2018年11月20日
アイデアよもやま話 No.4178 スマホ決済で進む電子マネー経済!

7月30日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でスマホ決済で進む電子マネー経済について取り上げていたのでご紹介します。 

 

QRコードをスマホで読み込んで料金を支払うことが出来る決済が急拡大しそうです。

中国などでは広く普及している決済手段ですが、日本ではまだまだ認知度が低いというのが現状です。

しかし今、スマホ決済を展開する企業が増えてきています。

既に参入している企業は楽天やLINE、ドコモ、ヤフーなど様々な企業が入り乱れて加盟店やユーザーの獲得競争を繰り広げています。

またアマゾンやメガバンクは準備中といいます。

ただ、日本では既に電子マネーやクレジットカードといった決済方法が普及しています。

そうした中で企業の相次ぐ参入によって今後スマホ決済は定着するのでしょうか。

 

スマホ決済を手掛けるLINE Payは加盟店を増やすため店の負担を減らすと宣言しています。

店側は無料のアプリを入れるだけで8月から3年間3.45%かかる決済手数料が無料になります。

更にLINE Payの利用者にはLINEポイント(1ポイント1円)を支払いごとに3%還元、月末の1週間に限っては還元率が最低でも13.5%になります。

こうした施策でLINE Payは現在9万4000ヵ所ある加盟店を今年度中に100万ヵ所まで増やす計画です。

市場が未成熟なうちにグループ全体でシェアを獲得していく考えです。

LINE Payの長福 久弘COOは次のようにおっしゃっています。

「(どのように利益を得るのかについて、)赤字を掘るというようなところになっております。」

「それくらいやらないと、このマーケットでキャッシュレスが進まないと。」

「LINE全体では決済だけをやっている会社ではないことが非常に強みだと思っておりますので、LINE全体のアセット(資産)を使いながら、様々なビジネス展開をしていければと。」

 

こうしたスマホ決済を巡る動きは他にもあります。

ネット通販大手のアマゾンもスマホ決済の実証実験を始めたことを示唆しています。

更にヤフーの川邊 健太郎社長は次のようにおっしゃっています。

「このモバイルペイメント事業、もう1個ヤフーをつくるぐらいの覚悟でやりたいと思っています。」

 

スマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」を発表しました。

秋からのサービス開始に向け、ヤフーはインドに3億人以上のユーザーを持つというスマホ決済「Paytm」の技術を導入、更に広い影響力を持つソフトバンクと手を組み、スマホ決済の合弁会社PayPayを設立しました。

このサービスを通じて顧客の購入情報を集め、既存事業の拡大や新規事業に活用したい考えです。

「PayPay」でも中小店の手数料の負担を考慮して、サービス開始から3年間無料にします。

また決済のための専用の機械を置く必要がない手軽さも魅力の一つです。

このスマホ決済でヤフーがまず狙うのは加盟店の拡大です。

PayPayの中山 一郎社長は次のようにおっしゃっています。

「日本銀行券と同じようなユーザー体験をご提供申し上げないと中々難しいのかなというのは、事業課題としては感じていますので、どこでも「PayPay」と耳に入って来るような環境を整えるのは事業を進める絶対条件になります。」

 

実際にQRコードを使うスマホ決済の使い勝手はどうなのでしょうか。

クレジットカードや電子マネーなど20種類以上の決済が可能なローソン、電子マネーのモバイルスイカで決済してみると、商品を渡してから支払い完了までにかかった時間は12秒、一方QRコードを読み込むスマホ決済のLINEペイでは決済画面を立ち上げて完了までは16秒、電子マネーよりも4秒長くなりました。

ローソンでは、スマホ決済の利用者はまだ少ないものの今後の利用者増に期待を寄せています。

ローソンの辰巳 太司さんは次のようにおっしゃっています。

「(QRコード決済は)スマホの保有者が増えておりますので、それにアプリをダウンロードするだけで使えると。」

「クレジットカードや電子マネーと比較すると、伸長率としては顕著に伸びていると。」

 

番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄准教授は次のようにおっしゃっています。

「(QRコードを使ったスマホ決済の勝算について、)勝算を考えるうえで、他の決算システムとも比較というのが重要と思うんですね。」

「従来からあるクレジットカードは、まだサインが必要だったり、ちょっと手間取る部分もあるんですが、一方でポイントですとか付帯サービスがすごく充実しているわけですね。」

「それに対して、最近普及してきている電子マネーはそれほどのサービスはないかも知れないけど、圧倒的に早くて手軽なわけです。」

「それと比べるとQRコードはクレジットカードほどサービスは出来ないし、電子マネーと比べると、アプリを立ち上げる分ちょっと時間がかかっちゃうわけですね。」

「ですから、ユーザー目線から見るとちょっとどっちつかずなところがあるんですが、ただ一方でこの決済システムを使う導入する企業からしてみると圧倒的にコストが下げられるわけですね。」

「加入料が今タダですし、それから今ですと機械がいらなくてQRコードもプリントすればそれだけで決済機能が入るわけですね。」

「ですから例えば中国なんかでQRコードがすごく普及しているわけですけど、それもいわゆる屋台とか行商の方などが使うことで中国全土で広がっているわけです。」

「ですから日本も恐らく地方の中小企業ですとか、個人商店とかラーメン屋さんですとか、そういうところまで広がっていくということを考えると商機もあるし、日本の経済にとってもいいことなんじゃないかなと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通して、クレジットカードや既存の電子マネー、およびQRコードの拡大につながる競争優位要件について以下にまとめてみました。

(加盟店)

・少ない導入コスト(機器の設置コストや加入料)

・少ない手数料

・付帯サービス(会計処理の自動化や売上向上につながるサービスなど)

 

(ユーザー)

・操作性

・処理時間

・付帯サービス(キャッシュバックやポイント付与など)

・安全性、および不正使用された場合のサプライヤーの納得出来る対応

・加盟店の多さ

 

特にQRコードの拡大がこれから見込まれる日本においては、陣取り合戦の様相を呈しているようです。

そして、より有利になるのはQRコードの拡大が既存のサービスにもメリットをもたらす既存の企業、あるいは資金力のある新規のスマホ決済企業です。

なぜならば、より有利な条件で加盟店を増やせるからです。

また、会計データ処理などの付帯サービスも併せて提供することにより、加盟店との関係をより強固にすることが出来ます。

 

また、キャッシュレス、およびスマホ決済企業の提供する付帯サービスによって、加盟店はお店全体の生産性向上、および売上増を一気に達成出来る可能性を秘めています。

ですから、これまでの日本のサービス業の生産性の低さを一気に挽回出来るチャンス到来と言えます。

 

一方、ユーザーは買い物が全てスマホ決済も含めてキャッシュレスで出来るようになれば、現金やクレジットカード、スイカなどの電子マネーから解放されます。

ですから、財布が過去のものになる可能性を秘めています。

更に、カードを持ち歩く必要がなくなるので、買い物に際してこれまでよりも多くの中からどの決済企業の提供するサービスを使用するか、選択肢が広がります。

 

ということで、今日本は本格的なキャッシュレス社会に向けて動き出そうとしているのです。

そして、この流れは様々な観点で生産性の高い社会の実現につながると大いに期待出来そうです。

 

さて、こうした動きは売り上げデータなどが全てガラス張りのように“見える化”されてしまうので、会計データの改ざんなどが出来にくくなり、有効な脱税防止対策という隠れたメリットがあるのです。


 
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