2018年08月02日
アイデアよもやま話 No.4084 尿によるがん検査の最新事情!

これまでがん検査については、アイデアよもやま話 No.3889 画期的な世界最先端のがん検査!などでお伝えしてきました。

そうした中、4月16日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で 最新の尿によるがん検査の実証実験について取り上げていたのでご紹介します。

 

日本人の死亡原因の1位となっているがんは、早期発見が重要と言われています。

ところが、がん検診の受診率は思ったほど伸びていないのが実情です。

例えば、肺がんの受診率は男性が51.0%、女性は41.7%、そして胃がんの受診率は男性が46.4%、女性は35.6%、そして大腸がんは男性が44.5%、女性は38.5%でした。

ほとんどが50%以下に止まっていて、特に女性の受診率が低い傾向にあります。

その理由は、面倒であるとか、内視鏡やバリウム検査など、苦痛、あるいは負担を伴うので嫌だという意見があります。

 

こうした中、尿1滴でがんかどうかを判定出来るという画期的な研究が大企業、そしてベンチャー企業により進んでいます。

日立製作所研究開発グループの坂入 実さんは次のようにおっしゃっています。

「世界中で次世代がん検査技術のいろいろな競争が行われています。」

「その中で、我々はどちらかというと(尿中の)代謝物に着目をいたしまして解析をしようと。」

 

4月16日、日立製作所が発表したのが、尿を使ったがん検査です。

検査に必要な尿はわずか1滴、尿に含まれるアミノ酸代謝物などを解析し、乳がんや大腸がん、肝臓がんなどの他、一部の小児がんも見つけられる可能性が高いといいます。

坂入 実さんは次のようにおっしゃっています。

「(尿は)老廃物ということで、さげすまされてきましたけども、非常に有用な情報が含まれていることが分かって来た・・・」

 

4月から半年間、大学と共同で、実用化に向けた実証実験を行っています。

実験にはスマホのアプリを活用します。

尿の検体を採取して専用のアプリで撮影して、その検体をセンターに送ると簡単にがんの検査が出来るというシステムなのです。

尿の検体をスマホで撮影すると、その時間と場所が記録されます。

更に、実際の尿を専用ボックスに入れて送ると解析結果がスマホに送られてくるのです。

このように、自宅にいながらがん検査が受けられるのです。

 

今回の実験では、検査の精度や実際にかかるコストを確かめ、2020年代前半の実用化を目指します。

 

一方、尿を使って全く異なるアプローチでがんの有無を判定しようとするベンチャー企業もあります。

株式会社HIROTSUバイオサイエンスが今研究を進めているのが線虫と呼ばれる体長1ミリほどの虫を使ったがん検査です。

ちなみに、この検査方法については、以前アイデアよもやま話 No.3689 尿一滴で10種類のがん発見!でもご紹介していました。

使用する線虫は、土の中に生息していて、人間には寄生せず、人間には害を及ぼさない種類です。

ただし、このがん検査ではどの部位のがんか特定出来ません。

しかし、がんがあるかないかについて、数百例の患者さんについて調べた結果では約90%の確率で判定出来るといいます。

現在は臨床例を増やしている段階で、2020年の実用化を目指しています。

線虫は容易に安価で培養出来るため、検査費用は全て含めても1回当たり数千円ほどに抑えられるといいます。

 

更に最新の研究では、わずか1ミリほどの線虫の体内に遺伝子情報を組み替えたDNAを注入し、特定のがんの臭いをかぎ分けられる“スーパー線虫”を生み出そうというのです。

広津 崇亮CEOは次のようにおっしゃっています。

「今、第一ターゲットはすい臓がんなんですけども、すい臓がんは早期発見がほぼ不可能なんですね。」

「だいたい見つかった時点で末期。」

「線虫はすい臓がんに強く反応することが分かっていますので、更にすい臓がんを見分ける“スーパー線虫”が出来れば、尿だけですい臓がんを早期発見出来ると。」

「それだけで革命的というふうに言われています。」

 

番組コメンテーターでモルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザーのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。

「素晴らしいニュースですね。」

「3つのプラスがあると思いますけど、まず安い、間違った陽性が少ない、間違った陰性も少ないという正確な検査が出来れば何よりですよね。」

「で、どうやって広げるかが次の問題ですね。」

「例えば病気をした場合、自己負担を、検査を受けているか、受けていないかによって決める。」

「例えば検査を受けている人なら、病気をした場合2割負担、受けていない人は8割負担。」

「そうすると、「受けましょう」ということになりますね。」

「で、何がいいかというと、まず受診率が上がります。」

「その結果、医療費も下がりますし、国民の健康寿命が延びます。」

「だから、この3つの良いところがあるから、このような広げる制度を考えたらどうでしょうかと思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

確かにこれまでのがん検査は、内視鏡やバリウム検査など、苦痛を伴うので私も積極的に受けたいとは思いませんでした。

また、血液検査は痛みを伴うので小さな子どもからは敬遠されがちです。

そうした中、尿によるがん検査であれば、手軽で苦痛を伴わず、しかも自宅から尿の検体を送るだけで検査を受けられるのですから誰でも検査を受け易くなります。

後は料金ですが、検査によって早期発見出来れば、それだけがんにかかった場合に比べて医療費がかからなくなります。

ですから、自治体や健康保険による補助でほとんど無料にしても国民が検査を受けた方が結果として医療費は抑制されると期待出来ます。

更に、国民の健康寿命も長くなります。

 

ということで、特に線虫を使った尿検査は2020年の実用化を目指しているといいますから、是非予定通りに臨床実験を進めていただきたいと思います。

ただし、このがん検査ではどの部位のがんか特定出来ません。

ですから、特定のがんの臭いをかぎ分けられる“スーパー線虫”の開発も急いでいただきたいと思います。

 

同時に、日立製作所による尿を使ったがん検査も2020年代前半の実用化を目指しているといいます。

ですから、こうしたいろいろながん検査の中から、検査対象のがんの種類の多さ、検査の精度、あるいは料金などを比較してより良い検査方法を普及させることが国の役割だと思います。

 

また、実際にこうしたがん検査をより多くの国民が受けるようにする方法としては、番組コメンテーターのフェルドマンさんのおっしゃるように、がんにかかった場合の自己負担に差をつけるという方法が良いと思います。

 

いずれにしても、これから数年もしないうちに画期的ながん検査が実用化されるというニュースは多くに人たちに希望を与えてくれます。


 
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