6月24日(日)放送の「世界遺産」(TBSテレビ)で中国南部の地球環境を守る奇岩について取り上げていました。
今回は、石灰岩が地球を守っているという箇所に焦点を当ててご紹介します。
番組では、2007年に絶景の世界遺産として登録された、桂林をはじめとする中国の南部カルストの美しい奇岩地帯を映し出していました。
三角形のかたちをした美しい山々、一方で荒々しい景色が広がる場所もあります。
実は、こうした様々な絶景を生んだ石灰岩が地球を陰ながら守っているというのです。
南部カルストから見つかるのがサンゴや貝殻の化石です。
かつてこの一帯が海の底だったことを教えてくれます。
海底が地殻変動で隆起し、広大な石灰岩の大地になったのです。
実は、その台地が地球を守っているといいます。
重慶市にある金仏山(世界遺産)の洞窟にある石灰岩の成分を中国の地質学者が調べてみると、この洞窟のCO2濃度は314PPMでした。
この石灰岩に酸性の液体をかけると、溶けて泡が発生しました。
そして、CO2濃度は314PPMから545PPMに上昇しました。
石灰岩にはCO2が含まれています。
このことが地球の生態系にとって非常に重要なのです。
太古の地球はCO2で覆われていたため、気温が高く灼熱の星でした。
その後、CO2は海に溶け込み、サンゴや貝に吸収されたり、カルシウムと反応して固まったりしました。
それらが堆積して出来たのが石灰岩です。
石灰岩が増え、大気中のCO2が減ることで、地球は冷えてきました。
金仏山の石灰岩を調べた地質学者は次のようにおっしゃっています。
「計算によると、金仏山全体の石灰岩に含まれるCO2は6600億トンです。」
「それが全て大気中に放出されたら、地球全体の気温が0.8℃ほど上がると考えられています。」
もし南部カルストのCO2が全て放出されたら、地球の気温は大幅に上昇するとされます。
つまり、石灰岩が温暖化を防いでいたのです。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組を通して、石灰岩が地球を守っているメカニズムについて以下に整理してみました。
1.太古の地球はCO2で覆われた灼熱の星であった
2.CO2は海に溶け込み、サンゴや貝に吸収されたり、カルシウムと反応して固まり、それらが堆積して石灰岩が出来た
3.石灰岩が増え、大気中のCO2が減ることで地球は冷えてきた
こうしてみると、なぜ太古の地球はCO2で覆われていたのか、そしてなぜ海が出来たのかというように新たな疑問が出てきます。
しかし、いずれにしても海が今の地球環境にとっていかに重要な存在であるか、そして石灰岩が灼熱の地球環境を今のような私たち生物の暮らし易い温度に下げてくれたことに大いに貢献してくれたことが分かります。
それにしても、中国の金仏山全体の石灰岩に含まれるCO2が全て大気中に放出されたら、それだけで地球全体の気温が0.8℃ほど上がるということ、更に南部カルストのCO2が全て放出されたら、地球の気温は大幅に上昇するという予測は石灰岩が温暖化を防いでくれていることを実感出来ます。
こうしてみると、海や石灰岩に対する見方が変わってきます。
特に海は単に美しいだけでなく、私たち生物にとってかけがえのない存在なのです。
さて、こうした地球の素晴らしい環境に対して、私たち人類は自らの暮らしの豊かさのために、大気中のCO2を吸収して酸素を供給してくれる森林を破壊する一方で、石炭や石油、天然ガスという化石燃料を大量にエネルギーとして使用し、地球温暖化に影響を与えてしまうほどに大量のCO2を大気中に排出しています。
ですから、悠久の地球の歴史からみると、18世紀の産業革命以来、せいぜい数百年の間の人類の活動がいろいろな面で地球の環境を破壊してしまうリスクが非常に高いのです。
また、こうした人類の活動により多くの生物が既に絶滅したり、絶滅の危機に瀕しているのです。
遅ればせながら人類はこのことに気付き、今、世界規模で地球温暖化対策に取り組んでおります。
私たち人類は“地球の住民”として、一人ひとりがかけがえのない地球の環境をこれ以上破壊しないように暮らすことにもっと“気配り”をしなければならないのです。