7月22日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHK Eテレ東京)で生命維持の要であるエクソソームについて取り上げていたので4回にわたってご紹介します。
4回目は食べ物に含まれるエクソソームの効用についてです。
エクソソームは私たちの体の中だけではなく、野菜や果物などの細胞からも分泌されています。
どんなものが入っているのでしょうか。
ブドウの果汁を1時間ほど遠心分離機にかけ、これを顕微鏡で見てみるとブドウ由来のエクソソームがあります。
ブドウだけではなく多くの食物にエクソソームが存在していることが分かっています。
例えばショウガにはアルコール性の肝障害を予防する効果があることが実験で確かめられています。
その実験ではA,Bの2匹のマウスのうち、Bのマウスにのみショウガのエクソソームを投与、その後2匹のマウスに同じ量のアルコールを摂取させます。
するとエクソソームを事前に投与したBのマウスの方がアルコール肝障害の指標となる酵素、ASTの数値が低くなっていたことが分かったのです。
これはショウガ由来のエクソソームがこれ以上肝臓にダメージが起こらないよう保護していると考えられるのです。
エクソソームの研究で世界をリードしている国立がん研究センター研究所・分子細胞治療研究分野
プロジェクトリーダーの落谷 孝弘さんは次のようにおっしゃっています。
「ある疾患になると、がんでも結構ですけど、そのエクソソームの中身が変わる、つまりマイクロRNAが変化するということは分かりました。」
「恐らく何らかのそういった細胞はSOSとしてエクソソームを放出しているだろうと。」
「エクソソームを持つマイクロRNAを調べることで、まだ病気ではないんだけども何か少し危険な状態になっている。」
「これを元に戻すためにお薬ではなくて、ある食品を取りましょう。」
「こういう成分を含んだ食品を沢山取ることによって、我々の体内のマイクロRNAが変化したものを元に戻りますね。」
「そういった研究をこれから重ねていきたいと思っています。」
「(他にもエクソソームを持っている食品はあるかという問いに対して、)随分論文として分かってきています。」
「例えばこれ、ちょうど今年の国際研究会で発表されたばかりなんですけども、ゆで卵のエクソソームが我々の体の中に入って思わぬことをするという証拠が出て来たんですね。」
「これはまだまだ動物の実験の段階ですけども、動脈硬化を抑えたり、あるいはゆで卵のエクソソームを摂取したマウスは記憶力が上がったり、そういった驚くべき結果だったんですね。」
「我々が今考えているのはミライレストランというイメージで、例えば先ほどの血液中のマイクロRNAのエクソソームの診断が痛さも感じず、簡単に行われたとすると、例えばレストランに行って、まず簡単なエクソソーム検査をする、そうすると数分で「あなたのマイクロRNAがどう変化している、だからそれを元に戻すためにどんな食材の組み合わせがいいでしょう。」」
「メニューが出てくる、そういったことがあればいいですよね。」
「でもこれにはまだまだ膨大な研究が必要だと思いますけども、これを一歩一歩データを取っていきたいと思っています。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
まず、エクソソームは私たちの体の中だけではなく、野菜や果物などの細胞からも分泌されていることから、エクソソームはヒトだけでなく多くの食品に存在していることが分かりました。
そして、いろいろな食品由来のエクソソームやマイクロRNAの持つ効能を把握し、未病状態で最も適した食品を食べることによって私たちの体内のマイクロRNAが変化したものを元に戻し、病気にならずに済むことが出来るというのです。
そして、その一つのビジネスモデルがミライレストランというわけです。
“医食同源”という言葉がありますが、食品に関するエクソソームやマイクロRNAの研究はまさに現代版の“医食同源”と言えます。