2019年01月25日
アイデアよもやま話 No.4235 自動運転技術の最前線!

昨年10月13日(土)放送の「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ)で自動運転技術の最前線について取り上げていたのでご紹介します。

 

トヨタ自動車とソフトバンクグループ、日本を代表する巨大企業が昨年10月始めに共同出資で新会社、モネテクノロジーズを設立すると発表しました。

新会社の事業は、自動運転による乗り合いサ−ビス等の開発で、大きな反響を呼びました。

これからはクルマを売るだけでなく、人やモノを移動するサービスに大きく業態が変わる可能性があるといいます。

そうしたサービスの実現に欠かせないのが自動運転の技術です。

今、自動車メーカーだけでなく、グーグル、アップル、ウーバーなどのIT企業が世界で開発競争を繰り広げています。

 

日進月歩の自動運転ですが、既にレベル1、レベル2については日本で販売されている市販車でも実現出来ています。(レベルについてはアイデアよもやま話 No.4169 自動運転車の実用化に向けた哲学的命題!を参照)

更に上のレベル、3〜5については研究開発中なのですが、実は既にレベル5のクルマが出来ております。

昨年9月、運転手不要の完全自動運転が可能な未来の車両が発表されると聞き、番組ではそれを取材しにスウェーデンまで行ってきました。

ボルボ・カー本社のデザインセンターで、ホーカン・サミュエルソンCEOは次のようにおっしゃっています。

「これは単なるアイデアではありません。」

「これは近い将来、我々が展開するボルボのビジネスです。」

 

ボルボ360cと名付けられたクルマ、ハンドルもアクセルも、そしてブレーキさえもありません。

全てクルマが自律走行する完全自動運転のEV(電気自動車)です。

シートはスイッチ一つでフルフラットのベッドに、またブランケットは緊急時にはシートベルトのように乗員を固定し、怪我などから守る構造になっています。

乗員はベッドでぐっすり眠ったまま目的地まで移動出来るのです。

ボルボはあえてボルボ360cを個人には販売せず、運送サービス会社などにレンタルするといいます。

“買う”から“シェア”へ、いわゆるMssS(Mobility as a Service)という考え方です。

 

ユーザーは好きな時間に好きな車両をタブレット端末で呼び出します。

すると、最寄りの車両がユーザーの待つ場所へと自律走行を開始、勿論そこに運転手はいません。

道中、不意に道路を横断しようとする歩行者がいれば、すぐさま警告音を発しながら減速し、停止します。

安全が確認出来ると再び加速し、ユーザーの元へと向かいます。

ユーザーを乗せたクルマは最適なルートを選び、目的地に向かいますが、緊急工事などに遭遇した場合は障害物を正確に把握し、車線を変更したり、自転車を追い抜く際には運転する人に光や音で注意を促します。

こうしてユーザーを送り届けると、次のユーザーの元へと向かっていきます。

ボルボ・カー セーフティーセンターのディレクター、モーリン・エクホルムさんは次のようにおっしゃっています。

「運転から解放されることで、例えば本を読んだり、残った仕事を移動中に片付けたり、家に帰る時には家族や子どもとの時間をたっぷり楽しんだりと、このサービスのメリットは大きいと考えています。」

 

ボルボ・カーは2033年にはボルボ360cのサービスを開始したいとしていますが、安全基準や交通ルールなど、メーカーだけでなく行政側にも高いハードルがあります。

完全自動運転車、ボルボ360cはシステムが全ての運転操作を行うレベル5の車両となります。

事故が起きた場合、その責任はシステム側、サービス提供者側が負わなければなりません。

今、世界各国で走行が認められているのは、高速道路など、特定の条件で車線を維持したりするレベル2の車両です。

そして条件付きの自動運転を可能にするレベル3の安全基準の策定作業が今急ピッチで進められているといいます。

レベル3を見据え、より高度な機能を搭載したレベル2の車両がヨーロッパの高級車メーカーから相次いで発売されました。

「インテリジェント ドライブ」という最新の機能の搭載されたメルセデスベンツ CLS220d スポーツは、前方だけでなく、常に後方を監視するカメラとレーダーを装備しており、高速道路を走行中にハンドルを操作せずにウインカーを出すことで隣のレーンに移動する高度なレベル2の自動運転が可能です。

こうした機能のあるクルマでは一定時間ハンドルから手を放した場合、警告音や警告ランプで運転手に知らせます。

法律的にレベル2はどんなに自動で走れても、前方を監視する義務があって、事故が起きた時はドライバーの責任です。

 

