2018年12月07日
アイデアよもやま話 No.4193 洋食器メーカー、ノリタケに見る企業の存続要件 その3 食器をルーツとした卓越した商品力!

8月12日(日)放送の「知られざるガリバー〜エクセレントカンパニーファイル〜」(テレビ東京)で洋食器メーカー、ノリタケについて取り上げていました。

そこで、番組を通して3回にわたってご紹介します。

3回目は「食器をルーツとした卓越した商品力についてです。

 

洋食器で世界的な人気を誇る株式会社ノリタケカンパニーリミテド(愛知県名古屋市)は今や世界中に広く知られるブランドへと成長しています。

その一方で食器以外の事業も展開、1939年に工業用砥石の本格的製造を開始、更に1967年から食器製造で培った技術を応用・発展させた電子部品を開発するなど、事業を拡大していきます。

社長の加藤 博さんは次のようにおっしゃっています。

「食器から根っこがあって、そこから派生した商品が沢山あるんですね。」

「切ったり、磨いたり、混ぜたり、焼いたり、そういったものに関しては我々は全ての技術を持っている。」

 

洋食器メーカーとして世界に名をはせるノリタケ、現在では食器作りで培った技術で日本のモノづくりを支えています。

食器作りから派生したという新たな事業、どんな共通点があるのでしょうか。

 

食器以外に展開するノリタケの3つの事業では日本のモノづくりを支える数多くの製品を開発、今や会社を支える大きな柱になっています。

加藤社長は次のようにおっしゃっています。

「まず売上高の半分以上、55%ぐらいを占めるのが工業機材事業です。」

 

作っているのは砥石をはじめ、モノを加工する工具も扱っています。

工業用砥石は高速で回転させて主に金属の部品や素材の表面を削ることにより形を整えたり、表面を磨いたりするための工具です。

自動車エンジンの部品やベアリングなど金属部品に多く使われて、国内トップシェアを誇ります。

砥石の粒度というのは表面の目の粗さ、磨いた後に大きな違いが出ます。

粒度が異なる砥石を使うことで、様々な加工を施すことが出来るのです。

これも食器から派生した技術で作られているのです。

食器とは全く異なる砥石、どこに食器作りの技術が生かされているのでしょうか。

工業機材事業本部の三好工場グループリーダー、早瀬 勝さんは次のようにおっしゃっています。

「今、砥石が積まれた状態です。」

「この後、窯に入れて蓋をして焼成するという工程に入ります。」

「それぞれの砥石に均一に熱が入るような並べ方をすることが重要なポイントです。」

「(砥石は)食器の方から来た技術を取り込んで製造しております。」

 

実は砥石の作り方は絵柄を入れること以外、食器作りと似ているのです。

まず分量を量って容器に入れた材料をよく混ぜていきます。

そしてドーナツ状の型へ流し込みます。

ここでも重要なのは“均一”です。

砥石として使う際に安定して回転するよう、原料を均一に行き渡らせます。

砥石の形になったのはその後大きな窯の中へ、食器作りとの違いは材料に研磨剤となる硬い石の粒を加えることです。

だから食器づくりの技術を応用出来るのです。

 

またノリタケは砥石を焼く窯を製造しました。

砥石は1000℃以上の高温でおよそ1週間焼きます。

高い温度を長時間保つこの窯は食器を焼く窯の経験を生かして開発した自社製です。

今ではノリタケの窯はリチウムイオンバッテリーを作る会社が導入、欠かせない装置として活躍しています。

高い精度が求められるモノづくりの現場で食器づくりの技術は活用されているのです。

食器づくりの技術を生かした事業では、意外な製品もあります。

加藤社長は次のようにおっしゃっています。

「MLCC(コンデンサー)と言われているもので、スマートフォンなどそういったところで沢山使われております。」

 

スマホやノートパソコンに使われるMLCCと呼ばれる電子部品、蓄えた電気をコントロールして電圧を調整するこの小さな部品(電極版)の中に食器づくりで使われている技術が役立っているといいます。

加藤社長は次のようにおっしゃっています。

「(食器の)こういった金も実は24金を塗っているわけですけど、貴金属をペーストにする技術というのを全部持っていまして、絵の具と言えば絵の具ですね。」

「様々なペーストを作って、そういったメーカーに供給していると。」

 

