2018年12月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.572 『ソフトバンクの通信障害に見る通信インフラの重要性とそのリスク対応策!』

ご存知のように12月6日(木)にソフトバンクの携帯電話で全国的に大規模な通信障害が発生しました。

この件については様々な報道機関により取り上げられていましたが、今回は12月6日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)、12月7日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)、および「ニュース7」(NHK総合テレビ)と3つのテレビ番組を通して、携帯電話の通信インフラ障害のリスク対応策についてご紹介します。

 

12月6日、全国のソフトバンクと第2ブランドのワイモバイルの携帯電話で4時間以上にわたり通話やデータ通信が出来ない大規模な障害が発生しました。

更にソフトバンクの回線を使った、いわゆる格安スマホでも同様の障害が発生しました。

平日の午後に起きた突然の通信障害はビジネスの現場に大きな影響をもたらしました。

 

午後1時半過ぎ、多くのソフトバンクの携帯電話が圏外になってしまい、午後6時過ぎに復旧したとしています。

平日の午後に突然起こった通信障害にビジネスマンや一般の人からは以下のような嘆きの声が聞こえ、当たり前と思っている普段の暮らしも一変しました。

・待ち合わせに連絡が取れず、お客様にも連絡出来なかった

・急ぎの案件などが入ってもこちらからアクション出来なかった

・スマホを使ってお客様にデモをしようとしたが出来ず、別のデモでごまかした

・駅前の公衆電話では、会社への連絡などで長い行列ができた

・スマホの地図アプリが使えなくなり、交番では道を尋ねる人が増えた

・「GRAY」のコンサート会場では、携帯端末のQRコードで行う予定だったファンクラブの会員確認を急きょ取りやめ、紙のチケットのみで入場出来る対応が取られた

・保育園に預けている子どもと連絡がつかず、何かあったら困るので仕事を休んだ

・子どもが熱を出したという、保育園からの連絡に気付かなかった

 

今や仕事を行う上で欠かせない携帯電話の不通はあちこちでビジネスを停滞させてしまったようです。

また物流大手の佐川急便では、通信障害の影響で荷物の集荷や再配達の情報がドライバーの携帯端末に届かなくなりました。

そこで12月6日の配達は依頼通りに届かなかった可能性があるといいます。

更にJR東日本は今回の通信障害の影響で携帯電話を使って自動清算出来る「モバイルSuica」サービスでチャージや特急券の購入などが出来なくなっていたといいます。

 

様々な仕事の現場に影響を与えた通信障害ですが、ソフトバンクによると障害の原因は通信設備に使われているスウェーデンの通信機器大手、エリクソン製のソフトウェアに異常が起きたためと発表しました。

ソフトバンクでは9ヵ月前から運用していました。

エリクソンは12月6日、現時点での分析として、“ソフトウェア認証の期限切れが原因とみられる”と発表し、古いバージョンに戻すことで復旧したということです。

ソフトバンクは、“再発防止策の徹底を図り、サービスの安定的な運用に向けて全力で取り組んでいきます”とコメントしています。

 

さて、日本と同じ頃、海外10ヵ国でも通信障害が発生していました。

同じエリクソンの通信設備のソフトウェアを使っていたイギリスの携帯電話大手でも通信障害が起き、ロンドンではバス停の表示画面が機能しなくなりました。

またクリスマスマーケットでは携帯電話による決済サービスが利用出来なくなりました。

スマホを使った配車サービスも使えなくなりました。

 

一方、総務省は、“電気通信事業法に基づく重大事故の可能性”があるとして、12月7日にソフトバンクから詳しい状況報告を受けました。

その結果、総務省は30日以内に報告書の提出を求めるとともに、ソフトバンクに対し、行政指導を含めた措置を検討する考えを示しました。

石田総務相は次のようにおっしゃっています。

「電気通信事業法上、重大な事故と考えられます。」

 

契約数が約4000万件にも上るソフトバンクの携帯電話で発生した今回の大規模な通信障害、政府が重大事故と指摘する今回の事態について、“デジタル時代の新たな災害”のようで、しっかりとした対策が必要だと専門家は指摘しています。

通信業界に詳しいMM総研の横田 英明研究部長は次のようにおっしゃっています。

「テクノロジーにおける新しい自然災害のようなものだったのかなと。」

「(スマホは)一つのライフラインになっているので、そのライフラインが使えなくなると大変リスクがあるということを通信業界全体で共有して、こういった通信障害を起こさないように業界全体で話し合っていく必要があると思いますね。」

 

以上、3つの番組の内容を合わせてご紹介してきました。

 

今やインターネットによる通信機能は今や電気、ガス、水道と同列の社会インフラとして欠かせないものとなっています。

インターネットをベースとしたスマホ、および携帯電話やパソコンが使用出来なくなるといかに不便になるかを今回の4時間ほどの通信障害を通して私たちは実感させられました。

そこで、当然こうした重要な通信インフラの障害リスク対応策が求められます。

 

なお、今回の通信障害問題の原因は、エリクソン製ソフトウェアの“ソフトウェア認証の期限切れ”であり、古いバージョンに戻すことで復旧したといいます。

この古いバージョンに戻すという対応策はコンティンジェンシープランの基本の一つです。

どんなに十分なテストを実施しても完璧な品質を完璧に保障することはあり得ないのです。

通信インフラやクルマの自動運転のようなとても複雑な技術においては特に言えます。

しかも例え技術の品質は完璧であったとしても運用上の不手際でも障害は発生してしまいます。

ですから、障害の発生を前提としたコンティンジェンシープランが必須なのです。

そういう意味で、今回の通信障害はこの古いバージョンに戻すというコンティンジェンシープランがあらかじめ準備されていたので4時間ほどで問題が終息出来たと言えます。

もし、こうしたコンティンジェンシープランが準備されていなければ、どれほど普及までに時間がかかったか分かりません。

 

ということで、勿論製品を提供するうえでの品質の完璧さや適切な運用システムを求めるのと同時に、障害の発生時などいざという時に頼みになるコンティンジェンシープランの準備をしておくこともとても重要なのです。

中でも古いバージョンに戻すという対応策は基本中の基本なのです。


 
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