2018年08月19日
No.4098 ちょっと一休み その660 『地球上で持続可能な社会を実現する上で参考にすべき火星移住計画!』

これまで火星移住計画については、アイデアよもやま話 No.3471 火星有人探査が2024年に実現!?No.3954 ちょっと一休み その636 『スペースXの壮大な計画 その1 火星移住計画の最新情報!』などでお伝えしてきました。

そうした中、6月30日(土)放送の「地球ドラマチック」(NHKEテレビ)でも火星移住計画について取り上げていました。

そこで、今回は地球上で持続可能な社会を実現する上で参考にすべき観点に焦点を当てて火星移住計画についてご紹介します。 

 

人類は常に限界に挑んできました。

月面に刻んだ一歩は見果てぬ夢への扉を開きました。

そして、科学者たちは途方もない挑戦に乗り出しました。

赤い惑星、火星に人類を送ろうというのです。

2020年代半ばには火星に行けると言う専門家もいるように、近い将来、火星への移住は現実のものとなりつつあります。

アメリカの宇宙ベンチャー、スペースXを創業したイーロン・マスクCEOは次のようにおっしゃっています。

「40年から100年後には、人類は火星で自立した生活が出来るようになるはずです。」

 

近い将来、人類は火星に向かう壮大な冒険の旅に出るでしょう。

そして、その旅の成功は、膨大、かつ緻密な準備にかかっています。

 

しかし、健康な状態で火星に到着出来たとしても、宇宙飛行士はそこから2年間、自分たちで持ち込んだ装備だけで生きていかなければなりません。

必要なモノを全て持ち込めない中、どうすれば火星で酸素や水、食料を供給出来るのでしょうか。

 

カギを握るのが、シアノバクテリアの一種、スピルリナと呼ばれる緑色の藻の仲間です。

光合成により大量の酸素を生成することが出来ます。

現在、ヨーロッパ宇宙機関(スペイン)では、スピルリナを使って画期的なリサイクルループの実験が行われています。

プロジェクト責任者、クリストフ・ラッスールさんは次のようにおっしゃっています。

「宇宙飛行士が出すCO2や糞尿、あるいは台所のゴミなどを回収し、それらを変換させて、植物の栽培に利用します。」

「育った植物は勿論食糧になります。」

「トマトやビーツ、レタスなどです。」

「同時に、植物は光合成で酸素を生成します。」

「水も作り出せます。」

「つまり、私たちは密閉された空間に小さな地球のような人工的な生態系を作ろうとしているのです。」

「シアノバクテリアは反応が速いので有利ですね。」

「植物は1世代が育つのに数週間かかるけど、シアノバクテリアなら数分ですから。」

「これならなら乗組員の必要に応じて短時間で酸素の生成量を調整出来ますね。」

 

今回の実験における乗組員はラットです。

スピルリナが生成する酸素のお蔭で密閉装置の中でも全員すこぶる元気です。

こうした素晴らしいシステムによって、様々な惑星探査の道が開かれます。

海から生まれたシアノバクテリアのお蔭で、乾いた惑星、火星に人類が住めるようになるかもしれません。

温室で育つ様々な野菜は、宇宙飛行士の食糧となるだけでなく、飛行士が排出するCO2をリサイクルします。

ラッスールさんは次のようにおっしゃっています。

「これなら乗組員が食べる野菜を毎日供給出来ます。」

「水も1日に4リットル生成することが出来ます。」

「宇宙飛行士が必要とする3リットルを上回る量です。」

「水質は調べなくてはなりませんが、量としてはまずまずです。」

 

酸素、水、食べ物、どれも欠かすことは出来ません。

しかし、宇宙で暮らすにはもう一つ壁があります。

それは宇宙線という放射線にさらされることです。

命の危険から身を守るには、窓もない洞窟のような部屋に身を潜めるか、保護してくれるシールドが必要です。

しかし、火星に持っていける建築資材は限られています。

火星での理想的な住環境を考えるため、宇宙での建築を専門とする建築家たちが独創的で革新的な解決策を探そうと力を合わせています。

建築家のジェフリー・モンテスさんは次のようにおっしゃっています。

「人類は火星を目指しています。」

「火星で外の景色を見られないなら、そんな所へ行きたいでしょうか。」

「地下室のような家で、他の乗組員と小さな窓を共有しなければならないなら、火星にやってきた意味を感じないと思います。」

 

