2018年09月01日
プロジェクト管理と日常生活 No.556 『劣化する官僚機構 その4 汚職がはびこる官僚組織!』

最近、報道も下火になってきましたが、いくつかの省庁における公文書を巡る大問題が多発していました。

そこで、ソフトウェア開発におけるプロジェクト管理の中の文書管理、および組織体制の考え方に照らして、劣化する官僚機構についていくつかの報道記事を通して4回にわたってお伝えします。

4回目は汚職がはびこる官僚組織についてです。

 

官僚による汚職と言えば、1998年に発覚したノーパンしゃぶしゃぶ事件とも言われている大蔵省接待汚職事件が有名です。

官僚7人の逮捕・起訴に発展し、この責任を取り三塚博大蔵大臣と松下康雄日本銀行総裁が引責辞任し、財金分離と大蔵省解体の一つの要因となりました。

その後も汚職は後を絶ちません。

 

以下は、ネット検索した結果の最近の関連記事からです。

文部科学省の私立大学支援事業をめぐり、同省科学技術・学術政策局長だった佐野太容疑者(7月4日付で大臣官房付)が、東京地検特捜部に受託収賄の疑いで逮捕されました。

佐野容疑者は、東京医科大学(東京都新宿区)から「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象選定で便宜を図るよう依頼された見返りに、今年2月、息子を同大に不正合格させてもらったとされます。(詳細はこちらを参照)

 

一方、8月4日(土)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)ではJAXA(宇宙開発研究機構)を巡る汚職事件について取り上げていました。

解雇された文部科学省幹部が贈賄側の元役員らから依頼され、昨年、大手流通会社などが開催した防災イベントにJAXAの宇宙飛行士を派遣出来るように、働きかけていた疑いが関係者の取材で新たに分かりました。

人気が高い宇宙飛行士の派遣は調整が難しいとされ、東京地検特捜部が詳しい経緯を調べています。

文部科学省の前国際統括官(局長級ポスト)の川端 和明容疑者(57歳)は、JAXAに出向中、医療コンサルタント会社に便宜を図った見返りに、元役員の谷口 浩司容疑者(47歳)からおよそ140万円相当の接待を受けたとして、7月に収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。

 

川端前統括官は、谷口元役員らから依頼され、一昨年11月に開かれた東京医科大学の講演会にJAXAの宇宙飛行士を派遣出来るよう、働きかけていた疑いがあることが分かっていました。

川端前統括官は、昨年8月に大手流通会社などが開催した防災イベントでも、元役員らから依頼を受け、別の宇宙飛行士を派遣出来るようにしていた疑いがあることが関係者への取材で新たに分かりました。

この大手流通会社は防災事業に積極的に取り組んでいて、谷口元役員らが「JAXAの人工衛星を利用した災害通信システムを導入出来る」などとこの会社に持ち掛け、JAXAとのつながりを強調して営業活動を進めていたということです。

人気が高い宇宙飛行士の講演などへの派遣は調整が難しいとされ、特捜部は一連の接待との関連や癒着の実態解明を進めています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

注目すべきは、今回ご紹介した両方の事件に、医療コンサルタント会社元役員というブローカー的な人物が絡んでいることです。

利権のからむところには必ずこうしたブローカーが暗躍する余地が出てくるのです。

 

企業からしてみれば、国への補助金申請を通り易くして欲しい、あるいは国の進める経済特区などの指定企業にして欲しい、など自社の経済活動に国から得られるだけの支援を引き出したいという意図があります。

そこで、国の政策の決定に関与する政治家、あるいは国の政策の実際の実行部隊である官僚には特定の企業などから誘惑、取り込みが様々なかたちで行われます。

今回ご紹介した2つの汚職事件は、医療コンサルタント会社元役員というブローカー的な人物が大学、あるいは企業と官僚との間を取り持ったかたちで起きました。

 

では、こうした汚職事件に対してどのような再発防止策が考えられるでしょうか。

以下に思い付くままに書き出してみました。

・汚職防止のための定期研修を全官僚を対象に実施すること

・各省内に汚職摘発のための第三者による監査組織を新設すること

・内部告発制度を新設すること

 

ここで注意すべきは、内部告発者に対する告発後の配慮です。

内部告発者に対する組織的な報復措置は、国に限らず企業などでも見かけられますが、このようなことがあっては、内部告発制度は実質的に機能しません。

ですから、万一こうした報復措置が取られても、それに対する内部告発者への支援措置が取られるような仕組みがとても重要になります。(企業の場合の内部告発制度については、プロジェクト管理と日常生活 No.426 『無くならない食品偽装のリスク対応策』を参照)

 

本来、ほとんどの官僚は“国民の公僕”として与えられた業務に忠実に取り組んでいると思います。

しかし、官僚の人事権を持っている政治家からの依頼があれば、それに対して真っ向から逆らうことは出世の道を絶たれることになるので、中々断りにくい状況にあります。

勿論、多くの政治家からの依頼は本来の政策を進めるためのものと思われます。

しかし、中には特定の企業などにメリットを与えるような汚職につながる依頼もあり得るのです。

そこで、こうした依頼が発生した場合、真面目な官僚であればあるほど、思い悩み、最悪の場合は自殺にまで追い込まれてしまうのです。

前回お伝えした、森友学園問題での近畿財務局職員による自殺はその一例ではないかと思います。

このような悲劇はあってはならないのです。

 

また、官僚と言えども“人の子”ですから、民間からの様々な誘惑には負けてしまいそうになると容易に想像出来ます。

そうした時に、汚職に手を染めた場合にどのような罰則を受けてしまうのかをはっきりと自覚出来たり、汚職が発覚し易い環境であれば、抑止効果が働きます。

 

ですから、是非先ほどお伝えした3つの再発防止策の検討を速やかに進めていただきたいと思います。

 

さて、再発防止策というような固い話をしてきましたが、本来、政治家が誰でも納得するような国の目指すべき重要な政策を打ち出し、それを官僚に指示すれば、官僚はその優れた能力で最大限にその達成を目指して打ち込んでくれるはずです。

また、政治家が政策を検討する際にも積極的に官僚の知識を活用しようという雰囲気が伝われば、より良い政策の検討につながるはずです。

ですから、政治家は、一方的に官僚に対して人事権を振りかざして指示するだけでなく、官僚の優れた能力を引き出して活用していただきたいと思います。

政治家が自己の利権に結びつくような政策実現のために官僚を自殺に追い込むような事態を引き起こすようなことは絶対にあってはならないのです。


 
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