昨年9月11日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でベンチャー企業が成功する要件について取り上げていたのでご紹介します。
昨年9月11日、国内最大規模のベンチャー企業のイベントが開催されました。
日本にも優れた技術を持つベンチャーが次々に生まれていますが、かつてのアップルやフェイスブックのように世界を席巻するようなベンチャーはまだ登場していないのが現状です。
日本のベンチャーに必要なものは何なのでしょうか。
監査法人やコンサルティングの世界大手、デロイトトーマツグループが昨年9月11日に開催した「イノベーションサミット」、すぐにでも大企業と組めるほどの実力のあるベンチャーが国内外から300社集まりました。
以下はその出典品の一部です。
マッシュルームが出展したのは、スマホで制御するスマート宅配ボックスです。
電子的に全て管理されているので、いつどこで誰が開けたかが全部裏側で管理されているので、不正使用がないようになっているといいます。
また、エンパスが出展したのは、音声から人の感情を解析する装置です。
AIが人の声からリアルタイムで感情を解析し、喜び、平常、怒り、悲しみという4パターンで表現するというものです。
ドライバーの感情から安全運転を呼びかけたり、電話販売などでお客の感情に合わせて会話をすることで売り上げにつなげるといった使い方が見込まれるといいます。
そして、グローバル・モビリティ・サービス株式会社(参照:アイデアよもやま話 No.3917 逆輸入の自動車ローン!)が出展したのは、ローンが滞った人の自動車のエンジンを遠隔操作で止める装置です。
貸し倒れの減少につながるといいます。
このイベントは昨年で8回目、規模は年々拡大し、出展企業は2017年の140社から2018年には300社と倍以上に増えました。
しかし、課題があるといいます。
デロイトトーマツ ベンチャーサポート事業統括本部の斎藤 祐馬部長は次のようにおっしゃっています。
「日本から世界に勝てるベンチャー企業が出てこないことですね。」
日本を代表するITベンチャー、メルカリも海外への攻略はこれからです。
海外市場を開拓出来ていない状況が続いています。
そこでデロイトトーマツは海外の企業や投資家と接点が持てるこうしたイベントを積極的に開催しているといいます。
斎藤さんは次のようにおっしゃっています。
「実際に海外の起業家や海外の大企業に会ったり、海外の人たちとフェーストゥフェースで会うことで、人はインスパイアされるものなので・・・」
このイベント会場にマレーシア最大の財閥、サンウェイの投資責任者、チュアさんが日本のベンチャーの盛り上がりを聞きつけてわざわざ日本にやって来たといいます。
チュアさんは先ほどのグローバル・モビリティ・サービスの装置に注目し、個別の商談を始めました。
しかし、辛口の指摘もしました。
「地元のニーズを捉えるのが大事。」
「タクシードライバーなどに話を聞くこと、それから地元の金融機関も大事。」
「関係を作らないと成り立たない。」
マレーシアの金融機関の担当者を紹介する約束をして、この日は商談を終えました。
グローバル・モビリティ・サービスの中島 徳至社長は次のようにおっしゃっています。
「私たちのネットワークではなし得ないアクセス権をお持ちだったんですね。」
「ですから、そういう部分で言いますと、すごく可能性が広がった。」
チュアさんは、日本のベンチャー企業に共通する課題があると指摘します。
「日本のベンチャー企業は英語の交渉力がない。」
「今日もいろいろ回ったが、説明出来ない企業が多かった。」
「世界の企業と組んで、海外の市場に打って出るべきだ。」
「中身は非常に興味深かった。」
会場には創業から間もない企業に、個人で投資するエンジェル投資家の姿もありました。
エンジェル投資家の世界最大の団体「KEIRETSUFORUM」のトップ、ランディー・ウィリアムズCEOは、こうした場を活用し、海外企業や投資家と関係をつくることが重要だと話します。
「海外とのコネクションは必要。」
「我々のプラットフォームを使って欲しい。」
「ウォールストリートなど、世界には沢山の投資家がいる。」
