2018年10月22日
アイデアよもやま話 No.4153 注目すべきiPS細胞の実用化研究!

6月21日(木)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で最新のiPS細胞の実用化研究について取り上げていたのでご紹介します。 

 

熊本大学では最大1500匹を飼育出来る世界最大級の繁殖施設を今整備しています。

この施設の責任者は熊本大学 大学院生物学研究部 老化・健康長寿学分野の三浦 恭子准教授です。

ハダカデバネズミの長寿のヒミツを解き明かそうとしています。

1匹1匹の体調を気遣いながら、ハダカデバネズミの細胞を日々分析しています。

三浦さんは次のようにおっしゃっています。

「(ハダカデバネズミは)敏感というか繊細な動物ではあります。」

「温度、湿度の管理がとても大事で、この部屋(飼育室)も30℃で湿度55%から60%くらいに保って厳密にコントロールしますね。」

 

三浦さんの恩師はノーベル賞を受賞した京都大学の山中 伸弥教授、その山中教授のもとでiPS細胞の研究に取り組んできました。

iPS細胞を用いると、あらゆる組織や臓器を作り出すことが可能となり、病気や怪我で失った機能を取り戻せるのではないかと期待されています。

しかし、iPS細胞には課題もありました。

iPS細胞を生き物の体にそのまま移植すると、組織や臓器に変化せず、がんになってしまうリスクがあります。

そのことがiPS細胞の実用化を阻む一つの要因となっていました。

そこに風穴を開けたのが三浦さんの研究です。

2016年、世界で初めてハダカデバネズミからiPS細胞を作ることに成功しました。

更にそのiPS細胞ががんにならないことを突き止めました。

三浦さんはヒトのiPS細胞とハダカデバネズミのiPS細胞を比較して実験を行いました。

それぞれをマウスの精巣に移植したところ、ヒトのiPS細胞を移植した精巣は肥大化し、がんになりました。

ところが、ハダカデバネズミの方にはがんの兆候は見られなかったのです。

三浦さんは次のようにおっしゃっています。

「やっぱり生物の研究というのは、やってみないと分からないというところがかなり多いので、(今回の研究結果には)びっくりしましたね。」

 

今年5月、健康長寿をテーマにした講演会が熊本大学で開かれ、三浦さんが登壇し、今後の研究目標を語りました。

「最終的にはハダカデバネズミの老化耐性、がん化耐性に関与するような遺伝子を導入することで、将来的にはヒトでも(ハダカデバネズミの老化耐性、がん化耐性を)再現することが可能であろうということで、新規の老化、がん化の予防薬の開発につなげられればと考えております。」

 

三浦さんは次のようにおっしゃっています。

「ハダカデバネズミが専門の私といろんな(老化関連の)病気が専門の先生の研究とを組み合わせることによって、(老化やがんなどの)新しい予防法や治療法が今後どんどん生まれる可能性があるということになります。」

 

三浦さんはハダカデバネズミの長寿のメカニズムを今後10年以内に突き止め、その成果をヒトの健康長寿に役立てたいと考えています。

世界が注目する熊本大学の老化研究、将来私たちの寿命を大きく左右することになるかもしれません。

 

このハダカデバネズミは、ロシアや中国の他、IT企業のグーグルも研究を進めるなど、世界的に注目されているそうです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

どんなに素晴らしい発明であっても、その実用化に際して副作用の影響が大きければ、副作用が出ないようにするか、副作用が無視出来る程度まで軽減出来る発明を伴わなければ実用化すべきではありません。

今回ご紹介したiPS細胞の研究はまさにiPS細胞という医療技術を実用化するうえでの大きなハードルである副作用を取り除くための研究なのです。

ですから、この副作用を取り除くためのハダカデバネズミの研究が世界的に注目されているのは当然のことなのです。

 

iPS細胞の研究については山中教授がノーベル賞を受賞し、世界的に特許も取得されました。

ですので、是非ハダカデバネズミの研究を通してiPS細胞関連の医療技術の実用化に伴う細胞のがん化という副作用を取り除く研究を他国に先駆けて進め、山中教授と同様にノーベル賞の受賞、および世界的な特許の取得を目指していただきたいと思います。

こうした医療技術の世界展開は人類全体の健康寿命を延ばすだけでなく、その経済効果はかなりのものと見込まれます。

 

さて、医療技術にはこれまでご紹介してきたようにiPS細胞以外にもアイデアよもやま話 No.4141 夢のようなDIYバイオ!でご紹介したバイオテクノロジーなど様々な方法があります。

更に今年10月1日にはとても喜ばしいニュースが飛び込んできました。

今年のノーベル生理学・医学賞を受賞された、本庶 佑京都大学特別教授(76歳)などの研究成果である、免疫を抑制する働きを持つ分子「PD−1」の発見による「がん免疫療法」です。

この発見は、単にがんの治療に役立つだけでなく、iPS細胞の利用による副作用でがんになってしまった患者の治療にも役立つので、iPS細胞の利用を補完する手段としても位置付けられます。


 
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