以前、アイデアよもやま話 No.2452 3Dプリンターは現在の”魔法の箱”!でアメリカでの3Dプリンターによる銃の製造の弊害についてお伝えしました。
そうした中、8月1日(水)放送の「NHKニュース7」(NHK総合テレビ)で銃社会アメリカで3Dプリンターでの製造方法の公開について取り上げていたのでご紹介します。
銃社会アメリカで今、小さな銃が大きな議論を呼んでいます。
3Dプリンターで作ったプラスチック製の銃です。
その製造方法をインターネット上で公開することを認めたトランプ政権に避難の声が上がっています。
3Dプリンターがあれば誰でも銃が作れる、そんな社会になるのでしょうか。
アメリカで問題になっている3Dプリンターを使ったプラスチック製の銃、殺傷能力もあると見られます。
プラスチック製なので金属探知機に反応しにくく、製造番号もないため所有者の特定も難しいことから“ゴースト・ガン(幽霊のような銃)”とも呼ばれています。
議論の発端は、5年前にテキサス州にある団体が製造方法をインターネット上に公開したことでした。
この団体の創設者は次のようにおっしゃっています。
「3Dプリンターで出来る世界初の自己防衛だ。」
「銃規制なんて無理なんだ。」
銃規制に取り組んでいた当時のオバマ政権はただちに削除するように要求、“表現の自由”だと団体側から裁判を起こされても公開を認めませんでした。
しかし、トランプ政権は今年6月に一転して和解に応じました。
製造方法の公開を認めたのです。
7月31日、アメリカ国務省のナウアート報道官は次のようにおっしゃっています。
「(裁判を続ければ)表現の自由を保障した憲法を根拠に敗訴するとの説明を受けた。」
このため団体側は8月1日に公開するとしていました。
そこに“待った”がかかります。
ワシントン州などがトランプ政権を相手取り、公開の許可を取り消すよう求める訴えを起こしたのです。
ワシントン州のファーガソン司法長官は次のようにおっしゃっています。
「身元調査もない、待つ必要もない、製造番号もない、この前例なき決定は市民の安全を脅かし、州法を損なうものだ。」
野党の民主党もトランプ政権を強く非難しました。
ある民主党議員は次のようにおっしゃっています。
「劇場も学校もこの銃がやってくる。」
「“ゴースト・ガン”はアメリカの銃による暴力の新たな潮流だ。」
また民主党上院トップのシューマー院内総務は次のようにおっしゃっています。
「責任はトランプ政権にある。」
そして公開前日、ワシントン州連邦地方裁判所が出したのは公開を一時的に差し止めるという仮処分でした。
国民に取り返しのつかない損害を与える恐れがあると判断したのです。
公開は当面全米で違法になるということです。
表現の自由か、安全のための規制か、激化する議論の行方が注目されています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通じて、あらためてトランプ大統領の大衆迎合主義を感じました。
どうもトランプ大統領には国としてどうあるべきかよりも、自分が大統領として居続けるために半数以上を目途とした大衆が目の前で望んでいることを叶え、選挙で少しでも有利に戦えるようにという気持ちが強いようです。
今回ご紹介している銃の規制の問題においても、銃メーカー団体や自分の身は自分で守るという価値観を持った国民という大きな支持基盤を維持するために銃の規制には消極的だという見方があります。
ですから“ゴースト・ガン”の規制にも反対する姿勢を貫いているのだと思います。
このようにビジネスマンとしての実績から、トランプ大統領は最大限にその能力を生かして巧妙に政権運営をしているように思います。
しかし、“ゴースト・ガン”に対する規制がなければ、誰でも簡単に3Dプリンターで銃を作ることが出来てしまいます。
しかも、誰が“ゴースト・ガン”を持っているのか、あるいはアメリカ国内でいくつの“ゴースト・ガン”が出回っているのかも分からないのです。
ですから、アメリカ社会は増々“銃の蔓延”で不安な日々を送ることになってしまいます。
更に、“ゴースト・ガン”の作り方が公開されれば、他の国の人たちも簡単に“ゴースト・ガン”を作ることが出来てしまいます。
一方、救われるのはこうしたトランプ大統領の政策に対して異を唱える人たちの存在です。
単により多くの国民の支持を得られるような“大衆迎合主義”に基づいた政策運営がまかり通るのではなく、“表現の自由”か、“安全のための規制”かという観点に立って物事の本質を議論するような土壌をしっかりと根付かせて欲しいと世界をリードすべき大国、アメリカに期待したいと思います。
常識的には“表現の自由”よりも“安全のための規制”の方が優先されるべきだと思います。