昨年9月11日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”近所の人”がスーパーの買い物代行するサービスについて取り上げていたのでご紹介します。
生鮮食品を注文当日に自宅に届けてくれるネットスーパーは、最近ではかなり身近な存在になってきましたが、今人手不足などの影響で当日配達分の枠がすぐに埋まってしまい、利用が制限されてしまうという課題があります。
傷みやすい生鮮食品をその日のうちにどう届けるのか、様々なサービスが始まっています。
大都市圏で約260店を展開するスーパーマーケット、ライフでは7年前にネットスーパーのサービスを開始しました。
しかし利用者が徐々に増えている裏で、配送の人手不足が問題になっているといいます。
ライフコーポレーションの金原 政史さんは次のようにおっしゃっています。
「都市部ではネットで注文するニーズが非常に高くて、スーパー側では場所、人の確保が中々難しくなってきている。」
そこでライフは昨年9月、買い物代行サービス「ツイディ」を展開する企業と提携しました。
買い物をして欲しい人と買い物に行ける人をマッチングするサービスです。
パソコンやスマホで商品を注文すると、時間が空いている近所の人が代わりに買い物してくれます。
当初は新聞販売店のデリバリースタッフが配送を担当、新聞配達の空き時間を活用し、指定の時間に商品を届けます。
都内で働きながら子育てをしている、ある女性は次のようにおっしゃっています。
「買い物の時間は普段は非常に難しいので、結局土日とかになってしまうので、生鮮食品なんかはその日にあると新しいものが食べられるっていうのはいいですね。」
「ツイディ」は今後配送するスタッフを一般の人にも広げていきたい考えです。
「ツイディ」を運営するダブルフロンティアの八木橋 裕社長は次のようにおっしゃっています。
「地元で遠くから買うのではなく、スーパーには毎日商品が来ているので、そこで買いましょうと。」
「ドライバー不足を解決する策の一つになっていると思っています。」
一方、自分たちで配達手段を確保するのが難しい町の商店にもネットスーパー参入の機会を提供する動きがあります。
レシピ投稿サイトを運営するクックパッドが昨年8月下旬から始めたネットスーパー、クックパッドマートです。
利用者が使うのはスマホのアプリ、配達地域ごとに決められた店で注文することが出来、クックパッドに掲載されたレシピに必要な食材を買うことも出来ます。
クックパッドから委託された配送業者が各店舗を回って商品を集めます。
店には配送の負担がなく、売り上げに応じた手数料を払うだけです。
このサービスを使用している精肉柳屋(東京都世田谷区)の柳 晃正代表は次のようにおっしゃっています。
「うちのやり易いようなかたちで、うちのベースを変えずにやっていただけているので、うちとしてはすごくやり易いです。」
利用者の家に届けるのではなく、酒の専門店やドラッグストアなどの一画にクックパッドが専用の棚を設置し、そこへ商品を届ける“置き配”にしました。
集荷や配達のルートを絞ることで配送コストを縮小しました。
このため利用者は送料無料で商品1つから購入出来ます。
まずは東京の目黒、渋谷、世田谷の3区の一部でスタートし、今年(2019年)以降には都内の他の区や神奈川県への拡大をクックパッドマートは目指します。
クックパッド 買物事業部の福崎 康平部長は次のようにおっしゃっています。
「スーパーに行っているユーザー体験と同じような体験で、日常的に使えるようなサービスを目指しているので、1日数千円くらいの食材が売れるのであれば、気軽に販売店として参加出来るのですごく参入し易いんじゃないかなとは考えています。」
番組コメンテーターでレオス・キャピタルワークス社長の藤野 英人さんは次のようにおっしゃっています。
「(生鮮食品の宅配は物流の中でも特に難しいと言われているということについて、)まず“ビシャビシャ物流”と言われているぐらいですね。」
「元々水気が多いわけですから、生鮮品は非常に扱いが難しい。」
「普通の段ボールでは扱えません。」
「それから温度管理が必要だとクール便だったりということで配送品質が求められるんですね。」
「配送品質が求められるということはコストがかかるということなので、そういう面でみればコスト高になり易いというような構造を持っています。」
そうした難しい生鮮宅配を制するにはどうすればよいのか、藤野さんの出した解は、「真面目にやり抜いた企業が勝つ」です。
「結局、今言ったビシャビシャな物流をきちんとパッケージし、梱包するということであったり、専用の設備が必要であるということがあるので、そういうことを一つひとつやっていかなければいけない。」
「だから何か魔法の解決策があるわけではなくて、きちんとやり抜くしかないなと思いますね。」
「(あとは付加価値をいかに高めるかもポイントではないかという指摘に対して、)そうでうね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通して分かったことは、地域によって買い物する人の要望が異なり、従って求められるサービスも異なって来るということです。
過疎地と言われる地域には、自宅から歩いて行ける範囲内にスーパーやコンビニはありません。
ですから、高齢者など自分で買い物に出かけられない人にとって、多少の手数料を払ってでも”近所の人”に買い物代行をお願い出来る「ツイディ」のようなサービスはとても便利です。
しかし、都市部ではスーパーまでは歩いていくにはちょっと遠いですが、コンビニであれば歩いて行けるというところが少なくありません。
こうしたところに住んでいる人にとっては、手数料のかからないクックパッドマートのようなサービスがとても便利です。
しかも多少なりとも歩く機会になるので健康上のメリットもあります。
さて、買い物のパターンにはこの他にも従来通り、自分で買い物に行くパターンやクルマに商品を積んで自宅近くまで売りに来る業者から買うというパターンもあります。
前者の場合、自分で一つひとつの商品の品定めが出来るし、いろいろな商品を目にして買い物を楽しむことが出来ますし、そこで普段会話をする機会のない人との出会いもあるかもしれません。
また、後者の場合も選べる商品の種類は少ないながらも前者と同様のメリットがあります。(参照:アイデアよもやま話 No.2842 買い物の楽しさを届ける”おばあちゃんのコンシェルジュ”!)
このように買い物には、本来の買い物の機能以外に気分転換や健康促進といったメリットもあるのです。
ですから、買い物をする立場の人のその時々の気分や状況によって、買い物のパターンを選べる環境が整っていることが個々人の心身の“豊かさ”につながると思います。
ですから、将来自動運転車が実用化され、更に日常生活全般を支援してくれるマイロボットの登場によって、私たちの暮らしは少なくとも物理的には未知の領域とも言える“豊かさ”を手に入れることが出来ると期待出来ます。