2018年07月19日
アイデアよもやま話 No.4072 じわじわと企業の注目を集めるスポーツテック!

これまで金融とITを組み合わせた事業・サービス、すなわちフィンテックについてはアイデアよもやま話 No.3554 フィンテックで変わる私たちの暮らし!などでお伝えしてきました。

そうした中、4月6日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で欧米で広がるスポーツテック(Sports Tech)について取り上げていたのでご紹介します。

 

スポーツの領域にテクノロジーを合わせたスポーツテックは、欧米では既に広がっていますが、日本ではまだまだ浸透していません。

しかし今、じわじわと企業などの注目を集めているのがスポーツテックなのです。

4月6日、都内で開かれた会見で、フィットネスジムなどを運営するRIZAP(ライザップ)グループは4月中にもサッカーJリーグ1部の湘南ベルマーレの経営に乗り出すと発表しました。

2020年までの3年間でベルマーレに約10億円を出資し、主要タイトルの獲得などを目指します。

RIZAPはJリーグへの参入をきっかけに、アスリート向けのトレーニング方法を研究していく考えですが、他にも狙いがあります。

RIZAPグループの瀬戸 健社長は、会見の場で次のようにおっしゃっています。

「我々がやりたいことは、自己実現、輝ける人生、その中でも“スポーツでも人は変われる”を証明していきたいと。」

 

フィットネスジムでの効率的な減量で急成長をしてきたRIZAP、今後はスポーツにテクノロジーを応用するスポーツテックに力を入れ、プロ選手の強化で得たデータを一般のお客向けのサービスにも活用する狙いなのです。

瀬戸社長は次のようにおっしゃっています。

「スポーツを数値化、データ化していく中で、分析がしっかり出来れば、あらゆるスポーツ・健康面においても再現性を確保出来るような、しっかりしたアクションが確保出来るいうことになってくるかなと思いますね。」

 

RIZAPは既にスポーツテックのサービスを始めています。

ライザップゴルフ三田店(東京都港区)が4月から始めたゴルフレッスン「RIZAP GOLF LESSON System」では、センサーをゴルフクラブに装着することで、スイングの軌道やヘッドスピードなどが測定出来ます。

これによって、スイングの軌道を改善出来、また改善前後の軌道を具体的に数値化するので、どの程度改善出来たかを把握出来るのです。

ライザップゴルフの竹森 大将トレーナーは次のようにおっしゃっています。

「課題をこれまで特定するのに、コーチの実力や経験などによって課題特定までに差があった。」

「今回は、このシステムによって課題の特定が今までより早くなりました。」

 

更に、このレッスンの受講者は、自宅に帰ってスイングを撮影して送信すると、トレーナーがチェックし、音声付きで送り返してくれます。

フィットネスで培ってきた教え方のノウハウとテクノロジーを融合させた今回のサービスは、ゴルフスコアにもコミットしています。

 

一方、スポーツ用品を扱うビーアンドディーの川崎店では、運動能力の測定にスポーツテックならではの特徴があります。

モニターにはセンサーで検知した身体の軸が表示され、細かな動きも認識することが出来ます。

この状態で、立ち幅跳びや50m走のもも上げ、反復横跳びなどの測定を行うことで、自分の能力を同学年や同じような体格の子どもの成績と比較することが出来るのです。

更に、測定結果から子どもたちが知ることが出来るのが、測定から得た脚力や瞬発力の結果をもとに約80種類のスポーツの中から自分の能力を生かせるものを選べるといいます。

 

このシステムを開発した電通国際情報サービスでは、海外に比べ遅れているという国内のスポーツテック分野を2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに広げていきたい考えです。

電通国際情報サービス・オープンイノベーションラボ(東京都港区)の森田 浩史さんは次のようにおっしゃっています。

「一般の方がよりスポーツに親しむためのテクノロジーが必要なのかなと思っておりまして、実はそこのところが今大きく欠けている部分なのかなと思っております。」

「我々はそういう新しい技術を使って、一般の人でも簡単にスポーツに親しめるような環境を技術を使って提供していきたいなというふうに考えております。」

 

番組コメンテーターで日本総研の名誉理事長、高橋 進さんは次のようにおっしゃっています。

「もともとRIZAPさんはデータで証拠を示しながら結果にコミットするっていう話ですよね。」

「私が注目しているのは、実はRIZAPは健康づくりで自治体と組んでいるんですよ。」

「長野県の伊那市で、シニアを中心に健康づくりのプログラムを進めているんです。」

「で、ユニークなのは、普通こういうものを自治体とやると補助金をもらって「さあ、やりました。結果は分かりません」ってなっちゃうんですが、結果にコミットしていて具体的に、例えば参加者の体力年齢が10歳上がったら人数×5万円とか、医療費が減ったらその半分を上乗せするとか、きちっと結果を見ながら補助金をもらうんです。」

「そういうのを“成果報酬型”、これ行政の新しいやり方じゃないか、こういうのを着目しています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今回ご紹介したフィットネスジムなどを運営するRIZAP、あるいはスポーツ用品を扱うビーアンドディー、およびこちらに提供しているシステムを開発した電通国際情報サービスの取り組みは、まさにテクノロジーの活用です。

これまでの経験や勘に頼る、個々のトレーナーなどのスキルに依存するやり方からデータに基づく科学的なアプローチです。

こうした現実を数量的に把握し、それを分析して問題点や課題を把握し、改善に結びつけるという一連のプロセスを踏むことは、それがどんなものが対象であれ、改善手法の常道だと思います。

このような常道を踏んでいるRIZAPだからこそ、自信を持って“RIZAPは結果にコミットします”と言い切ることが出来るのだと、番組を通して理解出来ました。

 

現在、金融とテクノロジーを結びつけるフィンテックや今回ご紹介したスポーツとテクノロジーを結びつけるスポーツテックなどが話題となっていますが、考えてみれば特別なことではないのです。

要するに、どのような産業や業種であれ、その時代時代の最先端のテクノロジーをいかに最大限に活用してこれまでのやり方を改善するか、あるいは新たなビジネスを生み出すかという強い意欲を持った企業がその時代をリードするという原理原則を少しでも多くの経営者が認識し、実行に移すということが経済を活性化させ、それが私たちの暮らしの豊かさにつながるのです。


 
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