2019年01月31日
アイデアよもやま話 No.4240 AIによる勉強革命!

昨年10月18日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でAIによる勉強革命について取り上げていたのでご紹介します。

 

長崎県にある学習塾、能開個別ホロン 長与教室(長崎県長与町)の教室の入り口には「AI」という文字が、そして机にはタブレット端末、生徒たちは画面を見ながらイヤフォンで何かを聴いています。

聴いていたのは数学の授業でした。

一昨年の年末から始まったこの授業、早くも効果が出ています。

高校3年のAさんの場合、AIによる授業を受講する前は数学が31点だったのですが、受講後には75点まで上がったといいます。

 

この教室、よく見ると、Aさんは数学の授業ですが、別の生徒の画面は物理の授業というように生徒ごとに異なります。

実はAIが生徒ごとに提案したカリキュラムで、生徒たちは苦手分野の学習をしているのです。

更に先生が持っているタブレットには、生徒一人ひとりの学習状況が表示されます。

池宮 舞教室長は次のようにおっしゃっています。

「苦労して合格した状況であれば、「よく頑張ったね」(と声をかけます)。」

 

この教室では、AI講座を受講した生徒の成績が平均20点ほど上昇しました。

池宮さんは次のようにおっしゃっています。

「1人や2人(の成績が)上がることはあっても、受講した大多数がこうやって一気に上がることはなかったので、とても驚いています。」

 

AIを活用した驚きの学習システム、「AIホロン」、開発したのは2017年4月に創業したベンチャー企業、atama plus(atama+ アタマプラス)株式会社(東京都中央区)で、およそ30人が働いています。

創業者の稲田 大輔CEOは次のようにおっしゃっています。

「(起業の理由について、)僕は三井物産に昨年(2017年)の3月まで働いていたんですけども、(三井物産時代の)11年間のうち5年間はブラジルで教育事業をやっていました。」

「その中で、海外だとテクノロジーを活用した教育がどんどん進んでいるなと・・・」

 

ある日、サンパウロの私立学校を訪れた稲田さんは、校長との面談で日本の模擬試験について、A、B、Cというように合格可能性が出ると説明しました。

ところが、これを聴いた校長は、ブラジルの模試はオンラインが当たり前だと答えました。

結果も合格可能性もその場で出るだけでなく、更に弱点を見つけて、その分野の教材も自動的に出てくるというのです。

 

稲田さんは、「世界はこんなに進んでいるのか、だったら日本の教育もテクノロジーで変えられる」と考えたのです。

稲田さんは次のようにおっしゃっています。

「テクノロジーを活用して、基礎学力習得にかかる時間を半分以下にする。」

「そうすると時間が生まれるので、余った時間で社会で生きる力を身に付けて欲しい。」

 

「atama+」で開発したAI講座は、実際にどこに強みがあるのでしょうか。

番組キャスターがAI学習を実際に体験してみました。

中学の数学講座でまずは診断テストです。

解いてみると、8問中4問が不正解でした。

この結果を元に、番組キャスター専用のオリジナルの「最短時間で目標を達成出来るようになるためのカリキュラム」が作成されるのです。

 

AIが「何が分からずにつまずいているか」を分析し、カリキュラムを作成します。

例えば、生徒が一次関数が分からないと思っている場合でも、その原因を遡ると、比例と反比例、更に比と比の値が分かっていないこともあります。

それをAIが突き止め、比と比の値から学習するカリキュラムを作成するのです。

続いて、動画で講義を受けます。

 

効率を高めた学習システムですが、肝心の中身はどうでしょうか。

稲田さんは次のようにおっしゃっています。

「全国の予備校の先生や学校の先生と一緒に(コンテンツを)作成しています。」

 

指導経験豊富な先生たちが動画で解説しています。

更に動画の再生回数を分析、再生回数が多い動画は生徒がつまずいた可能性があるためです。

そのような動画を分析して、教材を改善し続けています。

 

「atama+」のAI講座は着実に世の中に広がりつつあります。

やって来たのはある都内の学習塾です。

駿台グループの塾、駿台 高校部では既に一部の授業でAI講座の利用を始めていました。

駿台中学部、高校部の阿見寺 英俊さんは次のようにおっしゃっています。

「(AI講座は)非常に生徒たちの満足度が高かった。」

「2019年度は、通常授業として「atama+」の講座を設計していきたいと。」

 

