7月16日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では漫画家
三田 紀房さんがゲストに迎えられていました。
そこで、番組を通して三田さんの漫画制作への独自の取り組みについて2回にわたってご紹介します。
1回目は知ってそうで知らないことを素材にしていることについてです。
三田さんの代表作「ドラゴン桜」は、弁護士が落ちこぼれの生徒を1年で東大合格まで導くサクセスストーリーで、その累計発行部数は800万部です。
更に、投資や経済を題材にした漫画「インベスターZ」も100万部の大ヒット、名門私立学校の投資部を舞台に株式投資の具体的なノウハウから経済そのものの仕組みまで詳しく、分かり易く描いているのが特徴です。
この「インベスターZ」は実写ドラマとしてテレビ東京で7月から毎週金曜日に「ドラマ25」として放送されました。
その大きな特徴が原作の漫画同様、実在の経営者たちが本人役で登場することです。
そして、彼らの多くがこの漫画の大ファンなのです。
ミドリムシの研究を行っている株式会社ユーグレナの出雲 充社長は次のようにおっしゃっています。
「こんなにお金と真正面に向き合った漫画って本当に初めてだと思うんですよ。」
「「インベスターZ」という漫画自体が本当にベンチャーなんですよ。」
また、求人サイトを運営する株式会社ビズリーチの南 壮一郎社長は次のようにおっしゃっています。
「大好きな漫画です。」
「やっぱり自分も会社の創業者なので“志”とか“想い”というのは事業だったり、人を動かすんだなというのは漫画を通じて凄く感じた部分です。」
更に、日本の金融の街、兜町でも番組のインタビューでは面白いという声が返って来ています。
経済の現場で支持を集める「インベスターZ」の作者、三田さんは元西武百貨店の社員で、30歳で漫画家に転身しました。
三田さんは次のようにおっしゃっています。
「(「インベスターZ」は)基本、社会人をターゲットにしているんですけど、出来るだけ若い人、就活生であったり、新卒の社会人の方に特に読んでもらいたいなというふうにして企画しています。」
「中学生の主人公とともに投資を学んでいただいて、それを活かしていただくという筋立てになっています。」
この漫画の特徴の一つとして、知っているようで知らないことを分かり易く伝える部分があります。
史実を元にした内容がいろいろ出てきますが、その一つがアメリカのゴールドラッシュです。
1848年にアメリカ西海岸で金鉱が発見され、ゴールドラッシュが起きました。
人々はこぞって金を掘りに西海岸へ押し寄せました。
ところが、儲かったのはスコップやツルハシを売った人、宿、お酒と博打を提供した酒場の主人、更に最終的には大量の人員と物資を運ぶために鉄道を敷いた実業家が大儲けしました。
なので、金が出たからといって、大勢の人の後にくっついて“金を掘ったヤツに金持ちはいない”、こうしたエピソードが漫画の中に沢山出てきます。
この漫画の中にはいろいろなエピソードが出てきますが、中でも三田さん自身が最も印象的だったものについて次のようにおっしゃっています。
「これは、鉄道王というのはスタンフォードさんなんですね。」
「スタンフォード大学の創設者で、私、実際にスタンフォード大学に見学に行ったことがあるんです。」
「それで自分が身近に感じる場面ということで、これを出さしていただいたんですけども。」
また、漫画の中で描いている世界は金融の基本に忠実ですが、どういうきっかけでこのような素材を得ようと思ったのかという問いに対して、次のようにおっしゃっています。
「これはやっぱり知ってそうで知らないことが実はすごく多いんですね。」
「しかも中々人に聞けない。」
「やはりそれを漫画でこっそり情報収集が出来ると。」
「そうすると、実世界で役立ってもらえるんじゃないかと。」
「そういうきっかけでこの作品作りをしているんですけど。」
また、この漫画に中には実際の経営者が本人役で登場していますが、そのことについて次のようにおっしゃっています。
ちなみに、この中には人類初の一般人の月旅行を予約された、今話題のスタートトゥデイの前澤 友作社長も登場しています。
「やはり読者の方っていうのは、リアルな情報が欲しいんですね。」
「で、それをまず求めるために実際にオファーしてみる。」
「そうすると以外に「出てもいい」という返事が返って来るんですね。」
「実際に出ていただくんであれば、そのまま書いてしまおうということで。」
「そうすると、生の情報をそのまま読者に提供出来るということで、実際の社長さんに出ていただきました。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
投資や経済を題材にした漫画「インベスターZ」を例にとると、番組を通して以下のように大ヒットの秘密が見えてきます。
・名門私立学校の投資部を舞台にして、株式投資の具体的なノウハウから経済そのものの仕組みまで詳しく、分かり易く描いていること
・実在の経営者たちが本人役で登場していること
・知っているようで知らないことを分かり易く伝えていること
中でも特に大ヒットにつながったと思うのは、知っているようで知らないことを分かり易く伝えていることにあると思います。
その一つが投資や経済を題材にした漫画「インベスターZ」の中で、アメリカのゴールドラッシュで、最終的には大量の人員と物資を運ぶために鉄道を敷いた実業家が大儲けしたとありますが、これは鉄道インフラを抑えたということで、現在の企業の成功事例にも言えることです。
アメリカを代表するGAFAと呼ばれる4社、すなわちグーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)は商品やサービス、あるいは情報を提供するという、ネット上のプラットフォームを提供するサービスを展開しており、従来では考えられない程短期間のうちにベンチャー企業から大企業へと成長しました。
この他にもアメリカにはユーチューブやツイッター、テスラ、あるいはウーバーなど新たなサービスを提供する、存在感のあるベンチャー企業があります。
一方、国内でもかつてのベンチャー企業で今や日本を代表する大企業に成長したソフトバンクの孫社長は、かつて自社の株主総会で「ソフトバンクはプラットフォームを提供する企業を目指す」というようなことをおっしゃっていました。
そして、実際にネット上のプラットフォームのみならずAIやロボット、更には自動運転に係わるサービスまで展開しつつあります。
また、プロ野球チームのオーナー企業でもあります。
他にも楽天やDeNA、あるいはメルカリなど多くのベンチャー企業も同様の戦略で急成長しております。
ということで、私はまだ「インベスターZ」を読んでいませんが、“知っているようで知らないこと”についてどんな事例が取り上げられているのか期待しつつ、近いうちに読んでみようと思っております。