プロジェクト管理と日常生活 No.571 『今回のゴーン日産自動車前会長騒動にみる内部告発制度の重要性!』では内部告発制度の重要性についてお伝えしました。
そうした中、11月25日(日)放送の「報道プライムサンデー」(フジテレビ)でゴーン日産自動車前会長(以下、ゴーン前会長)の素顔について取り上げていました。
そこで番組を通して3回にわたって、私の思うところについてご紹介します。
1回目は、高額報酬の是非についてです。
ゴーン前会長は2010年の日産株主総会で次のようにおっしゃっています。
「日産はグローバルな経営を行う日本の会社だ。」
「だから(報酬も)グルーバルスタンダードに準ずることが大事だ。」
かつてスキンケア・化粧品通販を手掛ける株式会社ドクターシーラボで社長を務め、年商3億円から120億円にした実績を持つプロ経営者で、現在はコンサルティング事業などを手掛ける株式会社パジャ・ポス代表の池本
克之さんはゴーン前会長の報酬について次のようにおっしゃっています。
「低いと思います。」
「なぜなら外国人の方はその方の本国の基準がありますから。」
「そうでなければ仕事を受けないと思いますね。」
「フランスで超一流企業の代表者となれば、このくらいの相場だよねというのがあると思うんですよ。」
ちなみに、ソフトバンクグループの孫
正義代表取締役兼社長の報酬は1億3700円、そしてユニクロの柳井 正代表取締役会長兼社長の報酬は2億900万円と、二人とも5億円に満たないです。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
巷ではゴーン前会長の並外れた高額年収とそれを隠そうとした行為、すなわち有価証券報告書への虚偽記載による金融商品取引法違反に非難が集中しました。
確かにゴーン前会長が法律に触れる行為をしたという容疑は悪いですが、高額年収はそんなに悪いことなのかという疑問が湧いてきました。
というのは、立場を変えて、例えば日本の企業に勤める従業員が海外勤務になると、当然ながら日本で勤務していた時の年収に準じた給与にプラスして海外勤務手当などが支払われます。
途上国での勤務になれば、当然現地の従業員に比べればはるかに高額になることもあります。
そして、海外勤務先の従業員からすれば、同じような仕事をしているのになぜこんなに自分たちと収入格差が生じているのかという不満が起きても不思議ではありません。
また、この従業員は日本の従業員からは当然のこととして非難されることはありません。
一方、欧米の代表的な企業の経営者の中には年収10億円単位という高額者もおります。
また、自動車メーカーのCEOの平均年収は20億円弱といいます。
そうした中、ゴーン前会長もコストカッターとして名をはせた有名な経営者の一人なのですから、グローバルな視点で見れば、とんでもなく高額とは言えません。
ちなみにゴーン前会長の役員報酬は以下の通りです。
ルノー 9億5000万円
日産自動車 7億3500万円(8年間で約80億円の不正な報酬隠し分は除く)
三菱自動車 2億2700万円
(総額) 約19億円
なお、日産自動車からの報酬が10億円以内に計上されている背景には、ある日産幹部から「日本では年間報酬が10億円を超えない方がいい」というようなアドバスがあったといいます。
ですから、今回の騒動において、ゴーン前会長がご自身の高額年収について社内外に向けてきちんとその妥当性を説明し、法に則った処理を正々堂々としていれば、このような結末にはなっていなかったと思います。
こうした状況における“落としどころ”として考えられるのは、ゴーン前会長以下、経営陣の年収の一部返納です。
しかし、残念ながらゴーン前会長には、次回お伝えするご自身の野望もあってか、年収の一部返納という考えはなかったと思います。
確かに、全社的なリストラにより何万人という規模で退職させられた方々の気持ちを考えれば、日本人としては心情的に腑に落ちない、あるいは理不尽な気持ちになります。
しかし、冷静に考えれば、もしゴーン前会長が果断にリストラを進めなければ日産自動車という企業自体の存続が危ぶまれたのです。
ですから、最も責められるべきは、こうした事態まで適切な対策を打ち出せなかった、ゴーン前会長以前の経営陣だと思います。