「日本のベンチャーは今こそつかみに行く時だ。」
デロイトトーマツ ベンチャーサポートの斎藤さんは、日本のベンチャーが世界で勝つためには最初からグローバルな視点を持つことが重要だといいます。
またフィンランドでは、ベンチャー企業を英語で登録しないと認められないような仕組みで、国策としてグローバルなベンチャーを育てるのであれば、そうした取り組みも必要だといいます。
番組コメンテーターでレオス・キャピタルワークス社長の藤野 英人さんは次のようにおっしゃっています。
「(ベンチャー企業に出資する際、投資したくなる視点について、)まず一つは熱狂的な、コアなユーザーがいるというところで、ユーザーが会社を育てるというところもあります。」
「それからコミュニケーションが世界標準というところで、これは販売の仕方であったり、実際に英語が出来るというような面で見ると、コミュニケーションが世界標準であることが大事です。」
「何よりも大事なのは、燃える商魂です。」
「やはり売ろうとする力なんですよね。」
「自分の商品、製品やサービスを売ろうとする、それを伝えたいという気持ちがある人が強くて、それがあれば拙い英語でも伝わるので、英語力そのものは大事なんですけども、やはり売ろう、自分たちの考え方を伝えたい気持ちがどれだけあるかということが大切ですね。」
「(実際に投資してリターンに燃える商魂は影響してくるのかという問いに対して、)非常に重要でして、実際に情熱の高い会社の株価が、もしくは業績の高いというのは僕らの中でも実証データがあるんです、当社で調べたものですけども。」
一方、番組の解説キャスターで日経ビジネス編集委員の山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「(日本で世界ベンチャーを育てるために何が必要かについて、)あえて“放置”と書いたんですけど、一言で言えば“足の引っ張り合い”はもうしないと。」
「よく元気な企業がベンチャー企業で出てくると、大企業が同じ商品を出して、過当競争に持っていくということが日本で起きがちなんですね。」
「一つ、京都の企業の事例を取り上げたいんですね。」
「京都からは京セラだとか日本電産だとか、いろんな世界企業が育ってますけど、実はよそ者が多いんですよ。」
「京セラは鹿児島出身ですね、稲森さんは。」
「それからオムロンの立石さんは熊本だったり。」
「よそから来ているんですけども、京都人てよく排他的だというじゃないですか。」
「でもあれは自分のテリトリーを冒される時は排他的になるんですけども、新しいこと、違うことをやっている人たちはけっこう尊重するんです。」
「しかもプライドがあるから、物まねは他の人がしない。」
「だから育っていくんですね。」
「日本全体が今新しいものが出て来た時に寛容性を持って、あまり物まねしないという、そういう文化が出来るといいんじゃないかなと。」
「そうしないとホームマーケットで儲けないと外には打って出れないです。」
「(特に大企業がベンチャーの真似をしないというのは重要なのではという指摘に対して、)と思います。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきましたが、以下にベンチャー企業が成功する要件をまとめてみました。
・何よりも大事なのは“燃える商魂”であること
・グローバルな視点を持つこと
・熱狂的な、コアなユーザーが存在する市場を狙うこと
・コミュニケーションの世界標準、すなわち英語での交渉力を身につけること
・企業や投資家と接点が持てるイベントに積極的に出席して、事業にプラスになる様々な情報を入手すること
・世界的な投資機関やエンジェル投資家などからの投資を活用すること
・日本全体がベンチャー企業に対して寛容性を持ち、物まねしない文化を作り上げること
中でも、藤野さんの指摘されているように、“燃える商魂”を持つことはベンチャー企業の経営者にとって最大の武器になると思います。
そして、“燃える商魂”の源は熱狂的な、コアなユーザーが存在する市場を狙うことだと思います。
いずれにしても、これからの経営者にはグローバルな視点を持つことが欠かせません。