2019年01月02日
アイデアよもやま話 No.4215 自動運転時代に必須の事故直前の動きを記録するEDR!

昨年9月10日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で事故直前の動きを記録するEDRについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

煽り運転による死亡事故をきっかけにドライブレコーダーの市場は急成長しています。

ただ、なぜ事故が起こったのか、その真相を究明するには映像だけでは十分ではありません。

そこで今注目されているのが既にクルマに搭載されている装置から事故直前のクルマの状態を記録したデータを抜き出して解析するという取り組みです。

 

埼玉県行田市にある自動車修理工場、ダイエー自動車販売に修理のため持ち込まれた事故車、そこにやって来て損傷した部分の写真を撮ったり、タイヤの空気圧を測ったり、クルマの状態を詳しく調べているのは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の二人の事故調査員です。

この調査員の一人、中屋敷 剛史さんは次のようにおっしゃっています。

「事故の状況と損傷の状態を比較しているというかたちになります。」

「確認をすることによって迅速に保険金の支払いにつなげていると。」

 

損害保険会社は交通事故の保険金を支払う前に、このように部品単位で被害の状況を調べ、保険金の金額を算出します。

ただ、こうした調査はあくまでクルマの損傷から事故の状況を推察するものです。

そこで、事故が発生した原因についてより詳しく把握するために新たに取り入れたのがCDR(Crash Data Retrieval)です。

中屋敷さんは次のようにおっしゃっています。

「この機械をクルマに接続してEDR(Event Data Recorder)というデータを読み出す。」

「これは飛行機でいうところのフライトレコーダーのような事故記録装置。」

 

車両の中央に搭載されている部品はエアバッグの展開を制御するものです。

EDR(記録装置)この部品に内蔵されています。

衝突などで強い衝撃が加わった瞬間から5秒前までのクルマの状態を記録します。

記録されたデータは専用の装置で読み出します。

日本では、法律によるEDRの装着義務はありませんが、既に多くのクルマに搭載されています。

 

では読み出したデータからどのようなことが分かるのでしょうか。

あいおいニッセイ同和損害調査株式会社(東京都新宿区)で、中屋敷さんは次のようにおっしゃっています。

「こちらがプリクラッシュデータということで、衝突前のクルマの挙動を示しているものになります。」

「ゼロのところが衝突した時間になりますけど、そこから遡ること4.2秒後から1秒間隔で記録されています。」

 

今回事故を起こしたクルマのEDRには、車速は勿論、ブレーキやアクセルの操作やエンジン回転数など、事故を起こす前の運転状況が1秒間隔で記録されていました。

こうしたEDRのデータは事故の真相究明に役立ち始めています。

 

様々な調査を手掛けている交通事故総合分析センターの東京交通調査事務所(東京都千代田区)でもEDRのデータを解析、CGを使ってリアルな事故の状況を再現することで原因を科学的に検証しています。

こちらの伊藤 達也さんは次のようにおっしゃっています。

「これまで分からなかったことが全てEDR情報で分かりますので、事故前の運転車の挙動とかが全て把握出来ますので、かなり精度が高くなってきていると思います。」

 

警察庁でもEDRのデータを交通事故の捜査に活用しています。

2016年に起きた乗用車の暴走事故では、アクセルとブレーキの踏み間違いを解明するなど、これまでに約180件の実績があります。(2017年末まで)

 

では冒頭に登場した埼玉の修理工場の事故車をEDRのデータで解析すると、事故発生の4.2秒前、衝突地点の手前およそ37mをアクセルを踏んで走行、1秒後にはアクセルから足を離しました。

衝突地点からは約28m手前です。

アクセルを離したまま車は進み、衝突の0.2秒前ブレーキを踏みましたが、ほとんど減速せず、時速約30キロの速度で相手の車両に衝突していたことが分かりました。

 

あいおいニッセイ同和損害保では、現在EDRのデータを解析出来るEDRアナリスト15人が事故の調査に当たっています。

いち早くEDRに注目したのは、将来の自動運転化に対応するためです。

社長の金杉 恭三さんは次のようにおっしゃっています。

「従来ですと、ぶつかった時にご本人なり相手に確認をするみたいなことは出来たんですけど、自動運転になりますと、確認は人間には出来ないわけなんで、自動化に伴って事故原因を客観的につかんでいくということの必要性が高まるというふうに思っています。」

 

将来の自動運転化を見越して、政府も2020年までにEDRのような走行記録装置の義務化を検討しています。

 

EDRデータの読み取り装置を提供しているのが大手部品メーカーのボッシュ(BOSCH)(東京都渋谷区)です。

ある日、この装置を使い、損害保険会社の調査員などに向けてEDRのデータを読み取る

研修をしていました。

ボッシュはこうした講習会を実施し、精度の高い分析が出来る専門家を育成しています。

部品メーカーとして自動運転の実現に向け、最先端の安全システムを提案していくためにも、EDRのデータは有効だといいます。

ボッシュの里 廉太郎さんは次のようにおっしゃっています。

「精度の高いデータが取れると活用する範囲が広がると思いますので、データを今後の安全のための糧に出来るような仕組みを作るというのが私どもの役目だと思います。」

「特に自動運転にかけての記録データはとても重要だと考えているので、今頑張ってそこら辺を伸ばそうとしております。」

 

さてEDRのデータを読み取れるクルマは今は限られているといいますが、今後自動運転車が普及する際に、事故が起こった時の責任の所在を明らかにするためにもこのデータの開示が重要になっているということです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

冒頭でお伝えしたように、ドライブレコーダーの市場は急成長しています。

しかし、事故の原因をより正確に特定するためにはドライブレコーダーのデータだけでは不十分で、EDRのデータがとても重要であることが番組を通して分かりました。

EDRのデータを活用すれば、事故の原因の追究は格段に精度が上がるのです。

ですから、なぜ日本では事故分析に効果を発揮するEDRのクルマへの装着義務が今までなされなかったのか、とても疑問に思います。

救いなのは、遅ればせながら将来の自動運転化を見越して、政府も2020年までにEDRのような走行記録装置の義務化を検討していることです。

すぐそばまで来ている自動運転車時代には、EDRのクルマへの搭載は不可欠なのです。

 

さて、EDRも今話題になっているIoT(モノのインターネット化)の一環と言えます。

IoTによる様々なモノのデータの“見える化”により、これまで把握してこなかったデータが容易に入手出来るようになり、そのデータを活用することにより新たなビジネスにつなげることが大いに期待出来るのです。


 
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