2018年09月06日
アイデアよもやま話 No.4114 「記憶の移植」実現の道が開かれた!?

以前、No.3528 ちょっと一休み その565 『もはや不老不死も夢ではない!』で不老不死の可能性についてお伝えしました。

そうした中、5月15日(火)付けネットニュース(こちらを参照)で記憶の移植技術について取り上げていたのでご紹介します。 

 

記憶の移植は長らく典型的なSFのテーマでしたが、最近の研究によってそれが現実味を帯びつつあります。

 

米大学の研究者らはこのほど、海に住む軟体動物のジャンボアメフラシの個体から別の個体に、遺伝子のRNA(リボ核酸)を使い、記憶を移植することに成功しました。

 

研究者らはまず、ジャンボアメフラシに刺激に対する防御反応を起こす訓練を行いました。

その個体から取り出したRNAを訓練を受けていない別の個体に移植すると、刺激に対して訓練された個体と同様の反応を示したといいます。

 

米科学誌「eNeuro」に掲載された研究結果では、記憶を形作る物理的な仕組みについて新たな知識を提供する可能性があります。

 

高分子のRNAは、タンパク質生成や、遺伝子情報を形質に反映させるという、より一般的な働きを含む、生物上の仕組みにかかわっています。

研究者たちは、ジャンボアメフラシの尻尾に軽い電気ショックを与え、防御反応で体を縮ませるように訓練しました。

訓練されたジャンボアメフラシは、体を触られると約50秒にわたって収縮しましたが、訓練されていない個体が体を縮ませたのはわずか10秒程度でした。

訓練された個体は、電気ショックに敏感な状態になっているのが分かります。

紫の墨研究者らは電気ショックを与えられたジャンボアメフラシの神経からRNAを取り出し、訓練を受けていないジャンボアメフラシに移植いました。

そうすると、訓練されていない個体も体を触られると約40秒にわたって収縮するようになりました。

 

今回の研究の共同筆者、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のデイビッド・グランツマン教授は、研究結果は「記憶を移植したかのよう」だったと語りました。

 

グランツマン教授は、実験でジャンボアメフラシには危害を加えていないと強調しました。

「アメフラシの一種なので、危険を感じると、美しい紫の墨を出して捕食者から身を隠す。なので、危険を感じて墨を出すが、ショックによって身体的な損傷は加えられていない」。

 

長期記憶はこれまで、脳内の神経細胞同士の接合部にあるシナプスに蓄えられていると考えられてきました。

一つの神経細胞には数千のシナプスがあります。

 

しかし、グランツマン教授は、「もし記憶がシナプスに貯蔵されているのなら、我々の実験が成功するはずがない」と語りました。

 

UCLAで統合生物学を教えるグランツマン教授は、記憶は神経細胞の核に蓄えられていると考えている。今回の研究は、RNAが記憶にどう関与するかについて、従来の研究内容を補強する可能性があります。

 

 研究対象となったRNAの種類は、生物の成長や病気に関係する細胞のさまざまな機能の制御にかかわっていると考えられています。

 

アメフラシの神経細胞の数は約2万なのに対し、人間には約1000億あると考えられている。それでも研究チームは、アメフラシの神経細胞の細胞や分子の動きは人間に近いと指摘しています。

 

研究チームは、アルツハイマー病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の影響を軽減する取り組みに今回の結果が役立つと考えています。

 

研究結果が人生の記憶の移植にも役立つのかという問いには、グランツマン教授は明確に答えませんでした。

しかし、記憶の蓄積方法について理解が進めば、より多彩な形で記憶の様々な側面を調べられるようになると、期待を示しました。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

今回ご紹介した、アメフラシの実験により、「記憶の移植」技術の実現の可能性が見えてきました。

しかし、実際に人間への「記憶の移植」の実現までにはまだまだ相当な期間を要すると思われます。

それでも人間への「記憶の移植」の適用にはとても興味が湧いてきます。

 

そこで、「記憶の移植」が実現した場合、どのような可能性があるかを以下にまとめてみました。

・アルツハイマー病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、あるいは認知症の治療に役立つ

・優秀な科学者や芸術家、あるいは政治家、経営者などの「記憶」をAI(人工知能)に移植することにより、AIの深層学習(ディープラーニング)を更に加速出来る

・こうしたAIを活用することにより、誰でも自分の能力を格段に高めることが出来るようになる

・犯罪容疑者の記憶を外部の記憶装置に移植することにより、容易に有罪かどうかを判断出来る

・個人の記憶を定期的に外部の記憶装置に移植し、それを整理して取り出し易いかたちにまとめることで、自身の記憶を常に“見える化”状態で参照出来るようになる

・更に、研究が進めば、嫌な記憶を消し去ることも可能になる

・何らかの理由により他の人の「記憶」を覗き見ることにより、人間関係がぎくしゃくしてしまう可能性が出てくる

・人類全ての記憶を外部の記憶装置に移植することにより、人類の歴史そのものを丸ごと保存することが出来る

・自分の記憶をそっくり外部記憶装置に記憶させ、その記憶を取り込んだAIロボットが存在し続ければ、記憶を通してその人はあたかも永遠の命を手に入れたようになる

 

ということで、いずれあらゆる情報が蓄積され、政府による規制が無い限り、それを容易に参照出来るような社会になりますが、“知らぬが仏”という言葉があるように、なんでもかんでも知れた方が良いというわけではないのです。

また、「記憶の移植」と再生医療により物理的に永遠の命を手に入れられる時代になると、私たちは自ら自分の死を選択しない限り、永遠に生き続けることを余儀なくされるのです。

こうした状況が果たして幸せなのかどうか甚だ疑問です。

私たちは限りある命の中で暮らすからこそ、その制約の中で何かを成し遂げようとするからです。

永遠の命を手に入れたら、毎日ダラダラした暮らしになってしまうのではないでしょうか。


 
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