2019年01月14日
アイデアよもやま話 No.4225 新たな宅配便サービス!

昨年9月26日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新たな宅配便サービスについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

自宅に荷物が届く宅配便、便利なサービスですが、その反面ドライバー不足や梱包に使われた段ボールのごみなどが問題になっています。

そこで、ネスレ日本が佐川急便と共同でこうした問題を解決すると同時に、地域の活性化を目指すサービスを今年1月から始めます。

 

ネスレ日本の高岡 浩三社長は次のようにおっしゃっています。

「(このサービスは)タクシー業界でいう“ウーバー方式”ですね。」

「宅配業界の中でこのシステムを進展出来ないのかと。」

 

高岡社長が発表したのは、佐川急便と組んだ新しい宅配サービス「マチエコ便」です。

その仕組みですが、佐川急便が商品をエコハブと呼ばれるサービス拠点まで運びます。

エコハブはネスレ日本と契約した個人宅や商店主です。

注文したお客はエコハブの人に家まで運んでもらうか、エコハブまで取りに行くかを選べます。

取りに行った場合は商品代金から5%の割引が受けられます。

 

1月1日からの展開に先駆けて東京・町田市で既に新しい宅配サービスが始まっています。

Mさんの自宅は今回の宅配サービスの拠点、エコハブです。

少し前に届いた荷物は2軒分ですが、その都度増減があります。

段ボールには2軒分の商品が一緒に入っています。

そこへやって来たのは、近所に住むNさん、注文した商品をエコハブに取りに来たのです。

商品はエコバックに詰め替えて持ち帰ります。

Nさんは次のようにおっしゃっています。

「これ(エコバッグ)だと自転車のかごとかにも入るし、肩にかけても軽いので、便利ですね。」

「段ボールを崩してごみに出す手間が省けますね。」

「(しかし、わざわざ取りに来るのは面倒ではないかという指摘に対して、)宅配便(の指定時間)も結局2時間はいないといけないじゃないですか。」

「それで、ちょっと塾の子どもの送り迎えで10分だけ出たいという時があって、ドキドキしながら迎えに行って帰って来たとかいうことがあったので、逆に自分の都合で予定が立てられて取りに伺えるし、そういうところが便利・・・」

 

この宅配便新サービスの拠点を担うMさんにはネスレ側から手数料が支払われます。

Mさんは次のようにおっしゃっています。

「今来てくださった方(Nさん)も(息子の)お嫁さんの年代なんですね。」

「なので、いろんな年代の方とお話が出来る、刺激も受けられる。」

「これを始めてから、主人に言わせると「生き生きしてきたね」って言われます。」

 

Mさん、今度はエコバッグに商品を入れて向かった先は近所に住む妊娠中のKさんのお宅です。

以来に応じて、宅配業者に代わって配達もするのです。

Kさんは次のようにおっしゃっています。

「顔を知っている人が届けてくれる方が安心だなって。」

「ご近所付き合いも中々薄くなってきている感じがあるので、ご近所の輪とか広がっていったら私は嬉しいなと思っています。」

 

この宅配新サービス「マチエコ便」、まずはネスレ商品に限定してスタートしますが、今後はP&Gやファンケルの商品も対応する予定です。

このサービスに相乗りする企業も募っていくといいます。

高岡社長は次のようにおっしゃっています。

「ネスレだけじゃなくて他の企業さんも乗っかっていただくことも出来るので、これからどんどん増えていくと思いますね。」

「出来るだけ早い時間の中で、全国にこのシステムを広げようと思っています。」

 

宅配便業界は、ネット通販などの成長により年々取り扱う荷物の数が増えています。

ちなみに、2017年度の宅配便取り扱い個数は42億5100万個に上っています。(国土交通省調べ)