AI講座を年間を通じて採用したいと提案されたのです。

今後AIを使った学習が広がれば、教育の現場が大きく変わる可能性があるといいます。

稲田さんは次のようにおっしゃっています。

「AIが得意なところはAIが教えて、それ以外の人間にしか出来ないところに先生がフォーカスする。」

「コーチングして励ましたりとか、勉強の仕方をみてあげるとか、いろいろあると思うんですけど、そちらの人間にしか出来ない役割に先生がフォーカスしていくという時代が作れればなと思っております。」

 

なお、「atama+」のAI講座は、現在は個人にではなく、塾を通じてサービスを提供しているということです。

既に、学研グループやZ会グループの塾でもこの「atama+」のAI講座を導入されており、今後更に広がっていく見込みだということです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

そもそも子どもはそれぞれ理解力や思考パターンが異なります。

そうした子どもたちを一つの教科書を教材を使って一人の先生が決められた時間に教えるというところに問題があるのです。

その本質は、お客様である学ぶ子どもの立場よりも教える側の効率が優先されているということです。

今の学校の授業形態は、平均的な生徒を対象にしているので、どうしても呑み込みの早い生徒は物足りなく感じ、呑み込みの遅い生徒は授業について行けなくなる傾向が出てくるのです。

そこで、こうした問題を解決するために、多少裕福な家庭では先生と生徒が1対1の個人教授を付けています。

あるいは、教え方の上手な先生のいる学習塾に子どもを通わせている家庭もあります。

しかし、それでもこうした先生の教え方のレベルや生徒のやる気や理解力によって学力の進み具合は異なります。

 

では、究極の学習方法とは何でしょうか。

それは、個々の生徒のレベルに合わせた、最も効果的、かつ効率のいい方法で教えることだと思います。

同時に、「馬を水辺に連れて行くことは出来ても、水を飲ませることは出来ない」ということわざにもあるように、肝心なのは個々の生徒のやる気を引き出すことです。

 

こうしてみると、今回ご紹介した、AIを活用した「atama+」は究極の学習方法を具現化したものと言えます。

そして、先生の主な役割は、生徒のやる気を引き出すこと、そして学習するうえでのいろいろな悩みの相談を受けることになるのです。

 

まさにこうした方向性で稲田さんは「atama+」の普及に取り組まれていると思います。

そして、この取り組みは日本の勉強革命の起爆剤になり得ると大いに期待出来ます。

ですから、学習塾のみならず私立学校なども巻き込んでどんどん成果を上げ、国の教育政策をも変えてしまうくらいの意気込みで取り組んでいただきたいと思います。

 

ということで、AIなど最先端の技術により、これまでは教える側の手間などの問題でやろうとしても出来なかった究極の教育がようやく実現出来るような時代を迎えているのです。

そして、こうした教育に最も力を入れた国の経済力や技術力がやがて他国に勝ることは間違いありません。

ですから、日本の政府もこうした教育行政に真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 

ちなみに、私の経験をちょっとだけお伝えします。

私は高校時代に数学の授業があまり理解出来ませんでした。

そうしたこともあり、大学受験に失敗して一浪し、予備校に通うことになりました。

ここでの数学の授業ですが、何人か数学担当の先生がおりましたが、その中の一人の先生の教え方がとても私には分かり易く感じ、まるでチリ紙が水を吸い取るようにどんどん頭の中に入ってきました。

なので、「先生の教え方によって、理解のレベルがこうも違うのか」と衝撃を受けました。

同時に、問題の解き方も複数あり、先生によって解き方が異なることも分かりました。

そして、解き方によって理解のし易さが変わるのです。

 

ということで、「atama+」についても、数学の場合、解き方が複数ある場合、その全てについて教材に反映し、生徒が学べるようにしたらいいのではないかと思いました。

勿論、教材の分かり易さもとても重要です。

しかし、AIによる教え方の分析により、教材の内容はどんどん進化していくと期待出来ます。

 

なお、「atama+」の基本的な考え方は、子どもの教育のみならず、社会に出た後の様々な研修などにも適用出来ると思います。

こうした積み重ねが「働き方改革」にも大きな影響を与えるはずです。


 
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