このクルマを栃木県のテストコースで走行し、今後レベル3の安全基準に必要とされる機能と同等の機能が既にこのクルマに搭載されていることを確認出来ました。

テストコースなのであえてドライバーが手も足も放し続けていると「緊急停止作動」とアラームが表示されて、自動的にブレーキが踏まれて、ハザードランプが点いて完全停止しました。

これは、運転手が運転に全く関与しなくなった車両を安全に停止させるミニマム・リスク・マムーバーというレベル3に設定される機能の1つです。

そして次の瞬間、クルマは運転手に異変があったと判断し、自動的に緊急通報センターに電話をかけました。

オペレーターは状況に応じて救急車を要請するなど必要な措置を取ることになります。

政府は、レベル3の安全基準を2020年を目途に策定したい考えです。

国土交通省自動車局技術政策課の久保 巧専門官は次のようにおっしゃっています。

「国連の会議の場で、自動運転に関する基準の策定の作業をしているところです。」

「そういった議論の場で、日本は議長職であったり、副議長を務めながら、策定議論を主導しているところでございます。」

 

また、ボルボ・カー シニアセーフティー テクニカルアドバイザーのヤン・イバーソンさんは次のようにおっしゃっています。

「日本とスウェーデンは安全対策の分野では世界の最先端にいます。」

「長期間に蓄積した両国のデータは今後の安全対策に大きく貢献出来るはずです。」

「私たちボルボは360cというクルマを開発しましたが、暫くは人間の運転する車両と混在することは避けられないと思います。」

 

国土交通省によると、交通事故の約97%は運転手のミスによるものだといいます。

自動運転は交通事故や渋滞の大幅な削減だけでなく、運転手不足や公共交通の補完手段としても大きな期待が寄せられています。

モータージャーナリストの清水 和夫さんは次のようにおっしゃっています。

「将来、ドライバーが苦手としているところ、単調な運転は眠くなっちぃますよね。」

「そこはシステムに任せる。」

「だけど複雑な状態になったら、かえってシステムは苦手ですから人間が判断した方がいい。」

「そこをうまく、人とシステムがスイッチのように切り替えるのではなく、うまくハーモナイズ(調和)して、テニスのダブルスみたいな感じでやっていく状況がしばらく続くのかなと思うんですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

交通事故の約97%は運転手のミスによるものだといいます。

ですから単純計算で言えば、全てのクルマが全自動で走行するようになれば、ほとんど交通事故は発生しないことになります。

更に、自動運転車は渋滞の大幅な削減や運転手不足、あるいは公共交通の補完手段としても大きな期待が寄せられています。

このように自動運転車は移動手段としてバラ色の未来のように思われており、レベル5の完全自動運転技術の完成もすぐそこまで来ているようです。

しかし、どんな状況においても事故を起こさないという保証はありません。

ですから、清水さんも指摘されているように、いざという場合にはドライバーの判断でクルマを操作する余地を残しておく必要があるのです。

ただ、このドライバーに依存する余地は自動運転技術の進歩とともに徐々に少なくなっていくと期待出来ます。

こうした課題と並行して、各国の交通ルールに則った対応も必要です。

 

いずれにしても、完全自動運転のレベル5のクルマが実際に公道で走行する要件としては、以下の3つが必要と思われます。

・移動中、常に乗客が安心していられること

・自動車メーカーが、自社に起因する交通事故の予測発生件数が事業を継続していくうえで、ほとんど影響をもたらさないという確信を得られること

・自動車保険会社が、完全自動運転のレベル5のクルマによる交通事故の予測発生件数、および事故の内容が保険業として成立するという確信を得られること

 

ということで、全ての国でレベル5のクルマが名実ともに走行するまでにはまだまだ10年くらいかかりそうです。

しかし一方で、一部のクルマにはどんどん自動運転技術の装備が組み込まれつつあります。

こうした技術によって生じる事故などの場合の責任は全てドライバーが負うということになっていますが、それでもドライバーにとっては、運転時の負担を減らしてくれるとてもありがたい技術です。

それは、レベル2の自動運転技術を装備した新型日産リーフで2万kmほど走行した私が実感を持って言えることです。

 

ということで、自動運転車は、事故責任はドライバーが負うという大前提のもとに、レベル5を目指してどんどん進化していくと思われます。

そして、こうした走行データの蓄積と分析のうえに、レベル5の完全自動運転車時代の到来を迎えることになるのです。


 
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