リーマンショックなどの金融危機は経済のみならず、私たちの暮らしにも大きな影響を及ぼします。
そうした中、4月3日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で金融危機は10年周期であることについて取り上げていたのでご紹介します。
アメリカのダウ平均株価のここ40年ほどの動きを見ると、ほぼ10年周期で株価が大きく下落していることが分かります。
まず1987年のブラックマンデーでは、株価が1日に2割以上下落しました。
アメリカの財政と貿易収支、双子の赤字への心配が株安の引き金になりました。
そして2000年にはITバブルの崩壊です。
また2008年にはリーマンショックが起きました。
背景にあるのはアメリカの不動産バブルの崩壊でした。
ちなみに、リーマンショックについては、これまでプロジェクト管理と日常生活 No.361 『あらためて感じるリーマンショックの罪深さ』などで何度かお伝えしてきました。
こうして見てくると、金融危機の要因は様々です。
ここで気になるのは、今年2018年は2008年のリーマンショックから10年目ということです。
そして、今年2月からは株価がグンと下落しています。
そうなると、この10年の節目、今は新たな危機が起こるリスクは何でしょうか。
次の危機の予兆はないのか、番組では世界で最も巨額のマネーを動かす人物に取材しました。
ニューヨークの一等地にそびえ立つ巨大なビルに運用会社ブラックロックの心臓部ともいうべき広大なトレーディングフロアがあります。
その運用資産はなんと約700兆円と世界最大です。
日本の国家予算のおよそ7倍に相当します。
今回、このブラックロックを率いる人物が番組の取材に応じてくれました。
現れたのは、ブラックロック創業者のラリー・フィンク会長です。
世界の金融界に強い影響力を持つ人物です。
リーマンショックから10年、アメリカが再び金融危機に直面する可能性についてフィンク会長は次のようにおっしゃっています。
「金融危機(リーマンショック)は皆にとってショックでした。」
「市場はバブル状態だというのはかねてから言われていましたが、はじけた時にここまで大きなものになるとは予想していませんでしたね。」
「リーマンショックで我々は大きく変わりました。」
「金融市場の構造的なリスクは10年前に比べて低くなったと思います。」
「規制当局は銀行の合併を促したり、規制を強化したりしました。」
「この10年間に市場がこれだけ大きく成長したことを見ると、金融システムは格段に安全になったと言えるのではないでしょうか。」
「(リーマンショックのような金融危機は再発するかという問いに対して、)そうは思いません。」
「サブプライムローンのような不良債権は今はないからです。」
「(今後のアメリカ経済について、)大型減税と巨額な政府予算によって、経済は加速して行くと見ています。」
「2018年から2019年にかけて3〜3.5%程度の経済成長を見込んでいます。」
「(ただ、2月には株価が一日で1000ドル以上下がるなど、市場は不安定さを増していますが、これについて、)不安定さが増したのは市場に資金が投入され過ぎていただけのことです。」
「私からすれば、株価が10%下がるなんてよくあることで、景気が大きく変わったとは思っていません。」
「しかし、本当の変化は1年から2年後に起こると見ています。」
「その転換点を注視しています。」
これについて、解説キャスターの滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「フィンクさんが中長期的に重視しているのは、リタイヤ(退職)する人が増えるという、人口動態の問題なんですね。」
「ただ、今の景気や株価で見てみると、景気や株価には寿命があります。」
「だいたい9年間にわたって景気拡大、株価上昇が続いていますので、そろそろ調整局面を迎えてもおかしくないという見方は十分あると思いますね。」
では、何が次の金融危機のきっかけになるかですが、一様に政治リスクを気にしています。
フィンク会長は「輸入制限には反対」、ニューヨーク証券取引所のトレーダーは「市場はワシントンに恐怖感」、S&Pのボビーノさんは「貿易戦争は企業を委縮させる」という声が多いといいます。
これらはまさに“トランプリスク”です。
ところが肝心のトランプ大統領はこれらの声に対して“馬耳東風”で3月2日のツイッターに次のように書き込んでいます。
「Trade wars are good,and easy to win.(貿易戦争はいいことだ、簡単に勝てる。)」
さて、こうした状況下における政治リスクについて、番組コメンテーターで日本総研の名誉理事長、高橋 進さんは次のようにおっしゃっています。
「Trade warsですから複数(の国)なんでしょうけども、とりわけ米中戦争が怖いですね。」
「経済戦争になりますよね。」
「最初は関税の報復とかやっていますよね。」
「でもエスカレートしていったら、多分中国は「アメリカの国債を売るぞ」とか脅しをかけると思うんですね。」
「そうすると政治リスクが一気に金融リスクに変わる危険性もあります。」
「それからその先に、これから先ってITとかAIを巡る“覇権争い”みたいなものが米中間で相当激しくなってくる。」
「その時に、トランプという人はITとかAIにすごい冷たい人ですよね。」
「一方で中国の方はIT、AIこそが自分たちの生き残る道だと思っていますから、もしこんなところで戦い始めたらお互いに多分譲らないことになると思うので怖いと思いますけどね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
よくバブルは、崩壊してみて初めて「あの時がバブルだったのか」と分かると言われています。
また、金融危機の要因は様々で、その時々の経済をけん引するテクノロジーやサービスがその限界を迎えた時点で起きると言います。
ですから、金融などのバブルの崩壊時期を正確に予測することは出来なくても、崩壊のリスクが高まりつつあるということは予測出来ます。
そして、その目安がほぼ10年周期だということなのです。
一方、こうした周期とは別に、例えば中国によるアメリカの国債の売却、あるいは突発的なきっかけで石油価格が暴騰したり、世界的な影響を大きく与えるほどの政治判断の誤りや紛争の勃発など、突発的な要因によって起こるクライシス(破たん)もあります。
今回ご紹介した人口動態の問題や“トランプリスク”もその一つだと思います。
こうしたことから、過去にどのようなバブル崩壊やクライシスがあったか、あるいは今後のバブル崩壊やクライシスをもたらす可能性の要因をたえずチェックしつつ、そのリスク対応策を検討しておくことが企業としての存続をより確実なものにすることが出来るのです。
ということで、企業のみならず国や個人として、また管理の対象がどんなものであれ、こうしたリスク管理が求められるのです。