2018年09月02日
No.4110 ちょっと一休み その662 『なぜ”災害デマ”は広がるのか!』

最近、地球温暖化の影響なのか、台風や集中豪雨の発生回数が増えています。

また、記録的な被害をもたらしています。

そうしたたびに、大なり小なり“災害デマ”が話題になっています。

そうした中、6月23日(土)放送の「上田晋也のサタデージャーナル」(TBSテレビ)で、「なぜ”災害デマ”は広がるのか」をテーマに取り上げていたのでご紹介します。

 

6月28日(月)、7時58分に最大震度6弱を記録した大阪北部の地震、SNSを頼りに最新情報を求める人がいる中、ある人物が投稿した写真付きの情報が悪い意味で注目されました。

「大阪府北部で震度6弱でシマウマ脱走って。」

 

勿論これは全くのデマなのですが、このたった一人の流した情報は、地震の情報を集めていた人々の間で瞬く間に拡散されていきました。

地震による被害状況の確認に当たっていた大阪府警が注意を促す事態となりました。

しかし、デマを流した張本人は「お巡りさん捕まってニュースになったら楽しみだねw」と挑発して見せました。

 

2016年4月16日に発生した熊本地震でも心無いデマが相次ぎました。

「地震で動物園からライオンが放たれた」というデマを流し、動物園の業務を妨害したとして、神奈川県に住む20代の男が偽計業務妨害の容疑で逮捕されています。

写真とともに情報が一気に広がるSNS時代、デマの中には意図的にねつ造されたものや情報が誤って伝えられ、混乱を招くものがあります。

例えば、今回の大阪の地震では、通勤時間帯ということもあり、電車の中で揺れを感じた人も多かったのです。

そこで、「京阪脱線したとおもた」と京阪が脱線するほどの揺れを伝えたつもりが、その数分後には「京阪脱線しているらしい」、更には「京阪脱線」と、時とともに事実と異なる情報となって広がっていきました。

 

いったい、なぜデマはこのようにいとも簡単に拡散するのでしょうか。

“災害デマ”を生む2つの心理があるといいます。

災害時の情報伝達について研究する、東京大学大学院の関谷 直也准教授は次のようにおっしゃっています。

「災害時には多くの人が不安になりますし、多くの場合は情報が不足します。」

「そこの穴を埋めるように、間違った情報も伝わり易くなります。」

 

“不安を解消したい”、“不安な状況を共有したい”、こうした思いから、目新しい情報に飛びつき、事実確認もしないまま第三者に伝えたくなる、これが“災害デマ”の特徴だといいます。

もう一つ注意したいのが、受け取る側の善意に付け込むデマです。

今回の地震では、「大阪城の石垣が崩れて下敷きになってます。消防に119つながりません。助けて下さい!!」

使われた写真は大阪城ではなく、熊本城のものでした。

勿論これもデマでした。

関谷准教授は次のようにおっしゃっています。

「インターネット上では、善意の噂が広がり易いと言われていて、災害時も支援や救助に関する話題とか、「何とかに気をつけなさい」というふうなメッセージを持った噂や情報が流れやすい。」

「皆に「気を付けよう!」っていうようなメッセージを流すっていうことを多くの人が行います。」

 

「誰かの役に立ちたい」、広めて困るものではないという思いがデマの更なる拡散につながるのだといいます。

 

では、我々自身がどうしてデマを拡散してしまうのか、そのメカニズムを2つのポイントで見てみます。

まず1つ目は「不安共有型」です。

実際の例では、大阪地震の発生で、「震度6弱の地震で水や食料の買い占めが発生。」と言い切っていますが、実際にスーパーやコンビニの棚には何もない状況が起きていました。

しかし、買い占めが起きたわけではなくて、地震で配達が遅れてしまって棚に何もない状態だったのです。

ただし、それを確かめる方法もありませんでしたし、こうした情報を発信した人たちにしてみれば、デマを流そうとしたつもりもなかったようです。

 

そして、デマが拡散してしまう2つ目のメカニズムは「注意喚起型」です。

例えば、東日本大震災の時に、「原発事故に備えるために、“うがい薬”3滴入れた水を今すぐ飲め」というデマがSNS上で流れました。

このケースの場合は、誰かが流したデマがあっという間に広がってしまったのですが、その拡散のされ方が非常に興味深いものでした。

デマが流れた後に、訂正のツイート数がグンと伸びているのですが、その後訂正はほとんどツイートされず、デマばかりが定期的にツイート数が増えているという状況でした。

つまり、訂正を流しても1回のインパクトで終わってしまったのです。

 

ではどのようにこうしたデマを見極めるかですが、番組コメンテーターで流通経済大学教授の龍崎 孝さんは次のようにおっしゃっています。

「やはり発信元はどこなのかということを一歩立ち止まって突き詰めてみることは必要なのかなと思いますね。」

「東日本大震災の直後も、一番頼りになったのは印刷能力はないけれども手書きで書いた地元の新聞社の壁新聞であったり、印刷は出来ないけれども、たった1台動いているコピー機を使って印刷した、そのコピーの新聞を出した地元の新聞社、それを1枚ずつ配ってあげた。」

「やはり、信頼が出来る確認が出来る発信源、情報源なのかを突き詰めていくことが大事なことなのかなと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、その要点を以下にまとめてみました。

・デマが拡散してしまうメカニズムには、不安共有型と注意喚起型の2つがあること

・他にも、受け取る側の善意に付け込むデマに注意を要すること

・災害時には、デマ情報に踊らされず、特に情報の発信元が信頼出来るか確認を要すること

・自分の発する情報が結果としてデマである場合、その拡散により思わぬ混乱を社会に巻き起こす可能性があることに注意を払うこと

 

いずれにしても、災害時にはまず慌てないことを心がけることが必要なのです。

そのためには、いつ災害が起きてもいいように、日頃から最低限の食糧や飲料水などの確保をしておくことや、避難ルートの確認が必要なのは言うまでもありません。

更には、携帯電話やスマホのバッテリー用の充電機器も最新情報の入手や身近な人との連絡には欠かせないと思います。

また、最近の災害時の被害状況は、記録的な被害と報じられているケースが多いように、“想定外”がキーワードの一つになっています。

ですから、最悪の状況を想定した避難対策が求められるのです。

世界的に地球温暖化の進行を止められる気配は今のところありません。

ですから、今後とも更なる被害をもたらすスーパー台風や集中豪雨の発生を避けることは出来ないのです。


 
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