転と言っても、搭載される技術によってレベルが規定されています。(レベルについてはアイデアよもやま話 No.4169 自動運転車の実用化に向けた哲学的命題!を参照)

レベル1、2ではハンドルの操作やブレーキやアクセルによる加減速のサポートです。

現在、国内でも市販車に採用され、実用化が進んでいる技術です。

ただ、レベル2までは主に運転をサポートする技術なので、万一事故を起こした際の責任は、通常の運転と同じようにドライバー側にあります。

一方、レベル3以上は基本的にドライバーが操作を行う必要はなく、システムが運転に関する操作を行うので、事故の責任はシステム側にあるとされています。

このようにレベル2と3とでは、事故の責任の所在が変わってくるということです。

 

そうしたレベル3以上の時代を見越して、事故を扱う保険会社も自動運転車を遠隔操作する実験を始めました。

昨年9月27日、損害保険ジャパン日本興亜は、自動運転のトラブルに対応する研究拠点を開設しました。

その拠点、CONNECTED SUPPORT Centerでは、クルマの状況を映すモニターの前にはハンドルがあります。

万一、運転手が乗っていない自動運転車がトラブルに遭った場合、ここから遠隔操作でサポートします。

 

実際の自動走行 公道実証試験中の完全自動運転レベル4のクルマでは運転席は無人の状態です。

前方に障害物、事故を起こしたクルマが停車しているという設定です。

この時、オペレーターは試験車両の搭乗者に次のように伝えます。

「前方車両で事故が発生しましたので、安全確認のため停車しております。」

「危険回避のため、遠隔運転手が介入し、運転いたしますのでしばらくお待ちください。」

 

オペレーターはお客への応対と同時に遠隔運転手とともにトラブルに対処します。

遠隔運転手は試験車両の搭乗者に次のように伝えます。

「遠隔操縦者です。」

「危険回避のため、操舵介入します。」

 

遠隔運転手はモニター画面を見ながら、手元のハンドルを操作すると、クルマは再び動き出し、障害物を避けて通ります。

スピードやブレーキは足元のペダルで操作、そして三角ボタンを押すと、ハザードが点くといったように、クルマの運転に関する全ての操作が遠隔で出来るのです。

また、万一クルマが走行出来ない状況になった場合は、代車の手配がなされます。

損害保険ジャパン日本興亜は、自動運転車両に起こるトラブルを、オペレーターの遠隔操作で解決する仕組みを2020年を目標に作り上げる設定、自動運転によって事故の件数が減るとの予測もあります。

そのため、これまで事故の後処理が中心だった自動車保険のビジネスモデル自体も変化が求まられているからです。

損害保険ジャパン日本興亜の飯盛 聡取締役専務執行役員は次のようにおっしゃっています。

「能動的にお客様にアプローチ出来るサービスの品質を上げるところに活路を見出していかないと。」

「(事故が)起こらないのが一番いいんでしょうけども、起こった場合でも、起こらないようにするための見守りも含めて、どうやってパッケージとしてご提供していけるかというのが勝負の分かれ道になってくるんじゃないかなと思っています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず、自動車保険会社が自動運転の遠隔操作サポートに乗り出すという取り組みになるほどと思いました。

自動運転車の普及とともに、間違いなく交通事故は大幅に減少していくと見込まれています。

一方、同時にカーシェアリングも拡大すると見込まれます。

なぜならば、いつでもどこでも好きな時間に自動運転車が来てくれて、これまでのように決まった場所に借りにいったり、返しにいったりする手間がないので気軽に借りることが出来るようになるからです。

しかも、用途に応じていろいろなクルマに乗ることも出来ます。

 

ですから、自動車メーカーにとっても自動車保険会社にとっても自動運転車、およびカーシェアリングの拡大、普及の流れは間違いなく売り上げ減につながります。

そうした中、自動運転車の持つ課題である事故やトラブルなどの発生時の解決対応策として、遠隔操作によるサポートは新たなビジネスとして非常に理に適っていると思います。

ただし、この対応策自体にも遠隔操作開始までの対応時間の短縮やオペレーターおよび遠隔運転手の十分な対応人数の手配といった課題があります。

 

いずれにしても自動運転車のユーザーにとって、こうした遠隔操作サポートは安心感を与えてくれる必須のサービスだと思います。

そして、このサービスの実用化が自動運転車普及の起爆剤になり得ると私は密かに大きな期待を抱いております。

ですから、このサービスを巡っては、自動車保険会社のみならず、自動車メーカーやIT企業など多くの企業が参入してくると思われます。

 

さて、こうした取り組みをプロジェクト管理の観点から整理してみると以下のようになります。

これまでの自動車保険会社の本業である事後後の対応はコンティンジェンシープランです。

そして、今回ご紹介した自動運転中の遠隔操作サポートは、事故が起きないように対応するリスク対応策です。

そして、遠隔操作サポートの具体的なデータの積み重ねが更なる自動運転技術の進化をもたらすのです。

 

なお、自動運転車にとって最後に残される大きな課題はサイバー攻撃です。

この件については、次回お伝えします。


 
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