9月10(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で大坂なおみ選手 今シーズン急成長の3つのヒミツについて取り上げていたのでご紹介します。
ご存知の通り、テニスの4大大会の一つ、全米オープン女子シングルス決勝で大坂なおみ選手(20歳)が元世界ランク1位で、4大大会を23回も制した女子テニス界の女王、セリーナ・ウィリアムズ選手(36歳)を下し、日本人として初優勝を果たしました。
大坂選手は今シーズン急成長を遂げたわけですが、その理由として挙げられるのが昨年12月に専属コーチに就任したドイツ出身のサーシャ・バインさん(33歳)の存在です。
歴史的偉業の裏にはサーシャ・コーチがもたらした大坂選手の“3つの変化”がありました。
1つ目は“ポジティブ・シンキング(積極思考)”です。
これは「なんでも前向きに物事を考えればそれは実現し、人生はうまくいく」という考え方です。
サーシャ・コーチが就任時、大坂選手に抱いた最初の印象は何でも後ろ向きに考えるというネガティブな考え方でした。
そこでサーシャ・コーチが取り組んだのは大坂選手の意識改革でした。
以下は意識改革前のある試合中の大坂選手とサーシャ・コーチとのやり取りです。
(サーシャ・コーチ)
「何イライラしているの?」
(大坂選手)
「全部。」
(サーシャ・コーチ)
「僕はよくやっていると思うよ。」
(大坂選手)
「私はそうは思わない。」
(サーシャ・コーチ)
「なおみなら出来るよ。」
こうしたサーシャ・コーチの根強い指導で徐々にポジティブ・シンキングを手に入れていった大坂選手は、今年3月ツアー初優勝、成長を見せる大坂選手にサーシャ・コーチは次なる変化を与えました。
それは2つ目の“ガマン”です。
以前の大坂選手と言えばプレイがうまくいかないとラケットをたたきつけたり、泣いたりと試合中に心が折れてしまうことがありました。
しかし、今大会の大坂選手はインタビューで次のように答えています。
「集中してた。」
「後はペイシェンス(ガマン)。」
「すごくガマンした。」
「一番大切(なこと)はガマン。」
ことあるごとに“ガマン”という言葉を口にした大坂選手、実際に苦戦を強いられた今大会の4回戦ではイライラが募り、ラケットをたたきつけそうになるも“ガマン”、のど元に手を当て、何かを呟き、自分自身を落ち着かせている場面も見られたのです。
更に変化は内面だけでなく、外見にも現れていました。
それは“減量”です。
サーシャ・コーチの就任前に比べて、昨年オフのトレーニングで7kg以上の減少に成功しました。
しかし、ただ体重が減ったわけではありません。
元テニスプレーヤーの沢松 奈生子さんは次のようにおっしゃっています。
「サラブレッドになったんです。」
「彼女はいらない部分を落としながらも、パワーもスピードも体力もつけました。」
「最高のフィジカルな状態です。」
“ポジティブ・シンキング”、“ガマン”、“減量”という3つの変化で成長を遂げた大坂選手、歴史的偉業の裏にはサーシャ・コーチの存在があったのです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組で紹介された大坂選手の3つの変化から「心技体」という昔から日本のスポーツ界でよく使われてきている言葉を思い出しました。
「心技体」とは、精神力(心)、技術(技)、体力(体)の総称で、最高のパフォーマンスを発揮するには心と技と体のバランスが重要であると言われています。
サーシャ・コーチが「心技体」をコーチをする上で意識しているかどうか分かりませんが、「心技体」のバランスを取ることは最高のパフォーマンスを発揮する上での原理原則だと思います。
しかし、元々技術的なレベルでは高い大坂選手の弱点であるネガティブな「心」と重量過多の「体」の改善の必要性を見抜いて3つの変化につなげたと解釈出来ます。
更に、番組では紹介されていませんでしたが、大坂選手へのサーシャ・コーチの接し方は上から目線ではなく、とてもソフトです。
ですから、選手に手をあげるタイプではないといいます。
そして、一般的なコーチはあまりしないそうですが、サーシャ・コーチは四六時中大坂選手と一緒にいることで安心感を与えるようにしているといいます。
また、辛い練習を楽しくさせるために、練習の中にゲーム感覚を取り入れているといいます。
さて、ここで思い出されるのは幕末の思想家、吉田松陰の教育方針です。(参照:No.2898
ちょっと一休み その459 『吉田松陰にみる教育の重要性』)
サーシャ・コーチと共通しているのは以下の3つです。
・教え子の個性を重視
・暴力を教育の手段としないこと
・短期間で教え子を急成長させたこと
今、日本のスポーツ界は2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを迎える中で、コーチによる暴力やパワハラ、更には関連協会のガバナンスなどの問題で大荒れ状態です。
しかし、吉田松陰の教育、あるいはサーシャ・コーチによるトレーニングの成果が示しているように、暴力やパワハラに訴えなくても教える側の人間力や教育方針次第で短期間で急成長させることが出来るのです。
関連報道記事に接する限り、日本のスポーツ界はこのお二人とは真逆な状況が多く感じられます。
ということで、スポーツ協会やコーチの方々には、“選手ファースト”を大前提に自らを大改造していただきたいと思います。
優れたお手本は身近なところにあるのです。