火星の建物は現地で調達出来る資材で建設する必要があります。

チームは、火星の岩石ではなく、地表の下に膨大にある氷を使い、3Dプリンターで建築する案も考え出しました。

チームが考案した氷の家はNASAが主催したコンテストで優勝しました。

まるでSF小説のようですが、氷の家のコンセプトは将来的に火星の基地を保護する手段として、宇宙機関が真剣に検討中です。

人類が火星で暮らす未来を実現するには、想像力豊かな人々とエンジニアとの協力が不可欠なのです。

 

では、火星に上陸を果たしたとして、3年に及ぶ孤立した生活に耐えられるのは、果たしてどんな人なのでしょうか。

ハワイ、マウナロア火山の傾斜地に立つドームで、何人かの科学者が生活しています。

ドームは直径11m、科学者たちは1年間外界から完全に隔離されて暮らします。

火星に行くのに最適な人物像を探るため、NASAがハワイ大学の協力を得て行う実験です。

時には何日も外に出られず、日々認知力と感情の変化をテストします。

外界から隔離されることで、精神にどう影響するかを調べるためです。

被験者たちはメールを通じてコントロールセンターと連絡を取ります。

外界と直接連絡を取ることは出来ません。

地球と火星との間の通信では最短でも40分のタイムラグがあるためです。

また、被験者はそれぞれ各自で持ち込んだ研究を行います。

例えば、土を使わない水耕栽培によるレタスづくりや生物学の実験など様々です。

 

人間が火星で暮らすようになった時、宇宙飛行士たちは孤立した生活にどうやって耐えるのでしょうか。

精神のバランスを崩しても不思議ではありません。

何年もかけて集められたデータのお蔭で、将来火星に送る乗組員に相応しい人物像が明らかになりつつあります。

それは、個人の集まりというよりは、緊密に結びついた一つのチームであること、何が起ころうと、あらゆる状況に全員が一丸となって対処する必要があるからです。

人類は将来、間違いなく火星に住むことになるでしょう。

人間が酸素と食糧を生産する傍らでロボットが火星を調査しているでしょう。

火星は今、かつてないほど地球に近い存在となっているのです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

番組を通してお伝えしてきたように、火星移住計画を進めるにあたって水、空気、食料、および住環境の調達が人類の生存に必須です。

しかし、“人はパンのみにて生きるにあらず”という言葉のとおり、これらの要件を満たすとともに、人の精神のバランスを維持することも求められます。

こうした全ての要件が満たされることによって、火星移住計画は成功するのです。

また、火星移住計画の成功は、他の惑星への移住の可能性を検討する際にも大いに役立つはずです。

火星移住計画は人類が“宇宙人”になる第一歩と言えます。

ですから、火星移住計画は人類の月着陸とともに人類史上画期的な出来事になることは間違いありません。

 

さて、火星移住計画に向けての様々な研究開発は、実は地球上における“持続可能な社会”の実現もに大いに参考になるのです。

というのは、地球温暖化の進行とともに、世界的に集中豪雨やスーパー台風などの発生の頻度が増え、しかもその規模も大きくなると見込まれています。

ですから、今年は世界的に異常気象が発生していると報じられていますが、異常気象が通常の気象になってしまいつつあるのです。

そして、地球温暖化はCO2の排出量を増大する人類の活動が自ら招いているというのが多くの専門家の見解です。

 

ところが、火星移住計画の本質は、どんな環境においても“持続可能な社会”を作ることなのです。

ですから、火星移住計画の本質を早期に地球上に暮らすより多くの人たちが取り入れた生活にシフトさせることによって、地球温暖化を阻止することが出来るのです。

そればかりではありません。

今は地球温暖化阻止が人類共通の大きな課題となっていますが、地球はかつて“全球凍結”(参照:アイデアよもやま話 No.2717 地球が再び全球凍結を迎えたその時、人類は・・・)と言われた時期が何度かあったように、長い歴史の中で見れば、地球の環境は人類の活動とは無関係に大きく変貌するのです。

更には、惑星の衝突などにより、全ての生物が生存の危機を迎える可能性もあります。

そうした場合の人類が取るべき選択肢として、そのまま地球上で暮らすか、あるいは他の惑星に移住するかという2つがあるのです。

どちらを選択するにしても、火星移住計画の成功は人類の生存にとって極めて重要な意味合いを持っているのです。

 

ということで、火星移住計画は是非成功させていただきたいと思います。


 
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