5月22日(火)放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合テレビ)で生物工場について取り上げていました。
そこで4回にわたってご紹介します。
3回目は生物工場研究の世界事情についてです。
生物工場の研究は今世界で急速に広がっています。
10年ほど前から一気に研究は盛んになってきました。
国ごとに見ると、最新のデータでは、アメリカが全体の4割を占めトップ、それをイギリス、ドイツ、中国が追随し、日本は5番目です。
また、国を挙げて力を入れているのがイギリスです。
政府は生物工場をビッグデータ、再生医療、そしてロボット工学などと並ぶ8つの重大技術の1つに指定、およそ223億円を投資しました。
また、19の大学、研究機関、そして56の企業が一緒に研究開発をする機関を設立し、産官学が一体となった開発に取り組んでいます。
更に、フィンランドの公的機関が昨年公表した資料では、洋服や生活用品など身の回りにある、あらゆるものを生物工場で作り出してしまおうという壮大な計画が盛り込まれています。
フィンランドの公的機関の客員教授もされている東京大学大学院准教授の五十嵐 圭日子さんは次のようにおっしゃっています。
「(そこで具体的にどんなものを作ろうとしているのかという問いに対して、)私たちの研究所では、やはりモノを作るというのが、全てあらゆるモノですね。」
「私たちの身の回りにあるモノ、例えばコップですとか、お皿ですとか、食器とか、椅子とかそういうようなモノまで作っていこうという、そういうかたちです。」
「(椅子というのはどういうふうに作るのかという問いに対して、)これはカビとかキノコとか、そういうような生き物が体の周りに作るような物質をなるべく多く作らせる。」
「で、その結果、それを乾かすとゴムのようなかたちになるということが分かっている。」
「それを椅子の下に敷いて、椅子代わりに使う、そういうような・・・」
「(キノコ臭いというようなことはないのかという問いに対して、)実はキノコの臭いがするんですけど、それに関しても臭いの成分をなるべく少なくするような遺伝子組み換えをするようなことがやられてますね。」
「(世界は随分先を行っていそうだが、日本の現状と課題はどうなのかという問いに対して、)やはり日本は古来から、お味噌ですとか納豆、そういう発酵食品のようなものを非常に食べて来たりとか、文化的に使ってきたという歴史がございますので、そういうものをうまく使うことによって、どうやってバイオ産業を動かしてくのか、そういうようなことになっていくんじゃないかという気がしています。」
「やはり国がそれをサポートしていただかないと、私たちも動かせないということがございますので、今の場合ですとどうしても研究者が個別に研究を行っているということがあるのですが、それが一丸となって国として動かしていくようなサポートが欲しいかなという気がしています。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
10年ほど前から一気に研究が盛んになってきた生物工場の研究は今世界で急速に広がっているといいます。
そして、生物工場には前回お伝えしたように、あらゆるモノを作り出す可能性があり、地球環境にも優しく、化石燃料などのエネルギー消費量の削減にもつながります。
また安く大量生産が可能といいますから、世界各国が生物工場の研究に熱心に取り組むのは当然と言えます。
そうした中、日本は世界で5番目といいますが、資源小国、日本にとって生物工場は資源小国からの脱皮、および様々な資源の輸入に依存しない資源大国実現の可能性を秘めています。
ですから、是非日本においても、これからのものづくり革命をもたらす生物工場の研究開発に向けて、ヒト・モノ・カネを投入し、産官学共同で取り組んでいただきたいと思います。