2018年10月06日
プロジェクト管理と日常生活 No.561 『南海トラフ巨大地震発生のリスク対応策 その2 民間による長期に及ぶ事前避難対策!』

9月1日(土)放送の「NHKスペシャル MEGAQUAKE「南海トラフ巨大地震 “Xデー”に備えろ」」では以下のような内容を伝えていました。

そこで、番組を通して、南海トラフ巨大地震発生のリスク対応策について4回にわたってご紹介します。

2回目は民間による長期に及ぶ事前避難対策についてです。

 

南海トラフ巨大地震発生で長期に及ぶ事前避難にどう備えるのか、住民自ら対策に乗り出した地域があります。

最大34mもの津波が想定される高知県黒潮町、高齢化率は4割を超えています。

町はこれまで巨大地震に備えて津波避難タワーの整備などを進めてきました。

しかし、津波避難タワーでは長期間の事前避難は困難です。

また、避難所に指定された学校は“臨時情報”が出た場合でも通常通り授業が行われている可能性があります。

そこで住民たちが始めたのが高齢者などが事前避難出来る場所を探すことです。

黒潮町芝地区の区長、篠田 博さんがある日訪れたのは山間にある研修施設です。

この施設に事前避難をさせて欲しいとお願いに来たのです。

こちらの施設は、お風呂や炊事場など事前避難が長期に及んだ場合でも生活出来る設備が整っています。

今後は高台の住民にも高齢者や体の不自由な人を受け入れてもらえないか交渉していく予定です。

 

“臨時情報”が出た時、安全を確保しながらどう事業を続けるのか、企業でも検討が始まっています。

静岡市の沿岸にある総合物流会社、鈴与カーゴネット株式会社では、連絡手段の確保や自宅でも仕事が出来る体制づくり、出張の制限など、ある日の対策会議では約20もの事前対策が提案されました。

ある社員は次のようにおっしゃっています。

「今までは発災ありき、発災後のことを全て考えてましたけど、(事前に)どういう行動を取れるかというのも今回(会議を)やって気づきになりました。」

 

こうした状況について、名古屋大学減災連携研究センターの福和 伸夫センター長は次のようにおっしゃっています。

「(“臨時情報”が出て、地震が起きる前にどう行動するかについて、)これまでと全く違った対策の仕方が今出て来たわけですね。」

「少し工夫をすれば、被害を減らす努力は比較的簡単に出来るんですね。」

「ですから“臨時情報”が出た時にどんな対応をすべきかということをあらかじめ考えておくことが非常に大切だということが分かりましたね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

地震で甚大な被害が出た場合、学校の体育館が緊急避難施設としてよく使われます。

しかし、こうした場合の雑魚寝状態では特に高齢者への負担が大きくなります。

また、前回ご紹介した“臨時情報”(巨大地震が発生するかもしれない予兆を捉えて公表する情報)が出た場合でも通常通り授業が行われている可能性があります。

そうした中、番組で取り上げられた黒潮町芝地区の取り組み、すなわち被災時に避難先として利用しても影響が少なく、設備の整っている施設をあらかじめ確保しておくことはとても有効だと思います。

 

また、総合物流会社、鈴与カーゴネット株式会社による以下の取り組みは、災害時における企業としての事業継続の観点からとても的を射ていると思います。

・連絡手段の確保

・自宅でも仕事が出来る体制づくり

・出張の制限

 

この他にも以下のような項目の検討が必要となります。

・緊急時対応の発令

・緊急時の体制

・代替オフィスの確保

・重要データのバックアップの遠隔地での保管

 

こうした検討の結果は、一般的に「災害時対応マニュアル」、「災害復旧計画書」、あるいは「事業継続計画(BCP)」などとして文書化し、関係部門に配布され、定期的な見直し、あるいは予行演習がなされるのが一般的です。

 

南海トラフ巨大地震、あるいは首都直下型地震など、甚大な被害をもたらす地震はいつ発生するか分かりません。

明日、発生するかも分からないのです。

ですから、被害を最小限に食い止めるために、個人や家族として、あるいは企業としてもいざという時の備え、すなわちリスク対応策をしっかりと検討しておくことがとても大切なのです。

そうした備えを怠れば、きっと“Xデー”が来た時に後悔することになってしまいます。


 
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