ここで応用されているのは、食器を彩る絵の具づくりの技術です。

特に金加飾という金を使った技法で数多くの食器を作って来たノリタケ、その経験を生かしてペーストと呼ばれる、金属の特性を保ったまま粘液を作ることに成功しました。

それが何に使われているのかですが、開発・技術本部 研究開発センターの青山 貴征さんは次のようにおっしゃっています。

「ペーストの印刷テストをやっております。」

「銀の粉と有機物で出来たペーストになっていて、これに熱を加えることで導電性が出るという、銀の配線になるんですね。」

 

ガラスの板を機械の中に入れると、出て来たガラスにはペーストで描かれた何本もの線が現れます。

「ペーストをライン状に印刷したものになります。」

「回路のパターンのため、印刷という技術が簡便で制作に向いている・・・」

 

印刷するだけで電気の通り道に、この技術が電子部品の製造に役立つのです。

ちなみに、ペーストの印刷に使われていた技術は転写紙を印刷する技術、食器づくりで磨かれてきた2つの技術を新しいテクノロジーに応用しているのです。

加藤社長は次のようにおっしゃっています。

「(番組の中で)ずっと見てもらったものはほとんどの食器から派生しているということで、根っこは一つだったと。」

「そこから大きくなったということがよく分かると思います。」

 

「やっぱり一つの産業というか商品というのは30〜40年くらいしかもたないんですよね。」

「ということで、様々な商品に種を蒔いていると。」

「で、ただ種の蒔き方というのは食器から派生した商品で行けば、種蒔きも早く芽が出るし、良い花が咲くんじゃないかなと。」

 

守って来た伝統を新たな技術へ、ノリタケのパイオニア精神が感じられます。

食器づくりで培った技術で日本のモノづくりを支えるノリタケカンパニーリミテド、より良い製品と技術を提供するために挑戦はまだまだ続きます。

加藤社長は次のようにおっしゃっています。

「世界から必要であるよと思われると言うことを追求したいということですね。」

「それが信頼を勝ち得るし、世間から必要とされるという証だと思います。」

 

明治時代、西洋の技術に独自の改良を加えて大きく飛躍した食器づくり、企業を成長させたその技術をルーツに国境を超える新しい技術力をその先もたゆまず磨き続けます。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

ノリタケと言えば食器、あるいは陶器というイメージがありますが、今や売上高の半分以上、55%ほどは工業機材事業が占めているのです。

そして、ノリタケは砥石を焼く窯を自社で製造し、今ではノリタケの窯はリチウムイオンバッテリーを作る会社が導入、欠かせない装置として活躍していることはあまり知られていないと思います。

更に、スマホやノートパソコンに使われるMLCCと呼ばれる電子部品にも食器づくりで使われている技術が役立っているといいます。

こうした高い精度が求められるモノづくりの現場で食器づくりの技術が活用されているのです。

加藤社長は、一つの商品は30〜40年くらいの寿命だとおっしゃっていますが、実際にノリタケでは食器づくりの技術をベースに次々にその技術を応用した製品づくりに挑戦しています。

その際、長年の食器づくりで培われた技術がその開発スピードを速めるのに役立っているわけです。

 

さて、3回にわたってノリタケの成長をご紹介してきましたが、そこから企業の存続要件が見えてきましたので以下にまとめてみました。

・根幹となる技術を極め、世界的に圧倒的な競争力のある製品づくりを目指すこと

・根幹となる技術を応用してタイムリーな新製品づくりを継続すること

 

ノリタケのこれまでの軌跡をたどると、たまたま食器づくりの技術が時流に乗った製品づくりに応用出来たというラッキーな面もあったと思いますが、いずれにしても根幹となる技術がしっかりしていたからだと思います。

また、経済がグルーバル化した現在、国内トップの技術を有していても、世界的な競争には勝ち残れないのです。

ですから、あくまでも世界でナンバーワンの技術、商品づくりを目指すことが求められるのです。

 

そしてやはりとても大切なのは“良品 輸出 共栄”という経営理念が従業員全体の心の拠り所となり、その時々の経営者がしっかりと心に刻み込み、事業展開したことだと思います。


 
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