また荷物の増加だけでなく、不在などによる再配達が大きな負担になっています。

こうした中、リクシルが昨年9月26日に発表したのが、スマホと連動した戸建て住宅向けの宅配ボックス、スマート宅配ポストです。

価格は28万8280円(設置費別)です。

不在時に荷物が届くと、スマホに通知が届きます。

最大のポイントは、スマホで遠隔操作することで2つ目以降の荷物も配達してもらうことが出来ます。

宅配ボックスにはカメラが付いているので、宅配業者と会話をしながらスマホでカギを開けられます。

また宅配ボックスに荷物を入れると、提携している宅配業者に連絡がいくシステムも備えていて、不在時の集荷にも対応しています。

これらの機能により、再配達を減らし、宅配を効率化するのが狙いだといいます。

ただ、現在の戸建て住宅向け宅配ボックスの普及率は1%未満、リクシルは2020年度までに約2万台の販売を目指しています。

リクシル エクステリア事業部の井出 眞治さんは次のようにおっしゃっています。

「再配達の問題が今社会問題化していること、そしてCO2の排出量も問題になっていることが(開発の)背景になります。」

「よりマーケットを大きくしていく、様々なお客様のニーズに応えていくと考えております。」

 

また番組コメンテーターで大和総研チーフエコノミストの熊谷 亮丸さんは次のようにおっしゃっています。

「人手不足がどれくらい日本経済を押し下げるかというシミュレーションなんですけども、このまま自然体でいくと、標準シナリオでは就業者は127万人減って、その結果、潜在GDPという、実力の国内総生産は10年後には7.1兆円減ってしまう。」

「大事なのは、ネスレのケースでも高齢者をうまく活用するということ。」

「高齢者活躍シナリオ、これは60代後半の方が前半の方と同じぐらいの就業率まで上がるという前提で計算してみると、標準シナリオと比べると152万人ぐらい増えて、プラスに転換して25万人増える、この結果潜在GDPもマイナスだったものがプラス1.4兆円に増えると。」

「その意味では、人手不足を解消して、なおかつ高齢者の方が活躍出来る社会をつくる、これが日本経済にとって極めて重要な課題であると。」

「それに非常によく取り組んでいるなと、そういう印象です。」

「(高齢者の活躍はこの先ずっと期待出来るのかという問いに対して、)」これは10年後ぐらいまでは高齢者の方が活躍すればなんとか賄えるんですが、30年、50年でみると、やはりある程度外国人の労働者をもっと入れていかないと、中々マイナス賄うことが出来ないということです。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

これまでアイデアよもやま話 No.3847 ”物流版ウーバー”が”宅配の危機”を救う!?などで何度か宅配便サービスについてお伝えしてきましたが、これらは全て配送先まで送り届ける手段を自動運転車にしたり、一般ドライバーに委託するというように、配送手段をどうするかに焦点を当てていました。

ところが、今回ご紹介した宅配サービス「マチエコ便」は、商品を個人宅や商店主と契約したエコハブと呼ばれるサービス拠点まで運ぶというものです。

そして、そこから先は注文したお客はエコハブの人に家まで運んでもらうか、エコハブまで取りに行くかを選べるようにしています。

このサービスのメリットには以下のようなものがあります。

・エコハブの人が届け先まで配達すると、ネスレ側から手数料を受け取れること

・届け先であるお客は、自分の都合のいい時間にエコハブに行って受け取れること

・自分で受け取りに行った場合は商品代金から5%の割引が受けられること

・顔を知っている人が届けてくれる方が安心であると思うお客は、こうした宅配便サービスを通して、ご近所付き合いが出来ること

・人手不足が問題視されている宅配便業界は、配達に要する時間や不在などによる再配達の負担が軽減されること

 

ということで、熊谷さんも指摘されているように、「マチエコ便」や”物流版ウーバー” のような宅配サービスは人手不足を解消して、なおかつ高齢者の方が活躍出来る社会をつくるという日本経済の重要な課題の対応策の一つとしてとても有望だと思います。

 

一方、リクシルが昨年発表した、スマホと連動した戸建て住宅向けの宅配ボックス、「スマート宅配ポスト」は再配達を減らし、宅配を効率化するのが狙いだといいますが、問題はこの宅配ボックスの価格が高額なことです。

戸建て住宅向けが対象であること、更に価格が28万8280円(設置費別)であることからユーザーは非常に限られてしまいます。

 

さて、今回ご紹介した新しい宅配サービス「マチエコ便」を通して感じたことは、いろいろなビジネスを一つひとつのプロセスに分解していき、それらを個人や個人商店などで代用出来ないかという観点で切り分けていくと、いろいろな可能性が見えてくるのではないかという期待感です。

そして、それを新たなサービスとして実現させることで、より多くの人たちに働く場を提供し、全体として活力のある社会につながるのではないかということです。


 
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