4月29日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)で”地方発”の宇宙開発について取り上げていたのでご紹介します。
今、民間による小型ロケットを使った宇宙開発が世界的に進んでいますが、このように機器の小型化に伴って、今地方の中小企業に宇宙開発に挑戦出来るチャンスが広がっています。
地方から宇宙を目指す、山形県にも人工衛星に搭載する小型カメラの性能の高さで世界から注目される中小企業があります。
2016年、アメリカの会社が打ち上げたロケットから宇宙空間に放出された、地球を観測するための超小型衛星には4つの小型カメラが搭載されていました。
カメラの心臓部はわずか5cm、価格は30万円、安価ながら極めて高い性能で、今世界から注目されています。
このカメラを開発したのは山形県鶴岡市の田園地帯にあるワテック株式会社です。
創業30年、従業員は50人あまりで、街灯やクルマに設置する監視カメラを開発してきました。
今、宇宙用カメラの開発で先頭に立っているのが28歳の原田 純平さんです。
原田さんは次のようにおっしゃっています。
「カメラというのは、超小型衛星の中でもミッション機器と言われる最重要な部品の一つなんですけども、専門的にやっている我々がカメラを開発することによって宇宙開発に貢献出来るんじゃないかなと考えました。」
この会社のカメラが人工衛星にも採用される理由は、高い感度と鮮明な画像です。
会社の中に作ったジオラマで、照明を落として真っ暗にすると、一般的なカメラは暗がりで画像が荒くなります。
一方この会社のカメラは、建物やクルマのかたちもはっきりと分かります。
原田さんは次のようにおっしゃっています。
「通常のカメラですと暗くした時にノイズが乗ってしまうんですけど、我々のカメラは出来るだけノイズを少なくする・・・」
高い性能を実現したのは、監視カメラの開発で30年積み重ねてきたノウハウです。
暗闇の中でもくっきりと光を捉えられるように、絞りや色味など50にのぼる項目について最適な条件を探ってきました。
更に捉えたわずかな光を乱れなく電気信号に変換出来るように電子部品の改良を続けてきました。
原田さんは次のようにおっしゃっています。
「有名どころですと、アメリカのNASAだったりFBI、フランスのルーブル美術館、世界各国に我々は供給しています。」
このカメラ、人工衛星に搭載していることで、農業など様々な分野での応用が期待されています。
広大な緑地を撮影した画像に特殊な処理をすると、赤い部分は植物の成長が良いところ、青い部分は成長が悪いところです。
植物が光合成を盛んに行うと特定の光を吸収することに着目した判別方法です。
これにより広い農地を見回らなくても、農作物の育ち具合や病気の有無が簡単に分かるようになると期待されています。
安価で高精細なカメラは宇宙開発のすそ野も広げています。
ある日、静岡大学などのグループが訪れました。
この会社のカメラを超小型衛星に搭載し、宇宙空間から星空を観測する“宇宙望遠鏡”にしようとしています。
静岡大学工学部の能見 公博教授は次のようにおっしゃっています。
「今回ワテックさんの開発されたカメラで撮ると、星が結構写るんですね。」
「宇宙でもしっかり動いてくれるんじゃないかなと期待しています。」
民間による宇宙開発が世界で加速する今、原田さんは、地方の中小企業にとってビジネスチャンスが大きく広がっていると感じています。
原田さんは次のようにおっしゃっています。
「宇宙っていうと、自分たちを遠い、違うことに感じるんですけど、意外に我々が作っている製品が関わっていて、今後も生産拠点を山形に置いて、山形で開発したものを世界に展開していきたいと思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今回ご紹介したワテックの事例は、以下の観点から日本の中小企業のあるべき姿の一例と言えます。
・監視カメラの開発で30年積み重ねてきたノウハウがあること
・小型カメラの性能の高さで世界的に注目されていること
・宇宙開発や農業など様々な分野での応用が期待されていること
・山形県の田園地帯に本社を構えていてもグローバルな事業展開を出来ること
今や、ヒト・モノ・カネや情報などあらゆるものがグローバル化されており、またテクノロジーの進歩とともに新たなビジネスが生まれ、それに伴いこれまである分野でのみ使われていた技術が別の分野からも脚光を浴びる可能性が出て来ています。
ワテックはまさにその申し子と言えます。
既存の小さな企業、あるいはベンチャー企業にはヒト・モノ・カネの面で制約があります。
ですが、創業者にはそれぞれに思い描いている夢、そしてそれを実現したいという強い想いがあるはずです。
そして、こうした数多くの企業の持つテクノロジーの組み合わせから新たなビジネスが生まれるのです。
ですから、特に国にはこうした企業が活動し易い環境を整備するために最大限の取り組みをしていただきたいと思います。