2018年12月01日
プロジェクト管理と日常生活 No.569 『大規模太陽光発電普及の功罪から見えてくる課題とその対応策!』

国は太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電を将来的な主力電源の一つと位置付けています。

従ってその普及のために、一定期間固定価格で買い取る固定価格買い取り制度(FIT)を取り入れています。

しかし、普及を加速させるために当初欧米よりも高い買い取り価格を設定しました。

そこで、これをビジネスチャンスとばかりに多くの業者がメガソーラー(*)など大規模な太陽光発電事業に乗り出しました。

そうした中、8月27日(月)付け読売新聞の朝刊記事、および11月15日付けYOMIURI ONLINEの社説(こちらを参照)でメガソーラー(*)などの大規模な太陽光発電の功罪について取り上げていました。

そこで、この記事を参考に課題とその対応策についてご紹介します。


* 1メガワット(1000キロワット)以上の出力を持つ太陽光発電システムのこと。

  主に自治体、 民間企業の主導により、遊休地・堤防・埋立地・建物屋根などに設置されている。


静岡県伊東市では、東京都内の業者が105ヘクタールの山林を買い取り、うち45ヘクタールに太陽光パネルを設置する計画を進めています。

ダイビング・スポットにも近く、関係者は「土砂が海に流れ込んだら誰も潜りに来なくなる」と懸念しています。

伊東市では太陽光発電所の設置を規制する市条例案が今年6月に施行されました。

太陽光パネルの面積が1.2ヘクタールを超える発電所の建設は認めないことが柱です。

「条例の対象となるため建設出来ない」と主張する市に対し、業者側は「事業着手後に施行された条例なので規制の対象外」と対立しています。

業者は8月に造成作業などを始めました。

 

一方、7月の西日本豪雨では神戸市内の太陽光発電所の敷地が崩落し、近くにある山陽新幹線の架線に太陽光パネルが接触する恐れがあったため、JR西日本は一時、運航を見合わせました。

市は、出力10kw以上の事業用太陽光パネルの設置には届出を義務付ける条例を制定する方針です。

 

また高知県四万十市は、県の四万十川条例に基づき、市内での建設計画について、過去に浸水被害のあった地域との理由で2度にわたって不許可にしました。

 

環境省によると、今年6月現在、32府県と政令市など17市が環境アセスメント条例で太陽光発電所の設置を規制しているといいます。

ただその手法は自治体ごとにばらつきがあり、同省は「統一した評価手法が必要」と判断しています。

有識者会合を8月30日に開いて検討を始めます。

太陽光発電所を建設する場合。現在は電気事業法に基づき、着工の30日前までに経済産業省に発電出力などの計画を提出し、場所によっては森林法や農地法などの規制を受けます。

トラブルは大規模な発電所建設で起きており、新規参入業者が地元に十分な説明をしないまま計画を進めるケースが目立ちます。

新たなアセスメントの対象になれば、環境への影響の詳細な調査や住民への説明が義務付けられます。

 

一方、記録的な猛暑となった今夏、節電要請もなく電力が安定供給されているのは、各地で急増した太陽光発電の電力が大きく貢献しているためです。

ピーク需要の1〜2割は太陽光発電で賄われていると見られます。

太陽光など再生可能エネルギーについて、国が決めた価格で買い取りを電力会社に義務付けた「固定価格買い取り制度」が2012年に導入されたことから、各地で太陽光発電が急増しました。

資源エネルギー庁によると、2012〜2016年度の太陽光発電の導入量は、制度開始前の6倍になりました。

東京電力は、どれくらいの電力を供給出来るかに対して、実際にどれくらい使ったかを使用率として公表しています。

それによると、7月2日の93%が最高で、7月〜8月の他の日は猛暑日も含めて93%未満と余裕のある状態が続いています。

午後2時前後の電力需要のピークと太陽光発電のピークが重なっていることが大きいのです。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

記事を参考に大規模な太陽光発電の普及による弊害と国の対応について以下にまとめてみました。

・環境への悪影響を防ぐため、大規模な太陽光発電の設置を規制するために地方自治体が独自に条例の施行を進めているが、タイミングを逸し、各地で業者との対立が起きていること

・地元と業者とのトラブルは大規模な太陽光発電で起きており、新規参入業者が地元に十分な説明をしないまま計画を進めるケースが目立つこと

・多くの自治体が環境アセスメント条例で太陽光発電所の設置を規制しているが、その手法は自治体ごとにばらつきがあること

・そのため、環境省は「統一した評価手法が必要」と判断し、有識者会合を8月30日に開いて検討を始めていること

・太陽光パネルは2030年以降に寿命を迎え、大量廃棄が予想されており、その対策を今のうちから進めることも求められていること

 

一方で、大規模な太陽光発電の普及には大きなメリットが出ています。

今夏は猛暑が続いたにもかかわらず、各地でピーク需要の1〜2割は太陽光発電で賄われ、ピーク需要時にも電力需給が逼迫するような事態には陥らなかったのです。

 

いずれにしても、将来的に化石燃料は枯渇するし、巨大な地震や津波などの自然災害で大事故を引き起こすリスク持つ原発については多くの国民から“脱原発”の声が上がっています。

だからと言って、やみくもに大規模な太陽光発電の設置を進めれば、自然破壊につながります。

ですから、国の指導で環境アセスメント法を整備して、環境への影響の詳細な調査や住民への説明を義務付けることが求められます。

しかしその結果、大規模な太陽光発電の設置スピードはとても緩やかになると見込まれます。

 

ですから、こうした課題を解決する対応策が求められるのです。

幸いなことに再生可能エネルギー発電には太陽光や風力だけでなく、これまでご紹介してきた水力、地熱、海流、振動、バクテリア、更には宇宙太陽光による発電があり、あるいはユーグレナのバイオ燃料化なども実用化が進みつつあります。

ですから、こうした様々な再生可能エネルギーによる電力供給源を総動員して最適な割合で総合的に実用化を図ることがとても重要なのです。

こうしてみると、いつ誕生するのか、あるいは単なる夢物語で終わるのか分かりませんが、やはり期待したいのはこれまで何度となくお伝えしてきたアイデアよもやま話 No.2025 私のイメージする究極の発電装置とは・・・の要件を満たす発電装置の誕生です。

世界中のより多くの研究者や技術者にはこの究極の発電装置の研究開発にチャレンジしていただきたいと思います。


 
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