2018年11月08日
アイデアよもやま話 No.4168 2050年に100%電動車化へ!

アイデアよもやま話 No.4071 次世代自動車のキーワードは”CASE”で次世代自動車のキーワードについてご紹介しました。

そうした中、7月24日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でA:オートノマス(自動運転)とE:エレクトリック(電動化)の2つについて取り上げていました。

そこで、今回は2050年に100%電動車化を目指す動きについてご紹介します。

 

7月24日、日本の自動車産業の将来を考える経済産業省(経産省)の有識者会議は世界で販売する日本車について、2050年までに全ての乗用車が電動車になるという中間報告を発表しました。

近く最終提言を取りまとめる方針です。

世耕経済産業大臣はこの会議で次のようにおっしゃっています。

「トップレベルの自動車産業を有する日本だからこそ掲げることが出来るゴールだと。」

「世界的にも大変インパクトの大きいメッセージになろうかと。」

 

自動車メーカーのトップも参加する「自動車新時代戦略会議」がまとめた中間報告では、日本車について世界最高水準の環境性能を実現するため、2050年までに乗用車1台当たりが排出する温室効果ガスを2010年の水準に比べて約9割削減することを目指します。

これにより、2050年には日本のメーカーが世界で販売する乗用車の100%がEVやハイブリッド車などの電動車になる見通しだとしています。

会議にはトヨタやホンダ、日産自動車のトップなども参加し、経産省によると取りまとめた内容について、各社から「異論はなかった」ということです。

ただ事前の調整ではガソリン車などの販売を止め、乗用車を100%電動化することに反発の声も聞かれ、経産省は目標はあくまでも「最高水準の環境性能の実現」だとして、自動車メーカーに配慮したかたちとなりました。

 

なお、今回の会議で出された「世界の電動化の状況」(2017年)は以下の通りです。

 

      販売台数   電動化率 (EVPHVHVFCVを含む)

日本    513万台 31.6%

アメリカ 1722万台  4.0%

ドイツ   255万台  4.8%

中国   2794万台  3.0%

インド   369万台  0.03%

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

まず、あらためて国内でのEVの普及を目指すに当たり、必要要件を以下にまとめてみました。

・太陽光など再生可能エネルギーによる発電設備の更なる導入

・急速充電スタンドの更なる全国展開

・EVを電源としても利用出来る充電・給電併用スタンドの全国展開

・以下の取り組みによる電費の向上

  EV用バッテリーやモーターの性能向上

  車体の軽量化

 

今、世界的に注目されている地球温暖化問題の解決にあたっては、いくらEVが走行中にCO2排出量をゼロに出来てもその電力が化石燃料による火力発電から得られたものでは実質的なCO2排出量の削減には100%貢献出来ません。

ですから、自動車における実質的なCO2排出量の削減には、EVの普及とともにそれに必要な電力を再生可能エネルギーによる発電にシフトしていく必要があるのです。

また、EVはガソリン車がガソリンスタンドでガソリンを補給するように、充電スタンドで充電する必要があります。

ですから、EVの普及とともに充電スタンドの全国展開が求められるのです。

更に、EVは移動する電源とも言われるように、移動手段であると同時に電力源としての機能があります。

ですから、電力需要の少ない深夜時間帯に充電して昼間の電力需要のピーク時間帯に電力源として活用出来れば、水力発電と同様の機能を果たすことが出来、電力需要ピークを平準化させることが出来るのです。

そのためには単にEV用の充電スタンドを設置するだけでなく、EVのバッテリーを電力源として活用するための給電スタンドが必要になるのです。

ですから、充電スタンドの増強の次のステップとして充電スタンドと供給スタンドを一体化させた充電・給電併用スタンドの普及が必要になるというわけです。

こうした取り組みと並行して、EV用のバッテリーやモーターの性能向上、および車体の軽量化による電費の向上が求められるのです。

 

さて、番組でも紹介されていたように、今は日本の自動車の電動化率は世界で断トツですが、純粋なEVの割合で見れば、国内での普及率はまだまだごくわずかに過ぎません。

そのほとんどはPHV(プラグインハイブリッド車)やHV(ハイブリッド車)です。

また、FCV(燃料電池車)においては電動車に占める割合はほぼ0%に過ぎません。

FCVの普及の高いハードルとして、販売価格の高さ、および水素ガスを補充する水素ステーションの設置費用の高さが挙げられます。

ちなみに、EV用の急速充電器の設置費用は500万円ほどですが、水素ステーションの設置費用はその10倍の5億円ほどと言われています。

また、EVのバッテリー技術の進歩により、航続距離でもFCVの600kmほどに対してEVもこの数字に近づいていくのは時間の問題だと思われます。

 

こうした中、自動車の販売台数が世界的に断トツの中国は純粋なEVの普及に全力で取り組んでいます。

他の先進国もこうした中国の動きと同様の傾向があります。(参照:アイデアよもやま話 No.3878 加速するEVシフト!

その理由は、日本の自動車メーカーのハイブリッド技術に追いつくためには時間がかかるので、一足飛びにEVの開発を進め、EVで日本製のEVと対抗しようという狙いがあります。

ここで注目すべきは以下の2つの観点です。

1つ目は、ハイブリッド車に比べてEVの構造は単純なのでバッテリーを除けば製造コストが安く、その分販売価格を抑えることが出来るということです。

ですからバッテリーの価格が安くなるにつれてEVの販売価格はいずれガソリン車とも競合出来るようになると見込まれます。

現在でも航続距離が100km程度であれば、中古車では十分に購入し易いところまで来ています。

2つ目はハイブリッド車は走行中にCO2排出量をゼロにすることは出来ませんが、EVはゼロなのです。

ですから、EVは環境性能においてPHVやHVに比べて優れているのです。

この2つ目の観点から、近い将来世界的には電動車イコールEVという時代がやってくることは間違いないと思います。

 

ここで、気になるのは、経産省は自動車メーカーに配慮して、ハイブリッド車などの電動車も含めて、目標はあくまでも「最高水準の環境性能の実現」だとしたことです。

こうした経産省の配慮がこれから本格化する世界的なEV競争において、結果的に日本メーカーの弱点になることが危惧されます。

こうした長期的な方針を決める「自動車新時代戦略会議」で進めるこれからの時代の自動車戦略においては、経産省による将来の自動車産業のあるべき姿を見据えた断固としたリーダーシップが求められると思うのです。


 
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