5月18日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ東京)で葉山町によるユニークなSNSの発信について取り上げていたのでご紹介します。
情報発信にSNSを活用する自治体が全国で増えていますが、ターゲットとする若者に中々見てもらえないと悩むところも少なくありません。
こうした中、ユニークなSNSで人気を集めている町が神奈川県にあります。
画像共有アプリ、インスタグラムに投稿された1枚の写真、海沿いの町の日常風景に「たぬきもバスに乗りたいの?」という文章、「いいね」の数はなんと2000件以上です。
実はこれ、神奈川県葉山町の公式アカウント、人口3万3000人の町にも係わらずSNSのフォロワーは1万7000以上、自治体のアカウントとしては横浜市に次ぐ全国2位です。
SNSの投稿を任されている葉山町秘書広報係の宮崎 愛子さん(29歳)は、広報誌の制作などを担当してきました。
宮崎さんは次のようにおっしゃっています。
「広報誌・ホームページでは、若い方に情報が届いていないことがずっと課題で、元々町の魅力も若い人に本当に伝わっているのだろうかというのは思っていましたね。」
美しい海に面し、皇室の御用邸があることでも知られる葉山町、観光地としての人気は高いものの、鉄道の駅がない不便さなどもあり、近年は住民の高齢化も進んでいました。
こうした中、葉山町では、特に若い世代に住んでもらえる町としての魅力を発信したいと考えています。
葉山町の山梨 崇仁(たかひと)町長は次のようにおっしゃっています。
「(昔は)葉山は気品がある、しかしはやりの湘南地域というイメージがいっぱいあったんですね。」
「それがやっぱり今、私、去年大学で講義をしたんですけども、60人の学生のうち20人くらいしか“葉山”という名前を知らなかったとかですね、それこそ時代の変化を感じたんです。」
「これはまずいという危機意識が我々にはあって・・・」
そこで3年前、宮崎さんら若い職員で発信を始めたのが、若者に人気のSNS、しかし当初はほとんど見てもらえませんでした。
宮崎さんは次のようにおっしゃっています。
「最初は全く人気が出なくて、友達にフォロワーになって欲しいと声をかけたりとか、中々浸透しないのが1ヵ月、2ヵ月続きました。」
なぜ見てもらえないのか、SNSでフォロワーと呼ばれるファンを多く持つ人たちにアドバイスを求めたところ、指摘されたのは“お役所言葉”でした。
宮崎さんは次のようにおっしゃっています。
「“森戸海岸では綺麗な夕日が見られます”とか、(役所の)広報的な文章が多かったんですけど、それが“もうちょっと柔らかい、親近感がわく投稿にしたら”とか、どんどん変えていったかたちです。」
外国の雰囲気が漂うヨットハーバーの写真には「「ハワイなう」って、アリバイ写真に使っていい」、サーフボードを抱えて浜辺を歩くひとの写真には「大きな笹かまぼこだ〜」、キジの写真には「桃太郎待ちでーす」、道路標識には「あっち向いて・・・ホイ!」、ユニークさが人気を呼び、「いいね」やフォロワー数が急上昇、昨年、町がSNSのフォロワー向けに行った催しには、町外から多くの若い世代の人たちが訪れました。
SNS開始前は1年で100人近く人口が減った年もあった葉山町、しかしこの3年は毎年人口が増えており、町はSNSの効果ではないかと見ています。
宮崎さんは次のようにおっしゃっています。
「葉山の町を知ってもらうには、どうしても訪れてもらわないといけないとは思うんですけど、そのきっかけが作れたら、町としても魅力を持っていると思っていますので、来て下さった方に気に入ってもらって、何度も来ていただいているうちに、いつかは住みたいというふうに思っていただけるのが一番かなと思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通してまず感じたことは、何かを人に伝える際に、伝え方によって相手に関心を持ってもらえるレベルが変わるということです。
考えてみれば、ドラマや通販などテレビのコマーシャルもいかに見てくれている不特定多数の中のターゲット層の人たちの購入意欲を引き出すかに腐心しているのです。
最近ではSNSでフォロワーと呼ばれるファンを多く持ち、多額の収入を得ているブロガーと言われる人たちは新たな職業として確立されつつあります。
こうした人たちはテレビのコマーシャルと同様に、いかに多くの人たちの興味を引くかに腐心しているのです。
これも立派な能力だと思います。
葉山町では、まさにこうしたブロガーの知恵を拝借した結果、今ではインスタグラムの自治体のアカウントとしては横浜市に次ぐ全国2位といいます。
この3年は毎年人口が増えているといいますから、SNSの効果も少なからずあると思われます。
ということで、今更ながらですが、誰かに何かを伝えようとした場合、相手がどのような立場の人なのかを意識して、表現方法を工夫することがとても大切なのです。
最近、“限界集落”という言葉を耳にするようになりましたが、多くの地方自治体は少子高齢化による過疎化の進行に頭を悩ましています。
しかし、それぞれの地域には一つや二つは何かしら“行って見てみたい”と思わせるような場所があるはずです。
ですから、こうした観点で、自治体の広報係やブロガーの方々がより興味を持ってもらえるようなかたちで情報発信することが町の活性化、更には若い人たちの移住のきっかけにつながると思います。
実際に私も葉山町の公式ブログを拝見してみましたが、美しい景色が沢山あり、ドライブで行って見たいと心を動かされました。
ということで、今回ご紹介した葉山町の取り組みの事例はこうした可能性を教えてくれたのです。