18世紀の産業革命以後の300年足らずという人類の悠久の長い歴史の中のわずかな期間からだけみても、現在は人類のあり方、社会、およびテクノロジーの観点からとても大きな変化の時代を迎えていると思います。
そこで、これからの時代のキーワードについて、あらためて私の思うところを4回にわたってお伝えします。
2回目は半永久的な寿命の獲得についてです。
これまで何度かお伝えしてきたように、再生医療やゲノム編集など、医療技術の進歩は大変目覚ましいものがあります。
更に、最近では難病の人をその治療法が発見されるまで人工冬眠する技術まで出て来ています。
こうした結果、今世紀中にも人類は半永久的な寿命を手に入れることが出来るのではないかと思われます。
もしこうした社会が実現すれば、生物の定義が根本的に変わってしまいます。
また、ペットの世界においてもこうした医療技術により同様のことが起こりますから、ペットロスという言葉も死語になってしまう可能性があります。
一方、人間は物理的な存在であると同時に精神的な存在でもあります。
精神面では生きがいを感じる一方で、他の人との付き合い上の悩み、仕事上の悩み、あるいは貧困など、生きていく上での様々な悩みを抱えているのも人生です。
ですから、精神的に生きていくことに疲れた、あるいは絶望的な気持ちを持った状態でも、肉体的には半永久的な寿命があるということはまさに“生き地獄”になってしまう可能性があります。
ですから、こうした社会では、自ら現在のようなレベルの医療技術を選択することにより自らの死の時期を選択出来る、すなわち寿命をコントロール出来るという個人の権利がとても重要になると思います。
一方で、チャレンジ精神や創造意欲が尽きない企業家や芸術家などは半永久的に活躍することが出来るようになります。
いずれにしても、現在は人類も他の生物と同様に限られた命があるように設計されていますが、やがて人類は自ら発明した医療技術により、人類のみならず他の生物の寿命をも半永久的にしてしまうという、生物史上画期的なテクノロジーを実現してしまう可能性を秘めているのです。