2018年06月29日
アイデアよもやま話 No.4055 ゲノム編集で肉が沢山取れるタイの研究!

3月24日(土)放送の「ミライダネ!」(テレビ東京)でゲノム編集技術の現状について取り上げていました。

今回は、ゲノム編集で肉が沢山取れるタイの研究に焦点を当ててご紹介します。 

 

前々回、前回とご紹介したように、ゲノム編集治療の実用化はまだ時間がかりますが、医療分野への遺伝子活用は伝子検査キットというかたちで既に始まっています。

 

番組では近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町)による、ゲノム編集により肉が沢山取れるタイの研究についても取り上げていましたが、こちらについては以前、アイデアよもやま話 No.3188 命を変える新技術 ゲノム編集 その1 生物を自在に作り替える驚異的な技術!でも簡単にご紹介していました。

近畿大学と共同でこのタイを作り出した、京都大学助教の木下 政人さんは次のようにおっしゃっています。

「ミオスタチンという遺伝子ですけども、筋肉の量を増やすのを抑えているブレーキの遺伝子です。」

「(ゲノム編集で)そこだけを働かなくします。」

 

木下さんは、筋肉の成長を抑えるタイの遺伝子をゲノム編集でカット、筋肉の成長を促し、タイの肉付きを良くすることに成功しました。

タイのゲノム編集に使われたのも前々回ご紹介した特別な酵素「クリスパー キャス9(CRISPR-Cas9)」でした。

これをタイの受精卵に注入し、ゲノム編集を行いました。

木下さんは次のようにおっしゃっています。

「僕らも最初にゲノム編集して、どれくらい効果が出るのか疑問だったんですよ。」

「作り初めてから大分大きいのが出来て、こんなに顕著に違いが出てくる・・・」

 

さてこのゲノム編集されたタイですが、安全性や自然界への影響は全くの未知数なので、食べることは出来ず、厳重に管理されています。

卵を一粒たりとも外に出さないように、排水路には目の細かい網を設置しています。

そして、排水前の海水に紫外線を当てる装置を設置し、タイの精子の受精機能を失わせるようにしています。

木下さんは、食品としての安全性も証明し、この技術で日本の水産業に貢献したいと考えています。

木下さんは次のようにおっしゃっています。

「生産者にメリットのある魚が出来て、それで消費者、食べる人にもメリットがある、例えば、それを食べたら健康になるだとか、そういうメリットのある魚が安く、沢山作れる、で地域の特産物になったりして、地方創生とかいうことになっていけば、私は嬉しいと思っています。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

私たち人間の豊かな暮らしという視点からすれば、より美味しい、あるいはより栄養価の高い食べ物を食べたいという欲求があります。

そして、今回ご紹介したタイの研究を更に進めることによってその願いを達成させることは夢ではないと思われます。

一方でゲノム編集技術は思わぬかたちで自然界に悪影響を与えてしまうリスクをはらんでいます。

そうしたことから、今回ご紹介したように木下さんは厳重な管理をされているわけです。

しかし、ゲノム編集技術が様々なかたちでビジネスとして普及していくと、利益優先で安全性や自然界への影響対策が後回しになってしまうことは十分にあり得ます。

そして、こうしたリスクの顕在化は一旦起きてしまえば取り返しが出来なくなってしまいます。

それはネット社会における情報の拡散の歯止めが出来ないことを見れば明らかです。

ですから、前々回もお伝えしたように、メリットばかりに目を奪われることなく、技術の持つリスクへの対応策も前もってしっかりと検討しておくことが極めて重要なのです。


 
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