2018年09月13日
アイデアよもやま話 No.4120 生産性倍増の植物工場!

これまで植物工場については何度かお伝えしてきました。

そうした中、5月31日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で生産性倍増の植物工場について取り上げていたのでご紹介します。

 

建物の中で光や水をあげて野菜などを育てる植物工場ですが、実は計画通りに育てるのが難しく、58%の事業者が赤字だという調査結果があります。(日本施設園芸協会調べ)

そこでこの課題に挑む、イノベーションを起こそうとしているベンチャー企業があります。

 

倉庫に置かれた一見ただの大きな箱、これを開発したのは株式会社プランテックス(千葉県柏市)です。

中を開けると全てレタスです。

経営するのは、山田 眞次郎会長と山田 耕資社長の親子です。

山田社長は次のようにおっしゃっています。

「これは、世界の植物の生産を変える装置だと思っています。」

 

6月に販売を始めるというこの常識破りの“野菜生産装置”、最大の特徴について、山田会長は次のようにおっしゃっています。

「一般的な植物工場は外から光が見えますよね。」

「我々のは全部密閉されているんですね、この壁で。」

 

一般的に植物工場は広い空間に置いた棚で育てるのが常識です。

しかし、場所によって温度や湿度に大きな差が出てしまい、枯れてしまう野菜もあるといいます。

一方、プランテックスの装置は断熱材を使った壁で棚を密閉、温度や光を外側と完全に遮断し、均一な状態で野菜を育てているといいます。

更に、空気の温度や湿度、CO2濃度、風、あるいは光の量などをセンサーで計測し、野菜の異常を感知すると、独自の栽培理論を元に光合成に必要なCO2を増やした空気を送り込んだり、水に養分を多く流し込んだりして最適な環境を自動で整えます。

枯れるリスクが大幅に減るため、生産量は従来型の植物工場の2倍以上に高まるといいます。(同じ期間、面積での比較)

山田会長は次のようにおっしゃっています。

「(これを作り上げたのは、)元インクスで働いていた創業メンバーです。」

「インクスというのは、私が1990年に起業して、彼らは新卒で入って来たんですね。」

 

実は、彼らはインクスというという金型メーカーでの山田会長の元同僚なのです。

インクスは金型製造にITを取り入れ、当時の小泉総理も視察に訪れた注目企業でした。

しかし、2009年にリーマンショックの影響で経営破たんしてしまいました。

山田社長がインクスの民事再生の再生計画を担当して、最後に道をつけたのです。

山田会長は次のようにおっしゃっています。

「一緒にインクスをやってもらって、ある意味で一番辛いところを彼(山田社長)がやった。」

「(破たんして、)ぶらぶらして勉強中に、2011年頃、家庭用の小さい植物装置を作れば売れるかなと思ったんですね。」

 

しかし、200万円以上かけた栽培装置も失敗し、落胆していた山田会長のもとに、ある大学で画期的な植物工場の実現に成功したという情報が入りました。

山田会長は、インクスの元部下たちを連れてその大学を訪れました。

半信半疑で研究室の扉を開けると、皆驚きました。

そして、これは大きなビジネスになると確信しました。

一度会社を潰してしまった山田会長が躊躇する中、元社員たちは「起業しましょう、こんなチャンスはないですよ」と声を上げました。

これがプランテックス誕生に向けて動き出した瞬間でした。

それから山田会長たちは毎週末、CO2の量や気温の変化など、植物の成長に関する論文を引っ張り出して調べ始めました。

そして半年後、遂に野菜の大切な育て方の数式を完成させたのです。

その数式とは、およそ300の論文をつなぎ合わせたものでした。

山田会長は次のようにおっしゃっています。

「センサーで測った値がどこに影響しているか全部分かる。」

「(野菜が)CO2をどれだけ吸っているか、水をどれだけ吸い上げているか、どこをいじれば最適になるか分かるわけですね。」

 

この数式をもとに、更に4年間の開発期間を経て、ようやく野菜生産機が完成、現在大手スーパーや不動産会社から問い合わせが相次いでいるといいます。

そしてプランテックスは次の段階へと進んでいます。

訪れたのは、農業の研究などを進めるベンチャー企業、株式会社リバネス(東京都新宿区)です。

リバネス アグリガレージ研究所の宮内 陽介所長は、面談の場で次のようにおっしゃっています。

「(植物は)温度を高くすると香りが高くなるのかなというのと、日照時間というか、ライトを当てている時間を変えるとやっぱり香りに影響してきそうだな・・・」

 

この企業と野菜の味や香り、栄養を高める育て方を研究し、植物工場に生かそうとしているのです。

山田会長は次のようにおっしゃっています。

「次は3年後に“成分”や“味”がコントロール出来ていないと負けますよ。」

「(装置は)2万点の部品が入っているんですね。」

「自動車より複雑なんですね。」

「そういう複雑なものを日本の工業力を使って、日本の最も得意とする“生産機”の生産をやっていくということは世界一に絶対なれると思います。」

 

なお、今回ご紹介した植物工場、“野菜生産装置”はかなり大掛かりなので導入コストがかかりそうに見えますが、10台以上導入すれば採算が取れるだろうということです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

以前にもお伝えしましたが、植物工場は地球上のどのような環境の場所においても比較的簡単な装置で野菜などを育てることが可能です。

それでもコストに見合わなければその普及は期待出来ません。

番組でも伝えているように、58%の事業者が赤字だという調査結果があります。

そうした中、今回ご紹介した“野菜生産装置”は10台以上導入すれば採算が取れるといいます。

更に、プランテックスでは野菜の味や香り、栄養を高める育て方の研究に取り組もうとされています。

驚くことに、プランテックスでは野菜の大切な育て方のとても複雑な数式を完成させ、この装置には2万点の部品が入っているといいます。

ですから、是非モノづくりに優れた日本企業の長所を生かして植物工場の世界的な普及を目指していただきたいと思います。


 
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