2018年06月05日
アイデアよもやま話 No.4034 世界的な“核兵器廃絶”の流れを危うくするロシアによる新たな核兵器の開発!

3月1日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でロシアのプーチン大統領による年次教書を発表について取り上げていたのでご紹介します。

 

ロシアのプーチン大統領は3月1日(日本時間)、国内政治や外交政策について説明する年次教書を発表しました。

この年次教書、本来は前の年の12月に発表されるのですが、今回は異例の3ヵ月遅れでの発表となりました。

なぜ発表が遅れたのか、そしてプーチン大統領は何を語ったのでしょうか。

見えてきたのはロシアの抱えるジレンマでした。

 

プーチン大統領は壇上で次のようにおっしゃっています。

「この演説は特別で、画期的な意味合いを持っている。」

「なぜなら、今後何十年にもわたる我が国の運命を決めるからだ。」

 

ではなぜ発表が3ヵ月も遅れたのでしょうか。

内容にそのヒントがありました。

プーチン大統領は壇上で次のようにおっしゃっています。

「ロシアは今や強い経済・軍事力を保持し、世界をリードする国の一つだ。」

「しかし、国民の福祉や生活の質を確保するという点でまだ十分でない。」

「我々はそれを果たす義務があり、必ずやり遂げる。」

「約5年で国民一人当たりのGDPを1.5倍にする。」

 

訴えたのはロシアの経済状況の改善です。

失業率は約5%、更にクリミヤ併合で受けた欧米の経済制裁が今後足を引っ張ると見られています。

長引く経済停滞で溜まる国民の鬱屈をいかに解消するか、プーチン大統領は経済政策の内容を慎重に精査するため、年次教書の発表を遅らせたと見られています。

 

一方で、年次教書の中でもう一つ強調したのが新たな核兵器です。

プーチン大統領は次のようにおっしゃっています。

「目的地に着くまで弾道を使わない新たな核兵器を開発し始めた。」

「どんな防衛システムもその核兵器の前には無力だ。」

 

新たな核ミサイル開発に言及し、アメリカをけん制しました。

国内にはバラ色の未来、対外的には強硬な姿勢を見せたプーチン大統領ですが、軍事アナリストで、未来工学研究所の小泉 悠特別研究員は次のようにおっしゃっています。

「ロシアが本当に経済を回復させようと思ったら、いわゆる西側との関係改善が不可欠だと思うんですね。」

 

「今回、外交姿勢の話は全くしていないんですよね。」

「例えばシリアやウクライナの問題をどうするのか全く具体策が出てこなかったですよね。」

「ある程度ロシアのメンツを保ちながら(外交問題の)落し所をつけることに多分期待しているんだと思います。」

 

クリミア併合をきっかけに欧米から受ける経済制裁、しかし外交問題でロシアが譲歩すれば大国としてのメンツに傷がつくのです。

経済の回復か大国としてのメンツか、今後プーチン大統領はジレンマの中でどう判断するのでしょうか。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

No.4032 ちょっと一休み その649 『後退する世界の民主主義!』

 

でもお伝えしたように、国民の豊かさ、および国家の安全保障は国家を維持していくうえでの最重要課題です。

そうした意味で、今回ご紹介したロシアのプーチン大統領による年次教書の発表内容は、国民の豊かさにつながる経済状況の改善は理に適っています。

 

しかし一方で、どんな防衛システムも無力にする、目的地に着くまで弾道を使わない新たな核兵器の開発は、新たな核兵器の世界的な開発競争に火を点けてしまいました。

こうしたロシアにおける今回の新型核兵器の公表は、アメリカや中国を刺激し、当然両国とも同様の核兵器開発に邁進するはずです。

 

これまでの世界的な枠組みの中では、こうした軍拡競争を阻止することは出来ません。

また、こうした一部の限られた国のみによる新たな核兵器開発は、北朝鮮などによる核兵器開発を阻止するうえであまり説得力を持ちません。

既得権益を握っている一部の国による身勝手とも言えます。

また、新たな核兵器開発による世界的な核兵器保有数の拡大は、世界平和を危うくするものです。

ですから、やはり日本憲法で掲げる“専守防衛”の考え方を粘り強く世界に向けて訴え続けることこそが、世界平和、および各国の国民の豊かさの基本になると思うのです。

“専守防衛”に基づいた兵器であれば、少なくとも核兵器や長距離弾道ミサイルの開発は不要になります。

また、その分の資金を国民の豊かさに回せば、それだけ国民は豊かになれるのです。


 
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