4月16日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で企業買収もネットで出来る時代について取り上げていたのでご紹介します。
洋服や食品などをインターネットで購入するのは既に当たり前になっています。
ところが今、百万円、あるいは千万円など桁の違う単位で企業の売買がインターネットで行われるようになっています。
ここ半年でインターネットでM&Aを扱う会社も増えてきており、その専門の会社まで登場しています。
中小企業のM&Aを仲介する日本M&Aセンターが4月にオンラインのサービス会社、アンドビズ株式会社を設立しました。
そのサービスとは、小規模企業に特化したオンラインM&A、インターネットのサイト上で売り手と買い手をマッチングさせようというものです。
例えば、新潟県にある割烹料理店、譲渡希望価格は750万円、ただ紹介するだけではなく、契約書の書き方まで備わっています。
日本M&Aセンターで4年間の実証実験を行い、新会社の設立に至りました。
その背景には、後継者不足で廃業に追い込まれる企業が急増していることがありました。
アンドビズの大山 敬義社長は次のようにおっしゃっています。
「新しい事業を開いてみよう、あるいはイノベーションを起こしてみようという若い人たちは物凄く多いです。」
「例えば、後継ぎのいない会社が127万あったとして、言い方を変えれば、彼らに用意されているM&Aの在庫は127万あるっていうことなのです。」
「一から始めなくても自分が独立して開業することが出来る。」
4年間の実証実験の中で、M&Aに成功した会社があります。
石川県金沢市にある広告デザイン会社のAMDです。
社員は若い人ばかりですが、この会社が買い取ったのは漬物会社で、譲渡希望価格は500万円未満で売りに出されていました。
この漬物会社が作っていたのは石川県名産のこんかこんかです。
サバをぬか漬けにした、こんか漬けという伝統の保存食です。
ADMの千布 真也社長は次のようにおっしゃっています。
「もともと売れていた商品ではありますので、一番はこの事業がちゃんと継続出来るようになるのかどうか・・・」
「実際にモノを作る会社さんと一緒に取り組みをするということは、これからの流れになっていくと思いますし、日本の大事な技術がしっかり残っていくというような座組が作っていけるんじゃないかなというふうに思っています。」
広告業が頭打ちになる中、地域と結びつく新事業を立ち上げたかったという千布社長、
そこで目を付けたのが伝統的なこんか漬けでした。
ADMの社員でこんか漬けという新規事業を任された中神 遼さんは次のようにおっしゃっています。
「すごいやりがいは感じますね。」
「継承していくために、まずは金沢市民、石川県民ていう人たちに向けてもっと土着させていきたい・・・」
一見便利にも思えるオンラインM&Aですが、有利な点ばかりではありません。
アンドビズの宮原 弘樹さんは、富山市にある会計事務所からある相談を持ち掛けられていました。
実は、ここ半年でオンラインM&Aを扱う会社が増えています。
税理士で木林会計事務所勤務の岩瀬 世二さんはいろいろなサイトを使っていますが、あるサイトを使ったところ問題が浮上していました。
「如何せん、会社を売る案件の情報ですから、社長さんは(会計事務所も含めて)一切誰にも相談出来ない。」
社長が本当に売りたいのか、本気度が分からないといいます。
また、オンライン特有の匿名でやり取りしてくる場合は、更に困るといいます。
岩瀬さんは次のようにおっしゃっています。
「目に見えない関係なので、いいことばかり言ってきます。」
「押さえなければいけない論点を質問させてもらうんですけども、その辺についても結構グレーな回答だったり、・・・」
そういったトラブルに対して、アンドビズの宮原さんは次のようにおっしゃっています。
「(多くのサイトが)売主さんが売りたいと言ったら、自分で考えて(買い手側と)やり取りする。」
「全部自分で考えるだけという仕組みしかそもそもないんですけども、そこに我々はアドバイザーがいらっしゃるので相談出来るネットワークがそもそもあるので・・・」
アンドビズは全国75の金融機関と732の会計事務所と連携し、成約に至るまでの仲介役を付けるなどの作業を行います。
アンドビズの大山 敬義社長は次のようにおっしゃっています。
「私どもが目指しているものは、相手を見つけるサービスだけではなくて、きちんと最後まで成約するサービス。」
「現在500〜600の案件を持っていますが、これが10倍くらいの規模になるのかなと。」
番組では、デューデリジェンス、すなわち買収前に行う買収対象企業の資産内容の査定の重要性を指摘しています。
そして、アンドビズがデューデリジェンスを実施した会社のみをサイトに上げるようにしているということですので、今後サイト運営者の信頼性が問われるといいます。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
現在、少子高齢化に伴い、経営者の高齢化で、しかも後継ぎがいないといった理由で廃業に追い込まれる小規模企業が急増していると話題になっています。
せっかく長年積み上げてきた技術力のある企業や魅力的な商品を提供している企業がこうした理由で廃業に追い込まれてしまうのは国家的にも大きな損失です。
一方、アンドビズの大山社長のおっしゃるように、新しい事業を始めてみたいと思っている若い人たちも沢山いるといいます。
ここでこうした売り手の企業の悩みを以下にまとめてみました。
・経営者は表立って相談しにくい
・具体的にどのような処理プロセスを踏めばいいか分からない
次に中でも経験のない、あるいは経験の浅い買い手の悩みを以下にまとめてみました。
・売り手企業の正確な情報を入手しにくい
・具体的にどのような処理プロセスを踏めばいいか分からない
・具体的な経営の進め方、あるいは資金調達をどうすればいいか分からない
・一緒に事業を進める仲間を探したい
次にこうした売り手と買い手の悩みを解決してくれるサービスの要件を以下にまとめてみました。
(売り手と買い手の両方に対して)
・紹介のみならず、契約書の書き方までアドバイスする
・金融機関や会計事務所と連携し、成約に至るまでの仲介役を付ける
(買い手に対して)
・事前にデューデリジェンス済みの案件のみを紹介する
・売買契約完了後の経営アドバイス、あるいは資金調達支援といったサービスを提供する
・一緒に事業を進める仲間との仲介サービスを提供する
そうした中、小規模企業に特化したオンラインM&A、すなわちインターネットのサイト上で売り手と買い手をマッチングさせるサービスはこうした問題を解決するうえでとても便利です。
更に、先ほど示した売買契約完了後の経営アドバイス、あるいは資金調達支援といったサービス、そして一緒に事業を進める仲間との仲介サービスも合わせて提供することによって、更にM&Aの成功をより確かなものにすることが出来ると思います。
さて、今回ご紹介した小規模企業のオンラインM&Aサービスは、地方の活性化にもつながります。
同時に、新たな働く場を提供することにもなります。
というのは、特に地方には事業継続の悩みを抱えている小規模企業が多いからです。
同時に、事業継続には新たな従業員が必要だからです。
更には、止む無く会社を売ることになってしまった経営者やその従業員にとっても、移行期間だけでも、あるいはその後も働き続けることが出来れば、まさに“三方良し”です。
ということで、今回ご紹介したようなオンラインM&Aサービスの扱う範囲を広げて、特に買い手の立場で事業を継承した後もスムーズに事業を進められるようなシステムが構築出来れば、地方の活性化、および新たな雇用の創出につなげることが出来るのです。